今回は、道府県民税の使用しなかった控除の枠(控除余裕額)の
繰越しによる外国税額控除を確認します。
道府県民税の控除限度額
過去3年において、使用しなかった控除の枠(道府県民税の控除余裕額)がある場合は、この控除余裕額を当期に持ち越して、当期の控除できなかった外国法人税に充てて、外国税額の控除を増やすことができます。
規定が複雑ですので、算式や数字を用いて確認します。
過去3年の控除余裕額の繰越しの要件は、次の2つです。
要件1
外国法人税>控除限度額の合計額(※)
(※)国税の控除限度額+道府県民税の控除限度額+市町村民税の控除限度額
→ 当期に控除しきれない外国法人税があること。
要件2
過去3年間、道府県民税の外国税額控除を受けて、
道府県民税の控除限度額に満たないものがあること。
道府県民税の外国税額控除の対象となる外国法人税<道府県民税の控除限度額
→ 過去3年間の未使用の道府県民税の控除の枠があること。
上記2つの要件を満たす場合、当期の控除限度額に
過去3年の控除余裕額をプラスできます。
過去3年の控除余裕額は、税目別に計算します。仮に次の金額とします。
A、過去3年の国税の控除余裕額 220
B、過去3年の道府県民税の控除余裕額 220
C、過去3年の市町村民税の控除余裕額 220
控除余裕額の控除順序
控除余裕額は、使用順序のルールが2つあります。
- 古いものから順に使用します。
- 同一年のものは、国税、道府県民税、市町村民税の順で使用します。
控除順序の例の次のとおりです。
次表の上段の数字が期首の残額、カッコ内の数字が控除順序、
中段の「使用」が当期に使用した金額、
下段の「残」が控除余裕額の残額です。
過去 | 国税 | 道府県民税 | 市町村民税 |
---|---|---|---|
3年前 | 20(1) 使用20 残0 | 20(2) 使用20 残0 | 20(3) 使用20 残0 |
2年前 | 100(4) 使用5 残95 | 100(5) 使用0 残100 | 100(6) 使用0 残100 |
1年前 | 100(7) 使用0 残100 | 100(8) 使用0 残100 | 100(9) 使用0 残100 |
合計 | 220 使用25 残195 | 220 使用20 残200 | 220 使用20 残200 |
仮に、当期の外国法人税が1,235、控除限度額の合計額が1,170の場合、
控除できない外国法人税が65(=1,235-1,170)発生します。
この控除できない外国法人税65について、
過去3年間の使用しなかった控除の枠(合計660)を
使って控除することができます。
控除余裕額は古いもの(3年前)から使用します。
また、同一年の控除余裕額については、
国税、道府県民税、市町村民税の順に使用します。
過去の控除限度額を使用した結果、
3年前の60(=20+20+20)と2年前の国税5(=65-60)の合計額(65)のうち
道府県民税部分(20)を当期の控除限度額(10)に加算することができます。
控除余裕額を使用しなかった場合
過去3年の計算において、使用しなかった控除の枠(控除余裕額)と控除できない法人税があったにもかかわらず、控除余裕額を使用しなかったときは、控除余裕額が使用できなくなります。控除余裕額の使用時期は選択できません。
道府県民税の控除限度額の規定
(地方税法53条38項、地方税法施行令9条7項)
7 各事業年度において課された外国の法人税等の額<1,235>が当該事業年度の国税の控除限度額<1,100>、道府県民税の控除限度額<10>及び第四十八条の十三第七項の規定により計算した額(以下この項、第四十八条の十三、第四十八条の十三の二第二項及び第五十七条の二の四第二号ロにおいて「市町村民税の控除限度額」という。)<60>の合計額<1,170>を超える場合において、
前三年内事業年度につき法第五十三条第三十八項<道府県民税の外国税額控除>の規定により控除することができた外国の法人税等の額のうちに当該前三年内事業年度の道府県民税の控除限度額<220>に満たないものがあるときは、
当該事業年度に係る同項<道府県民税の外国税額控除>に規定する政令で定めるところにより計算した額<原則計算した道府県民税の控除限度額>は、前項<6項、法人税の控除限度額×1%=道府県民税の控除限度額>の規定にかかわらず、当該事業年度の道府県民税の控除限度額<1,000×1%=10>に、
以下、加算額の計算が規定されています。
前三年内事業年度の
A
法人税法施行令第百四十四条第五項に規定する国税の控除余裕額(同令第百四十五条第三項の規定によりないものとみなされた額を除く。)又は同令第百九十七条第四項に規定する国税の控除余裕額(同令第百九十八条第三項の規定によりないものとみなされた額を除く。)(以下この項及び第四十八条の十三第八項において「国税の控除余裕額」という。)、 → 仮に220とします。
B
外国の法人税等のうち法第五十三条第三十八項の規定により控除することができた額が道府県民税の控除限度額に満たない場合における当該道府県民税の控除限度額から当該控除することができた額を控除した残額(以下この条及び第四十八条の十三第八項において「道府県民税の控除余裕額」という。)又は
→ 仮に220とします。
C
外国の法人税等のうち法第三百二十一条の八第三十八項の規定により控除することができた額が市町村民税の控除限度額に満たない場合における当該市町村民税の控除限度額から当該控除することができた額を控除した残額(以下この項及び第四十八条の十三において「市町村民税の控除余裕額」という。)
→ 仮に220とします。
を前三年内事業年度のうち最も古い事業年度のものから順次に、かつ、同一の事業年度のものについては、国税の控除余裕額、道府県民税の控除余裕額及び市町村民税の控除余裕額の順に、
当該事業年度において課された外国の法人税等の額<1,235>のうち当該事業年度の国税の控除限度額<1,100>、道府県民税の控除限度額<10>及び市町村民税の控除限度額<60>の合計額<1,170>を超える部分の額<65>に充てるものとした場合に当該超える部分の額<65>に充てられることとなる道府県民税の控除余裕額の合計額<20>に相当する額
を加算した額<道府県民税の控除限度額30=10+20>とする。
後段の規定
この場合において、前三年内事業年度においてこの項<地令9条の7⑦>の規定により当該前三年内事業年度の当該超える部分の額に充てられることとなる国税の控除余裕額、道府県民税の控除余裕額及び市町村民税の控除余裕額は、この項<地令9条の7⑦>の規定の適用については、ないものとみなす。