通算税効果額と寄附金と消費税


今回は、通算税効果額、寄附金、消費税について考えたことをメモします。

法人税の取扱い

通算税効果額の支払いは損金不算入、
通算税効果額の受け取りは益金不算入となります。
通算税効果額の精算は義務ではなく任意です。

消費税の取扱い

通算税効果額に消費税はかかりません。

資産の譲渡等の定義を確認してみると
1、事業として → 該当します。
2、対価を得て行われる
3、資産の譲渡・資産の貸付け・役務の提供
をいいます。

通算税効果額の精算を
「自社の損金や欠損金を使って、他社の法人税を減少させる役務の提供」
「その見返りに通算税効果額を受け取る」
と考えると、消費税がかかりそうな気がしてきます。

損益通算で考えてみると、
損益通算については手続き要件がないため、
通算税効果額の精算に関係なく法人税が減少します。

資産の譲渡や役務の提供がなかったとしても、法人税が減少します。
その法人税の影響額を精算する(条件付贈与?)と決めたものであって、
取引の対価として精算するものではありません(対価性がありません)。

欠損金の通算については手続き要件がありますが、
適用するための手続きは、役務の提供に該当しないと考えられます。

取引内容から見ても対価性から見ても、消費税は課税されません。

寄附金・受贈益との関係

通算税効果額の精算が任意であれば、
寄附金の損金不算入と受贈益の益金不算入
でもいいのでは?という疑問が。

法人税法上の寄附金に該当しないから?という視点で考えてみると、通算税効果額の精算は「金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」に該当しないと考えられるため寄附金の損金不算入は適用できないのでしょうね。

以下、実務上はほとんどない取引だと思いますが、
通算税効果額と寄附金・受贈益が生じるケースを考えてみたいと思います。

例えば、通算税効果額を精算することを決定し、通算税効果額を300計上した。税務上の通算税効果額は250だったが、後日精算しないこととした場合。

会計上

法人通算税効果額の発生
(X期)
精算しなかった場合
(X+1期)
A社法人税300 / 未払金300
(支払い)
未払金300 / 法人税300
(当初の仕訳を取り消す。)
B社未収入金300 / 法人税300
        (受取り)
法人税300 / 未収入金300
(当初の仕訳を取り消す。)
会計上の仕訳

会計上、過大計上の戻し入れとして処理したとしても、
税務上も同様に取り扱えるでしょうか。
同様に取り扱えないと考えると、
性質はそれぞれ寄附金と受贈益となります。

税務上の仕訳
会計上の見積計上の仕訳を省略しています。

法人通算税効果額の発生
(X期)
精算しなかった場合
(X+1期)
A社利益積立金額250 / -
(支払い、留保)
通算税効果額250 / 現金 250
(損金不算入、留保解消)
現金250 / 受贈益250
      (益金不算入、社外※)
B社- / 利益積立金額250
   (受取り、留保)
現金250 / 通算税効果額250
     (益金不算入、留保解消)
寄附金250 / 現金250
(損金不算入、社外)
税務上の仕訳

1、通算税効果額を精算し、留保を解消させます。
2、現金の精算がなかったものとして、寄附金と受贈益を認識します。

参考規定

課税の対象

(課税の対象)
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

消費税法

資産の譲渡等

(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。

消費税法2条

受け取る通算税効果額の益金不算入

4 内国法人が他の内国法人から当該他の内国法人の通算税効果額(第六十四条の五第一項(損益通算)又は第六十四条の七(欠損金の通算)の規定その他通算法人(通算法人であつた内国法人を含む。以下この項において同じ。)のみに適用される規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額(利子税の額を除く。)に相当する金額として通算法人と他の通算法人との間で授受される金額をいう。)を受け取る場合には、その受け取る金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

消費税法26条

寄附金の定義

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

法人税法37条
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