適格合併と適格分割型分割があった場合の計算


今回は、適格合併と適格分割型分割があった場合の計算を確認してみましょう。

適格合併があった場合

法人が有価証券を売却した場合は、原則として有価証券の売却損益を計算する必要があります。

ただし、次の5つの例外については、下記の例外規定が優先されます。
1、第62条、合併や分割があった場合
2、第62条の2、適格合併や適格分割型分割があった場合
3、第62条の3、適格分社型分割があった場合
4、第62条の4、適格現物出資があった場合
5、第62条の5、現物分配があった場合

今回は、2の例外を見てみましょう。

(適格合併及び適格分割型分割による資産等の帳簿価額による引継ぎ)
第六十二条の二 内国法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、前条第一項及び第二項の規定にかかわらず、当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額として政令で定める金額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

法人税法第62条の2第1項、令和7年6月20日施行

内国法人は、合併でなくなる法人(被合併法人)のことです。

合併については、
1、適格要件を満たす「適格合併」
2、適格要件を満たさない合併
の2つがあります。

「適格合併により」と規定されていますので、適格要件の確認が必要です。

「前条第一項及び第二項の規定にかかわらず、」は、
・第62条第1項、合併や分割があった場合は、資産等の売却損益を認識する。
・第62条第2項、売却損益は、最後事業年度に計上する。
の2つの規定に関係なく、という意味です。

取扱いを見てみましょう。

当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額として政令で定める金額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

移転した資産や負債の
・適格合併の最後事業年度が終了した時の帳簿価額(税務上)
による引継ぎをしたものとして法人税の計算が必要となります。
(具体的な計算は、法人税法施行令の確認が必要です。)

適格分割型分割があった場合

法人税法では、分割が2種類あります。
1、分割型分割
2、分社型分割

分割があった場合、分割法人は分割承継法人に資産や負債を渡します。
分割法人 → 分割承継法人

分割の対価として分割承継法人は、分割法人に資産(お金や株式など)を渡します。
分割法人 ← 分割承継法人

分割の対価を受け取った分割法人が、分割法人の株主等に資産を
1、渡すものを「分割型分割」
2、渡さないものを「分社型分割」
といいます。

第62条第1項は、合併や分割があった場合の規定で、分割型分割か分社型分割かの区分がありません。

適格分割型分割があった場合の規定を見てみましょう。

2 内国法人が適格分割型分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

法人税法第62条の2第2項、令和7年6月20日施行

内国法人は、分割により資産や負債を渡す法人(分割法人)のことです。

「適格分割型分割により」と規定されていますので、適格要件の確認が必要です。
(適格合併の要件と異なります。)

「前条第一項の規定にかかわらず、」は、
・第62条第1項、合併や分割があった場合は、資産等の売却損益を認識する。
の規定に関係なく、という意味です。
(第62条第2項がない理由は、第2項が合併の規定だからです。)

取扱いを見てみましょう。

当該分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

移転した資産や負債の
・適格分割型分割の直前の帳簿価額(税務上)
による引継ぎをしたものとして法人税の計算が必要となります。
(具体的な計算は、法人税法施行令の確認が必要です。)

合併の場合は事業年度が終了しますが、分割の場合は事業年度が終了しないため、計算の基準が分割の直前となります。

(第1項の適格合併の規定には「政令で定める金額」とありますが、第2項の適格分割型分割の規定には「政令で定める金額」の文言がありません。)

分割法人が受け取った株式

分割法人が、分割の対価として受け取る株式に関する規定です。

3 前項の場合においては、同項の内国法人が同項の分割承継法人から交付を受けた当該分割承継法人又は第二条第十二号の十一(定義)に規定する分割承継親法人の株式の当該交付の時の価額は、同項の適格分割型分割により移転をした資産及び負債の帳簿価額を基礎として政令で定める金額とする。

法人税法第62条の2第3項、令和7年6月20日施行

内国法人(分割法人)が分割承継法人から交付を受けた
1、分割承継法人
2、分割承継法人の親法人
の株式の交付時の価額は、「適格分割型分割により移転をした資産及び負債の帳簿価額を基礎として政令で定める金額」となります。

通常は時価ですが、政令で定める金額(≒純資産価額に相当する金額)です。

資産や負債を受け取る法人の取扱い

・合併法人
・分割承継法人
が引継ぎを受ける資産や負債の計算や詳細は、政令の確認が必要です。

参考規定

4 合併法人又は分割承継法人が引継ぎを受ける資産及び負債の価額その他前三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法第62条の2第4項、令和7年6月20日施行

PAGE TOP