通算税効果額の取扱い


今回は、グループ通算制度の「通算税効果額」について確認します。
2023/4/28、一部修正しました。未払法人税等については記載していません。

概要

グループ通算制度の主なメリットはグループ内の損益通算です。
この損益通算による影響額をグループ内で精算することがあります。
この影響額を「通算税効果額」といいます。

通算税効果額が生じる理由

グループ通算制度の損益通算がない場合と
グループ通算制度の損益通算がある場合を比較します。

グループ通算制度の損益通算がない場合のP/L

内容P社S社合計
通算前の
課税所得
+1,000△1,0000
法人税
(25%と仮定)
+2500250
グループ通算制度がない場合

損益通算がない場合については、
P社の黒字とS社の赤字が損益通算できないため、
P社の法人税250が発生します。

グループ通算制度の損益通算がある場合のP/L

内容P社S社合計
通算前の
課税所得
+1,000△1,0000
損益通算△1,000+1,0000
通算後の
課税所得
1000 → 000
法人税250 → 000
グループ通算制度の計算イメージ

P社の黒字とS社の赤字を損益通算した結果、
P社とS社の課税所得と法人税は0になります。

損益通算後のP/L

内容P社S社合計
税引前当期純利益+1,000△1,0000
法人税250 → 000
当期純利益+1,000△1,0000
通算税効果額がないP/L

通算税効果額について

通算税効果額の金額についてはなんとなくイメージが沸きますが、
計算した金額を支払うのか、受け取るのかがわかりづらいため、
簡単に説明します。

グループ通算制度の特有の規定により
得した法人(税金が減った法人)が、損した法人(税金が増えた法人)に
得した法人税相当額を支払うものです。


2023/6/12、追加
得した法人(税金が減った法人)が、
影響を与えた法人(税金が増えたかどうかは直接関係しない)に
法人税相当額を支払うものです。


上記の場合、得した法人はP社、損した法人はS社になります。

P社について
損益通算がない場合の法人税は250ですが、
損益通算により法人税は0となります。
損益通算により減少した法人税相当額250をS社に支払います。

S社について
損益通算がない場合の欠損金額は1,000です。
損益通算により欠損金額1,000が減少し、
P社の法人税250が減少したため、P社から法人税相当額250を受け取ります。

会計上の仕訳

内容借方貸方
P社法人税等 250未払金 250
(通算税効果額)
S社未収入金 250
(通算税効果額)
法人税等 250
通算税効果額の仕訳

通算税効果額の計上後のP/L

内容P社S社合計
税引前当期純利益+1,000△1,0000
法人税等250 → 000
法人税等
※通算税効果額
プラスは費用
マイナスは収益
+250△2500
当期純利益+750△7500
通算税効果額があるP/L

※ 説明のため法人税等勘定を分けています。

次は、税務上の通算税効果額の取扱いです。

税務上の通算税効果額の取扱い

費用処理された通算税効果額は損金不算入、
収益処理された通算税効果額は益金不算入となります。

通算税効果額の仕訳

内容借方貸方
P社法人税等 250
(損金不算入、留保)
未払金 250
(通算税効果額)
S社未収入金 250
(通算税効果額)
法人税等 250
(益金不算入、留保
通算税効果額の仕訳

通算税効果額を処理した場合の別表は次のとおりです。

別表4、所得の金額

内容P社P社留保S社S社留保
当期純利益750750△750△750
通算法人に係る加算額
(損金不算入)
(別表4付表から転記)
+250
(加算留保)
+250
通算法人に係る減算額
(益金不算入)
(別表4付表から転記)
△250
(減算留保)
△250
損益通算前の課税所得+1,000+1,000△1,000△1,000
損益通算

通算対象欠損金額の損金算入額又は通算対象所得金額の益金算入額
(別表7の3「5」又は「11」)
△1,000
(減算※)
+1,000
(加算社外)
課税所得0+1,0000△1,000
別表4

P社の貸借対照表

資産負債・純資産
現金 1,000未払金-通算税効果額 250
繰越利益剰余金 750
P社の貸借対照表

別表5(1)、P社のみ

内容期首減少増加期末摘要
未収入金
(通算税効果額)
0000会計上の金額
未払金
(通算税効果額)
00+250+250同上
繰越損益金00+750+750同上
納税充当金0000同上
未納法人税等0000税務上の金額
未払通算税効果額00△250△250同上
差引合計額00+750+750同上
別表5(1)、利益積立金額

検算式
期首現在利益積立金額合計「31」①
+別表四留保所得金額又は欠損金額「52」
△中間分・確定分の法人税等、道府県民税及び市町村民税の合計額
+△中間分・確定分の通算税効果額の合計額
=差引翌期首現在利益積立金額合計「31」④

期首利益積立金額0+留保所得1,000△法人税等0△通算税効果額250
=期末利益積立金額+750

通算税効果額の計算

税法上、通算税効果額の取扱いは規定されていますが、計算方法は規定されていません。会計上の計算も明確に規定されておらず、合理的な方法によります。

グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)
(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/index.htm

通算税効果額の計算方法
問58、通算税効果額の計算方法
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/58.htm

上記Q&Aによると、合理的な計算方法は、
損益通算による影響額×法人税率や
欠損金の通算による影響額(欠損金の配賦額)×法人税率となります。

グループ通算制度に関するQ&A
問59、通算税効果額等の申告書別表への記載について
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/59.htm

通算税効果額を精算しなかった場合

通算税効果額の精算は義務ではなく任意です。
仮に通算税効果額を精算しなかった場合については、
通算税効果額が費用や収益で処理されないため、
税務上の処理はありません。
一部精算した場合は、精算した部分だけ税務調整が必要です。

参考規定など

参考リンク
通算税効果額の定義と別表調整

受け取る通算税効果額の益金不算入

4 内国法人が他の内国法人から当該他の内国法人の通算税効果額(第六十四条の五第一項(損益通算)又は第六十四条の七(欠損金の通算)の規定その他通算法人(通算法人であつた内国法人を含む。以下この項において同じ。)のみに適用される規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として通算法人と他の通算法人との間で授受される金額をいう。)を受け取る場合には、その受け取る金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

法人税法26条4項、受け取る通算税効果額の益金不算入

益金不算入の改正後の規定

4 内国法人が他の内国法人から当該他の内国法人の通算税効果額(第六十四条の五第一項(損益通算)又は第六十四条の七(欠損金の通算)の規定その他通算法人(通算法人であつた内国法人を含む。以下この項において同じ。)のみに適用される規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額(利子税の額を除く。)に相当する金額として通算法人と他の通算法人との間で授受される金額をいう。)を受け取る場合には、その受け取る金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

法人税法26条4項、受け取る通算税効果額の益金不算入

支払う通算税効果額の損金不算入

3 内国法人が他の内国法人に当該内国法人の通算税効果額(第二十六条第四項(還付金等の益金不算入)に規定する通算税効果額をいう。)を支払う場合には、その支払う金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法38条3項、支払う通算税効果額の損金不算入

利益積立金額

(利益積立金額)
第九条 法第二条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(以下この条において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十四号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十四号までに掲げる金額を減算した金額とする。
一 イからヲまでに掲げる金額の合計額からワからネまでに掲げる金額の合計額を減算した金額当該金額のうちに当該法人が留保していない金額がある場合には当該留保していない金額を減算した金額とし、公益法人等又は人格のない社団等にあつては収益事業から生じたものに限る。)

ホ 法第二十六条第一項(還付金等の益金不算入)に規定する還付を受け又は充当される金額(同項第一号に掲げる金額にあつては、法第三十八条第一項(法人税額等の損金不算入)の規定により所得の金額の計算上損金の額に算入されない法人税の額及び地方法人税の額並びに当該法人税の額に係る地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及びこれらの税に係る均等割を含む。ホにおいて同じ。)の額に係る部分の金額を除く。)、法第二十六条第二項に規定する減額された金額、同条第三項に規定する減額された部分として政令で定める金額、同条第四項に規定する通算税効果額を受け取る場合のその受け取る金額(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)及び同条第五項に規定する還付を受ける金額並びに法第百四十二条の二第一項(還付金等の益金不算入)に規定する還付を受け又は充当される金額(同項第一号に掲げる金額にあつては、法第百四十二条第二項(恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算)の規定により法第三十八条第一項の規定に準じて計算する場合に法第百四十一条第一号イ(課税標準)に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額の計算上損金の額に算入されない法人税の額及び地方法人税の額並びに当該法人税の額に係る地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税の額に係る部分の金額を除く。)、法第百四十二条の二第二項に規定する減額された部分として政令で定める金額及び同条第三項に規定する還付を受ける金額
ヘ 法第二十六条第四項に規定する通算税効果額を受け取ることとなる場合のその受け取ることとなる金額(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)

 法人税(法第三十八条第一項第一号及び第二号に掲げる法人税並びに附帯税を除く。カにおいて同じ。)及び地方法人税(同項第四号及び第五号に掲げる地方法人税並びに附帯税を除く。)として納付することとなる金額、地方税法の規定により当該法人税に係る道府県民税及び市町村民税(都民税及びこれらの税に係る均等割を含む。)として納付することとなる金額並びに同条第三項に規定する通算税効果額を支払うこととなる場合のその支払うこととなる金額(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)

法人税法施行令9条、通算税効果額に関する部分
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