通算税効果額の定義と別表調整


今回は、通算税効果額の定義と別表調整を確認します。
2023/4/28、誤りがあったため、前提を修正して訂正しています。

内容

別表5(1)の未払通算税効果額を見て気になったことを記載します。

法人税申告書、別表5(1)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/05(01).pdf

未払通算税効果額(28行)の欄の3欄に「中間」の記載欄があります。よく見ると、△マークがありません。「確定」の記載欄にも△マークがありません。

必ず△(利益積立金額の減算項目)ということではなく、法令上の通算税効果額(利益積立金額)の規定により、加算となる場合も減算となる場合もあるということでしょう。

「中間」の記載欄は何を意味するのか考えてみますと、法令上の通算税効果額の定義で、通算法人のみに適用される規定を適用することにより減少(増加はない)する法人税・地方法人税(利子税除く)に相当する金額とあるため、仮決算を行った結果、法人税等が減少又は増加した場合に記載することになると思います。

別表5(2)では、単なる中間部分や確定部分については、法人税及び地方法人税の欄に記載し、通算税効果額(損益通算や欠損金の通算などにより減少する部分)については、通算法人の通算税効果額の欄に記載するのでしょうね。
未払通算税効果額については、別表調整部分とは関係ないはずです。

別表4では、「通算法人に係る加算額」と「通算法人に係る減算額」が設けられています。これらの欄には、別表4付表(通算法人の所得の金額の調整に関する明細書)の合計額を転記します。

別表4付表には、通算制度特有の調整を記載します。

区分別表4
付表
別表5(1)
1、損金経理をした通算税効果額
(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)
本税部分
(加算留保)
記載が必要です。
2、損金経理をした通算税効果額の支払額
(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)
附帯税部分記載不要
3、収益として経理した通算税効果額
(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)
本税部分
(減算留保)
記載が必要です。
4、収益として経理した通算税効果額の受取額(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)附帯税部分記載不要
通算税効果額のまとめ
設例

2023/4/28、前提を訂正しました。

当期純利益 4,000
法人税率 25%
損益通算前の法人税 1,000

損益通算の結果、800が損金算入となり法人税が200減少した。
その結果、通算税効果額200を支払うこととなった。


通算税効果額の金額についてはなんとなくイメージが沸きますが、
計算した金額を支払うのか、受け取るのかがわかりづらいため、
簡単に説明すると

グループ通算制度の特有の規定により
得した法人(税金が減った法人)が、損した法人(税金が増えた法人)に
得した法人税相当額を支払うものです。

2023/6/12、追加
得した法人(税金が減った法人)が、
影響を与えた法人(税金が増えたかどうかは直接関係しない)に
法人税相当額を支払うものです。


会計上の仕訳(損益通算前)

借方貸方
法人税等 1,000未払法人税等 1,000
会計上の仕訳

会計上の仕訳(損益通算後)

借方貸方
法人税等 800未払法人税等 800
法人税等(通算税効果額) 200未払金(通算税効果額) 200
会計上の仕訳

損益計算書

内容金額
税前利益+4,000
法人税等
法人税等(通算税効果額)
+800
+200
当期純利益+3,000
損益計算書

貸借対照表

資産負債・純資産
現金 4,000未払法人税等 800
未払金(通算税効果額) 200
繰越利益剰余金 3,000
貸借対照表

別表4、課税所得

区分総額留保摘要
当期利益+3,000+3,000
損金計上納税充当金+800+800損益通算前の金額
通算法人に係る加算額+200+200損益通算による影響額、別表4付表から転記。
課税所得+4,000+4,000
別表4
別表5(1)、利益積立金額
区分期首減少増加期末摘要
未払金(通算税効果額)+200+200B/Sの金額
繰越損益金+3,000+3,000B/Sの金額
納税充当金+800+800B/Sの金額
未納法人税等△800△800利積の減算(法令9①一カ)
未払通算税効果額△200△200利積の加算(法令9①一カ)
合計+3,000+3,000
損益通算による未収入金計上後の別表5(1)

検算式
期首現在利益積立金額合計「31」①
+別表四留保所得金額又は欠損金額「52」
△中間分・確定分の法人税等、道府県民税及び市町村民税の合計額
+△中間分・確定分の通算税効果額の合計額
=差引翌期首現在利益積立金額合計「31」④

期首利益積立金額0+留保所得4,000△法人税等800△通算税効果額200
=期末利益積立金額+3,000

別表5(2)、租税公課の納付状況等に関する明細書

通算税効果額は、②当期発生額+200、期末現在未決済額+200を記載します。
法人税は、損益通算前の+1,000を記載するのでしょうか?
それとも損益通算後の+800を記載するのでしょうか?

手引きを確認すると
「「当期発生税額②」の「中間3」及び「確定4」
⑵ 「確定4」には、別表一の「差引確定法人税額 15」及び「差引確定地方法人税額 41」の金額の合計額を記載します。」とあります。

別表一の差引確定法人税額15は、損益通算「後」の金額です。
法人税は、②当期発生額+800、⑥期末現在未納税額+800と記載します。

参考、別表5(2)租税公課の納付状況等に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/05(02).pdf

参考規定など

参考リンク
通算税効果額の取扱い

受け取る通算税効果額の益金不算入

4 内国法人が他の内国法人から当該他の内国法人の通算税効果額(第六十四条の五第一項(損益通算)又は第六十四条の七(欠損金の通算)の規定その他通算法人(通算法人であつた内国法人を含む。以下この項において同じ。)のみに適用される規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額(利子税の額を除く。)に相当する金額として通算法人と他の通算法人との間で授受される金額をいう。)を受け取る場合には、その受け取る金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

法人税法26条

支払う通算税効果額の損金不算入

 内国法人が他の内国法人に当該内国法人の通算税効果額(第二十六条第四項(還付金等の益金不算入)に規定する通算税効果額をいう。)を支払う場合には、その支払う金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法38条

留保金課税の留保金額、所得等の金額

 第二十六条第一項(還付金等の益金不算入)に規定する還付を受け又は充当される金額(同項第一号に係る部分の金額を除く。)、同条第二項に規定する減額された金額、同条第三項に規定する減額された部分として政令で定める金額、その受け取る同条第四項に規定する通算税効果額(附帯税の額に係る部分の金額に限る。)及び同条第五項に規定する還付を受ける金額

法人税法67条3項

利益積立金額の定義(一部)

(利益積立金額)
第九条 法第二条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(以下この条において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十四号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十四号までに掲げる金額を減算した金額とする。
一 イからヲまでに掲げる金額の合計額からワからネまでに掲げる金額の合計額を減算した金額(当該金額のうちに当該法人が留保していない金額がある場合には当該留保していない金額を減算した金額とし、公益法人等又は人格のない社団等にあつては収益事業から生じたものに限る。)

ヘ 法第二十六条第四項に規定する通算税効果額を受け取ることとなる場合のその受け取ることとなる金額(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)

カ 法人税(法第三十八条第一項第一号及び第二号に掲げる法人税並びに附帯税を除く。カにおいて同じ。)及び地方法人税(同項第四号及び第五号に掲げる地方法人税並びに附帯税を除く。)として納付することとなる金額、地方税法の規定により当該法人税に係る道府県民税及び市町村民税(都民税及びこれらの税に係る均等割を含む。)として納付することとなる金額並びに同条第三項に規定する通算税効果額を支払うこととなる場合のその支払うこととなる金額(附帯税の額に係る部分の金額を除く。)

法人税法施行令

ヘは利益積立金額の加算額、カは減算額です。

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