今回は、時価評価の対象となる資産と
時価評価の対象とならない資産を確認します。
目次
時価評価の対象となる資産(法法64条の11①)
対象資産は、次の5つです。
- 固定資産
- 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産を除く。)
- 有価証券
- 金銭債権
- 繰延資産
時価評価資産の定義
省略
法人税法64条の11①
時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)をいう。)
省略
これらの資産の評価損益の計上に適しないものとして
政令で定めるものを除きます。
時価評価の対象とならない資産(法令131条の15)
全部で8つありますが、最後の8つ目は後日確認します。
圧縮記帳済の減価償却資産(1号)
親法人の通算承認をしようとする最初の事業年度(最初通算事業年度)開始日の「5年前の日」以後終了するその親法人又はその子法人等(法法64条の9②)の各事業年度において次に掲げる規定の適用を受けた減価償却資産(注1)
注1、減価償却資産
その減価償却資産が、適格合併、適格分割、適格現物出資、適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人、現物分配法人(被合併法人等)から、移転を受けたものである場合には、その被合併法人等のその「5年前の日」以後に終了する各事業年度において次に掲げる規定の適用を受けたものを含みます。
通算承認がスタートする日から過去5年以内に適用した圧縮記帳済の減価償却資産です。圧縮記帳した固定資産は簿価が減ります。その減少後の簿価に対して時価評価すると圧縮記帳をした意味がなくなるため、時価評価をしない資産となります。この減価償却資産については、被合併法人等の圧縮記帳済の減価償却資産を適格合併等により引き継いだ場合を含みます。
有価証券関係(2号、3号)
・売買目的有価証券
売却する可能性があり、時価評価をする意味が乏しいものです。
・償還有価証券
満期まで保有する有価証券については、時価評価が適さないものとして
時価評価をしない資産となります。
簿価1000万円未満の資産(4号)
資産の帳簿価額(注1)が1000万円に満たない場合のその資産
注1、資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。次号及び次項において同じ。
少額不追及です。
評価差額が少額の資産(5号)
こちらも少額不追及です。
資産の価額(注1)とその帳簿価額との差額(注2)がその資産を有する親法人若しくは子法人等(法法第64条の9②)の資本金等の額の1/2に相当する金額又は1000万円のいずれか少ない金額に満たない場合のその資産
注1、資産を前号に規定する単位に区分した後のそれぞれの資産の価額とする。以下この号及び次項において同じ。
注2、「五年前の日」以後に終了する各事業年度において第一号イからトまでに掲げる規定の適用を受けた固定資産(注3)で、その価額がその帳簿価額を超えるもの(評価益があるもの)については、「その各事業年度において同号イからトまでに掲げる規定により損金の額に算入された金額又はその超える部分の金額のいずれか少ない金額」を控除した金額
注3、1号に規定する減価償却資産を除く。
例えば、次の場合
資産の価額 5000万円
帳簿価額 2000万円
資本金等の額 4000万円
「差額3000万円」が「その親法人若しくは子法人等の資本金等の額の1/2又は1000万円のいずれか少ない金額」に満たない場合のその資産
資本金等の額4000万円×1/2=2000万円又は1000万円の
いずれか少ない金額1000万円
差額3000万円>1000万円
満たないを満たさない(超えている)ため、時価評価が必要です。
注3について
圧縮記帳を受けた固定資産(圧縮記帳を受けた減価償却資産を除く)
=圧縮記帳を受けた非減価償却資産=土地などの価額>その帳簿価額となるものについては、「その各事業年度における圧縮記帳の規定による損金算入額又はその超える部分の金額のいずれか少ない金額」を控除した金額
例えば、次の場合
土地の価額 8000万円
土地の簿価 1000万円
差額 7000万円(注)
注、資産の価額8000万円>その帳簿価額1000万円を超えるものについては、
圧縮記帳損金算入額(4000万円)又はその超える部分の金額(7000万円)の
いずれか少ない金額(4000万円)をマイナスします。
差額7000万円-4000万円=3000万円が比較対象となります。
資本金等の額×1/2=2000万円又は1000万円の
いずれか少ない金額1000万円
差額3000万円>1000万円
満たないを満たさない(超えている)ため、時価評価が必要です。
仮に、資産の価額が5500万円の場合、
圧縮記帳損金算入額(4000万円)又はその超える部分の金額(4500万円)の
いずれか少ない金額(4000万円)をマイナスします。
差額4500万円-4000万円=500万円が比較対象となり、
500万円<いずれか少ない金額1000万円
満たないを満たすため、時価評価が不要となります。
完全支配関係がある法人の株式等で評価損があるもの(6号)
親法人との間に完全支配関係がある内国法人(注1)の株式等で、
その価額がその帳簿価額に満たないもの(評価損があるもの)
注1、次に掲げるものに限ります。
イ、清算中の内国法人
ロ、合併以外の解散が見込まれているもの
ハ、その親法人との間に完全支配関係がある内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
例えば、
P親法人
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A子法人(B孫法人株式を100%保有)
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B孫法人(清算中や解散見込み)
B孫法人株式の価額500万円、帳簿価額2000万円の場合、
評価損1500万円は計上できません。
(株式等保有法人の時価評価の確認は必要。)
他の通算法人の株式等(7号)
親法人又は子法人等(法法64条の9②)が通算法人である場合におけるその親法人又は子法人等の有する他の通算法人(通算親法人を除く。)の株式等
株式持ち合いの場合だと思います。
例えば、
P親法人(A・B子法人株式を80%保有)
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A子法人(B子法人株式を20%保有)
B子法人(A子法人株式を20%保有)
この場合、A子法人の有するB株式と、
B法人の有するA株式が時価評価不要となるのでしょう。
(株式等保有法人の時価評価の確認は必要。)
最後の8号は複雑ですので、別途確認します。
参考規定
時価評価しない資産
(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)
第百三十一条の十五 法第六十四条の十一第一項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 法第六十四条の九第一項(通算承認)に規定する親法人(以下この条において「親法人」という。)の法第二編第一章第一節第十一款第一目(損益通算及び欠損金の通算)の規定の適用を受けようとする最初の事業年度(第八号において「最初通算事業年度」という。)開始の日の五年前の日(以下この号及び第五号において「五年前の日」という。)以後に終了する当該親法人又は法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人の各事業年度において次に掲げる規定の適用を受けた減価償却資産(当該減価償却資産が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けたものである場合には、当該被合併法人等の当該五年前の日以後に終了する各事業年度において次に掲げる規定の適用を受けたものを含む。)
イ 法第四十二条第一項、第二項、第五項又は第六項(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ロ 法第四十四条第一項又は第四項(特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ハ 法第四十五条第一項、第二項、第五項又は第六項(工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ニ 法第四十六条第一項(非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ホ 法第四十七条第一項、第二項、第五項又は第六項(保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ヘ 法第四十九条第一項又は第四項(特別勘定を設けた場合の保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ト 租税特別措置法第六十七条の四第一項若しくは第二項(転廃業助成金等に係る課税の特例)(同条第九項において準用する場合を含む。)又は同条第三項(同条第十項において準用する場合を含む。)
二 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券
三 第百十九条の十四(償還有価証券の帳簿価額の調整)に規定する償還有価証券
四 資産の帳簿価額(資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。次号及び次項において同じ。)が千万円に満たない場合の当該資産
五 資産の価額(資産を前号に規定する単位に区分した後のそれぞれの資産の価額とする。以下この号及び次項において同じ。)とその帳簿価額との差額(五年前の日以後に終了する各事業年度において第一号イからトまでに掲げる規定の適用を受けた固定資産(同号に規定する減価償却資産を除く。)で、その価額がその帳簿価額を超えるものについては、当該各事業年度において同号イからトまでに掲げる規定により損金の額に算入された金額又はその超える部分の金額のいずれか少ない金額を控除した金額)が当該資産を有する親法人若しくは法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人の資本金等の額の二分の一に相当する金額又は千万円のいずれか少ない金額に満たない場合の当該資産
六 親法人との間に完全支配関係がある内国法人(次に掲げるものに限る。)の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないもの
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ 当該親法人との間に完全支配関係がある内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
七 親法人又は法第六十四条の九第二項に規定する他の内国法人が通算法人である場合における当該親法人又は他の内国法人の有する他の通算法人(通算親法人を除く。)の株式又は出資八 省略
法人税法施行令131条の15、通算制度への開始に伴う資産の時価評価損益