適格合併等があった場合の欠損金額の承継


今回は、適格合併等があった場合の欠損金額の承継を確認します。原則として他社の欠損金額は承継できませんが、適格合併等があった場合は、被合併法人等の欠損金額を承継することができます。

内容

カッコ書きを外します。

内国法人(法法57①)を合併法人とする適格合併が行われた場合又はその内国法人との間に完全支配関係(注1)がある他の内国法人でその内国法人が発行済株式等の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定した場合において、

その適格合併に係る被合併法人又はその他の内国法人(被合併法人等)のその適格合併の日「前」10年以内に開始し、又はその残余財産の確定日の翌日「前」10年以内に開始した各事業年度(前10年内事業年度)において生じた欠損金額(注2)があるときは、

その内国法人のその適格合併の日の属する事業年度又はその残余財産の確定日の翌日の属する事業年度(合併等事業年度)以後の各事業年度における法法57①の適用については、その前10年内事業年度において生じた未処理欠損金額(注3)は、それぞれその未処理欠損金額の生じた前10年内事業年度開始日の属するその内国法人の各事業年度(注4)において生じた欠損金額とみなします。

要件は2つです。

要件1、適格合併、完全支配関係がある法人の残余財産の確定すること。

適格合併があった場合は、被合併法人の資産・負債を簿価で承継して
一緒に欠損金額も承継することができます。

内国法人(合併法人)

↑ 適格合併(資産・負債の簿価承継)

被合併法人

もう1つが完全支配関係があるパターンです。

内国法人

↓ 100%

他の内国法人(残余財産の確定)

要件2、過去10年(9年)分の未使用の欠損金額があること。

過去10年分の欠損金額を承継できます。ただし、平成30年4月1日前開始事業年度の欠損金額(経過措置)については9年分です。

完全支配関係(注1)

注1、完全支配関係の範囲
その内国法人による完全支配関係又は相互の関係(法法2条12号の7の6)に限ります。

相互の関係も対象になります。

完全支配関係の定義

十二の七の六 完全支配関係 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。

法人税法2条12号の7の6

当事者間の完全支配の関係

2 法第二条第十二号の七の六に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに次に掲げる株式の数を合計した数の占める割合が百分の五に満たない場合の当該株式を除く。以下この項において同じ。)全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下この項において「直接完全支配関係」という。)とする。この場合において、当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人又は当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす。

法人税法施行令4条の2

当該一の者及びこれとの間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人
(Aとする)
又は
当該一の者との間に直接完全支配関係がある一若しくは二以上の法人
(Bとする)

他の法人の発行済株式等の全部を保有するときは、
当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす。

Aは主役を含む場合です。Bは主役を含まない場合です。

例えば、下記の場合は、P社・S1社がAで、S1社がBです。

P社(一の者)------------
↓                 ↓
↓ 100%(全部)          ↓ 90%
↓                 ↓
S1社(直接完全支配関係)→10%→ S2社

↓ 100%(全部)

S3社

P社とS1社が、S2社の発行済株式等の全部を保有するときは、
P社は、S2社株式の全部を保有するものとなります。

S1が、S3社の発行済株式等の全部を保有するときは、
P社は、S3社株式の全部を保有するものなります。

当事者間の完全支配関係はP社とS1社、P社とS2社、P社とS3社です。
S1社、S2社、S3社は相互関係です。

欠損金額の範囲(注2)

注2、欠損金額の範囲
その被合併法人等がその欠損金額(注2-2)の生じた前10年内事業年度について確定申告書を提出していることその他の政令で定める要件を満たしている場合におけるその欠損金額に限るものとし、法法57①によりその被合併法人等の前10年内事業年度に損金算入されたもの・欠損金の繰戻し還付の対象となったものを除きます。以下「未処理欠損金額」といいます。

未処理欠損金額=
要件を満たした欠損金額-使用した欠損金額-繰戻しで使用した欠損金額

注2-2、欠損金額の範囲
+この2項によりその被合併法人等の欠損金額とみなされたもの
-4項-5項-6項-8項-9項-58条1項

未処理欠損金額(注3)

注3、未処理欠損金額
その他の内国法人に株主等が2以上ある場合には、その未処理欠損金額をその他の内国法人の発行済株式等(自己株式等を除く)の総数等で除し、これにその内国法人の有するその他の内国法人の株式数などを乗じて計算した金額

「相互の関係」も欠損金の承継対象になります。
S2社の残余財産が確定した場合、S2社の欠損金額1,000だとすると
P社は、1,000×90%=900の欠損金額を承継します。
S1社は、1,000×10%=100の欠損金額を承継します。
S3社は、S2社株式を保有していないため、欠損金額を承継しません。

最後の事業年度の取扱い(注4)

注4、各事業年度の補足説明
その内国法人の合併等事業年度開始の日「以後」に開始したその被合併法人等のその前10年内事業年度において生じた未処理欠損金額にあっては、その合併等事業年度の「前」事業年度

例えば、合併法人(内国法人)と被合併法人(他の内国法人)の決算日が同じで、期中に合併(残余財産確定)した場合

            開始日4/1
合併法人---|-----|-----|--
                ↑ 6/30合併
被合併法人--|-----|--

被合併法人(他の内国法人)の最後の事業年度の欠損金額は、
合併等事業年度の1つ前の事業年度の欠損金額として承継します。

合併等事業年度開始の日「以後」なので、
期首合併だと、欠損金額の承継年度が1年遅くなります。

                  開始日4/1
合併法人---|-----|-----|--
                    ↑ 4/1合併
被合併法人--|-----|----

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