通算法人に係る外国税額の控除限度額


今回は、通算法人の控除限度額(法人税法施行令148条)を確認します。
計算順序と関係なく、規定順に確認します。

規定のタイトル

規定の内容をまとめると次のとおりです。

  • 控除限度額の計算
  • 調整前控除限度額
  • 当該通算事業年度の所得金額及び他の事業年度の所得金額と
    当該通算事業年度の欠損金額及び他の事業年度の欠損金額
  • 調整前国外所得金額
  • 加算調整額
  • 調整金額
  • 控除限度調整額
  • 準用規定
  • 通知義務
控除限度額の計算(法人税法施行令148条1項)

算式だと
控除限度額(法令148①)=
調整前控除限度額(法令148②)-控除限度調整額(法令148⑦)
※調整前控除限度額がマイナスの場合は、0とします。

通算制度の場合、プラスの金額とマイナスの金額を分けて計算するため、調整前控除限度額(プラスの金額)を計算して、控除限度調整額(マイナスの金額)を控除しています。

参考別表、別表6(2)付表5、通算法人の控除限度額の計算等に関する明細書

調整前控除限度額(法人税法施行令148条2項)

算式だと
調整前控除限度額(法令148②)=1号×3号/2号

1号=イ+ロ
イ=1社の法人税額
ロ=他社の法人税額の合計
イ+ロで全体の法人税額を計算しています。

2号(分母)=イーロ
イ=1社の所得金額+他社の所得金額
ロ=1社の欠損金額+他社の欠損金額
プラスの所得金額とマイナスの所得金額(欠損金額)を別々に合計して、
合計額をマイナスしています。
イーロで全体の純所得を計算しています。

3号(分子)=調整前国外所得金額(法令148④)-調整金額(法令148⑥)
調整前国外所得金額がマイナスの場合は、調整前国外所得金額とします。

整理しますと

        3号=調整前国外所得金額(法令148④)
           -調整金額(法令148⑥)
1号=法人税額×-------------------
        2号=所得金額の合計-欠損金額の合計
           =純所得合計(法令148③)

上記の算式は、国外所得に対する法人税額を計算しています。
例えば、法人税300、全所得1000、国外所得200の場合、
300×200/1000=60となります。

調整前国外所得金額(法人税法施行令148条4項)

算式だと
調整前国外所得金額(法令148④)=
国外源泉所得の所得金額の合計額-非課税国外所得金額(プラス限定)=
加算前国外所得金額(後で使用するため定義あり)
+加算調整額(法令148⑤)

外国法人税が課されない所得は2重課税ではないためマイナスします。
マイナスしたものを「加算前」国外所得金額といい、
加算「調整額」をプラスしたものを調整前国外所得金額といいます。

参考規定

4 第二項第三号に規定する調整前国外所得金額とは、法第五十七条、第六十四条の四、第六十四条の五、第六十四条の七及び第六十四条の八並びに租税特別措置法第五十九条の二、第六十七条の十二及び第六十七条の十三の規定を適用しないで計算した場合の第百四十一条の二各号(国外所得金額)に掲げる国外源泉所得に係る所得の金額の合計額から外国法人税が課されない国外源泉所得に係る所得の金額(次項、第八項及び第九項において「非課税国外所得金額」という。)のうち零を超えるものを減算した金額(次項及び第九項において「加算前国外所得金額」という。)に、加算調整額を加算した金額(第六項において「調整前国外所得金額」という。)をいう。

法人税法施行令148条
加算調整額(法人税法施行令148条5項)

加算調整額とは、「マイナスの非課税国外所得金額の合計額」のうち、「プラスの非課税国外所得金額の合計額」に達するまでの金額に、一定の割合をかけたものをいいます。

・マイナス合計額100>プラス合計額80の場合は、80×一定の割合
・マイナス合計額70<プラス合計額100の場合は、70×一定の割合
(少ない金額に割合をかけます。)

       1号、1社の加算前国外所得金額(プラス限定)
一定の割合=-----------------------------
       1号+2号=全体の加算前国外所得金額(プラス限定)

調整前国外所得金額の計算上、プラスの非課税国外所得金額だけマイナスします。マイナスの非課税国外所得金額の分だけ引きすぎているため、マイナスの非課税国外所得金額については、加算前国外所得金額の比で按分して加算調整しています。

参考規定

5 前項に規定する加算調整額とは、第一項の通算法人の当該通算事業年度の非課税国外所得金額が零を下回る場合のその下回る額及び他の通算法人の他の事業年度の非課税国外所得金額が零を下回る場合のその下回る額の合計額のうち当該通算法人の当該通算事業年度の非課税国外所得金額(零を超えるものに限る。)及び他の通算法人の他の事業年度の非課税国外所得金額(零を超えるものに限る。)の合計額に達するまでの金額に、次に掲げる金額の合計額のうちに第一号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額をいう。
一 当該通算法人の当該通算事業年度の加算前国外所得金額(零を超えるものに限る。)
二 他の通算法人の他の事業年度の加算前国外所得金額(零を超えるものに限る。)の合計額

法人税法施行令148条
調整金額(法人税法施行令148条6項)

算式だと
調整金額(法令148⑥)=
調整前国外所得金額の合計額>純所得合計(法令148②二、③)×90%の場合、
上記超える部分×加算前国外所得金額の割合

外国税額控除については、所得の90%までしか認められていません。
下記の場合、300ではなく270が控除限度額となります。

         国外所得1000→1000×90%=900
法人税 300 × -----------------
         全所得1000
=270

「所得の90%ルール」を全体で判定して、90%超過部分がある場合、
90%超過部分を加算前国外所得金額の比で按分しています。

参考規定

6 第二項第三号に規定する調整金額とは、同号の通算法人の当該通算事業年度の調整前国外所得金額及び他の通算法人の他の事業年度の調整前国外所得金額の合計額が同項第二号に掲げる金額の百分の九十に相当する金額を超える場合において、その超える部分の金額に前項に規定する割合を乗じて計算した金額をいう。

法人税法施行令148条
控除限度調整額(法人税法施行令148条7項)

算式だと

控除限度調整額(法令148⑦)=

1号、他のマイナスの   2号イ、1社の調整前控除限度額(プラス限定)
調整前控除限度額の合計×----------------------
             2号(全体)、調整前控除限度額(プラス限定)

調整前控除限度額は、1号×3号/2号(法令148②)で計算します。このときに、調整前国外所得金額がマイナスとなる場合、そのままマイナスの調整前控除限度額が計算されます。このマイナスの調整前控除限度額をプラスの調整前控除限度額の比で按分して調整前控除限度額からマイナスしています。

参考規定

7 第一項に規定する控除限度調整額とは、第一号に掲げる金額に第二号に掲げる金額のうちに同号イに掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額をいう。
一 他の通算法人の他の事業年度の調整前控除限度額が零を下回る場合のその下回る額の合計額
二 次に掲げる金額の合計額
イ 第一項の通算法人の当該通算事業年度の調整前控除限度額(零を超えるものに限る。)
ロ 他の通算法人の他の事業年度の調整前控除限度額(零を超えるものに限る。)の合計額

法人税法施行令148条
まとめ

算式だけまとめます。

控除限度額(法令148①)
調整前控除限度額(法令148②)-控除限度調整額(法令148⑦)
 ↓
調整前控除限度額(法令148②)=1号×3号/2号

         3号=調整前国外所得金額(法令148④)
            -調整金額(法令148⑥)
1号=法人税額×-------------------
         2号=所得金額の合計-欠損金額の合計
            =純所得合計(法令148②二、③)

調整前国外所得金額(法令148④)
国外源泉所得の所得金額の合計額-非課税国外所得金額(プラス限定)=
加算前国外所得金額(後で使用するため定義あり)
+加算調整額(法令148⑤)
 ↓
加算調整額(法令148⑤)
「マイナスの非課税国外所得金額の合計額」のうち、「プラスの非課税国外所得金額の合計額」に達するまでの金額×一定の割合

       1号、1社の加算前国外所得金額(プラス限定)
一定の割合=-----------------------------
       1号+2号=全体の加算前国外所得金額(プラス限定)


調整金額(法令148⑥)
調整前国外所得金額の合計額>純所得合計(法令148②二)×90%の場合、
上記超える部分×加算前国外所得金額の割合(上記の割合)

控除限度調整額(法令148⑦)
1号               
他のマイナスの     2号イ、1社の調整前控除限度額(プラス限定)
調整前控除限度額の合計×----------------------
            2号(全体)、調整前控除限度額(プラス限定)

参考規定

(通算法人に係る控除限度額の計算)
第百四十八条 法第六十九条第十四項(外国税額の控除)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の通算法人の通算事業年度(同項に規定する通算事業年度をいう。以下この条において同じ。)の調整前控除限度額から当該通算事業年度の控除限度調整額を控除した金額(当該調整前控除限度額が零を下回る場合には、零)とする。

 前項に規定する調整前控除限度額とは、第一号に掲げる金額に第二号に掲げる金額のうちに第三号に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額(第七項において「調整前控除限度額」という。)をいう。

 次に掲げる金額の合計額
 前項の通算法人の当該通算事業年度の所得に対する法人税の額(法第六十七条から第七十条まで(特定同族会社の特別税率等)並びに租税特別措置法第四十二条の四第八項第六号ロ及び第七号(試験研究を行つた場合の法人税額の特別控除)(これらの規定を同条第十八項において準用する場合を含む。)、第四十二条の十四第一項(通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額)(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第十七条の四の二第一項(通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額)の規定により読み替えて適用する場合を含む。)及び第四項、第六十二条第一項(使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例)、第六十二条の三第一項及び第九項(土地の譲渡等がある場合の特別税率)、第六十三条第一項(短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率)、第六十六条の七第四項(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)並びに第六十六条の九の三第三項(特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例)の規定(ロにおいて「税額関係規定」という。)を適用しないで計算した場合の法人税の額から、法第六十九条の二並びに租税特別措置法第六十六条の七第四項及び第六十六条の九の三第三項の規定による控除をされるべき金額の合計額を控除した金額とし、附帯税の額を除く。)
 前項の通算法人の当該通算事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人(以下この条において「他の通算法人」という。)の当該終了の日に終了する事業年度(以下この条において「他の事業年度」という。)の所得に対する法人税の額(税額関係規定を適用しないで計算した場合の法人税の額から、法第六十九条の二並びに租税特別措置法第六十六条の七第四項及び第六十六条の九の三第三項の規定による控除をされるべき金額の合計額を控除した金額とし、附帯税の額を除く。)の合計額

 イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額
 前項の通算法人の当該通算事業年度の所得金額と他の通算法人の他の事業年度の所得金額の合計額とを合計した金額
 前項の通算法人の当該通算事業年度の欠損金額と他の通算法人の他の事業年度の欠損金額の合計額とを合計した金額

 前項の通算法人の当該通算事業年度の調整国外所得金額(当該通算事業年度の調整前国外所得金額から当該通算事業年度の調整金額を控除した金額(当該調整前国外所得金額が零を下回る場合には、当該調整前国外所得金額)をいう。)

 前項第二号イに規定する当該通算事業年度の所得金額及び他の事業年度の所得金額とは、それぞれ法第五十七条(欠損金の繰越し)、第六十四条の四(公益法人等が普通法人等に移行する場合の所得の金額の計算)、第六十四条の五(損益通算)、第六十四条の七(欠損金の通算)及び第六十四条の八(通算法人の合併等があつた場合の欠損金の損金算入)並びに租税特別措置法第五十九条の二(対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例)、第六十七条の十二及び第六十七条の十三(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)の規定(以下この項において「対象規定」という。)を適用しないで計算した場合の当該通算事業年度の所得の金額及び当該他の事業年度の所得の金額をいい、同号ロに規定する当該通算事業年度の欠損金額及び他の事業年度の欠損金額とは、それぞれ対象規定を適用しないで計算した場合の当該通算事業年度において生ずる欠損金額及び当該他の事業年度において生ずる欠損金額をいう。

法人税法施行令
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