適格現物出資があった場合の計算


今回は、適格現物出資があった場合の計算を確認してみましょう。

現物出資法人と被現物出資法人の定義

法人税法で規定されている定義を確認してみましょう。

現物出資法人の定義

十二の四 現物出資法人 現物出資によりその有する資産の移転を行い、又はこれと併せてその有する負債の移転を行つた法人をいう。

法人税法第2条第12号の4、令和7年6月20日施行

お金以外の財産を出資することを「現物出資」といいます。
現物出資により資産や負債を渡した法人を「現物出資法人」といいます。

被現物出資法人の定義

十二の五 被現物出資法人 現物出資により現物出資法人から資産の移転を受け、又はこれと併せて負債の移転を受けた法人をいう。

法人税法第2条第12号の5、令和7年6月20日施行

現物出資により現物出資法人から、資産や負債を受け取った法人を「被現物出資法人」といいます。

適格現物出資があった場合

参考規定を確認してみましょう。

(適格現物出資による資産等の帳簿価額による譲渡)
第六十二条の四 内国法人が適格現物出資により被現物出資法人にその有する資産の移転をし、又はこれと併せてその有する負債の移転をしたときは、当該被現物出資法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格現物出資の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。
2 被現物出資法人の資産及び負債の取得価額その他前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法第62条の4、令和7年6月20日施行

内国法人は、現物出資法人を指しています。

「適格現物出資により」とあるため、適格要件を満たした現物出資に限定されています。適格要件を満たさない現物出資は、関係しません。

取扱いを確認してみましょう。

当該被現物出資法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格現物出資の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

移転した資産や負債の
・現物出資の直前の帳簿価額による売却
をしたものとして、法人税を計算する必要があります。

法人税法施行令の取扱い

法人税法施行令に被現物出資法人の取扱いが規定されています。

(適格現物出資における被現物出資法人の資産及び負債の取得価額)
第百二十三条の五 内国法人が適格現物出資により現物出資法人から資産の移転を受け、又はこれと併せて負債の移転を受けた場合には、当該移転を受けた資産及び負債の取得価額は、法第六十二条の四第一項(適格現物出資による資産等の帳簿価額による譲渡)に規定する帳簿価額に相当する金額(その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とし、当該資産又は負債が当該現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であつた場合には当該移転を受けた資産及び負債の価額として当該内国法人の帳簿に記載された金額とする。)とする。

法人税法施行令123条の5、令和7年4月1日施行

内国法人は、被現物出資法人(現物出資を受けた法人)を指しています。

「適格現物出資により」とあるため、適格要件を満たさない現物出資は関係ありません。

取扱いを確認してみましょう。

当該移転を受けた資産及び負債の取得価額は、法第六十二条の四第一項(適格現物出資による資産等の帳簿価額による譲渡)に規定する帳簿価額に相当する金額(その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とし、当該資産又は負債が当該現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であつた場合には当該移転を受けた資産及び負債の価額として当該内国法人の帳簿に記載された金額とする。)とする。

カッコ書きを外します。

受け取った資産や負債の取得価額は、
法第62条の4第1項に規定する帳簿価額に相当する金額です。

法第62条の4第1項は、先ほど確認した規定です。

「帳簿価額に相当する金額」とあるため、
・1、渡した資産や負債の金額
・2、受け取った資産や負債の金額
2つの金額は、同じになります。

ただし、資産や負債の受け取りのために要した費用については、取得費用をプラスします。

現物出資法人が公益法人等の場合

適格現物出資の取扱いは、適格分社型分割の取扱いとほとんど同じですが、異なる部分があります。

当該資産又は負債が当該現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であつた場合には当該移転を受けた資産及び負債の価額として当該内国法人の帳簿に記載された金額とする。)

資産や負債が
1、公益法人等
2、人格のない社団等
に該当する現物出資法人の「収益事業以外の事業」の
資産や負債であった場合が要件です。

要件を満たす場合、受け取った資産や負債の価額として
その内国法人(被現物出資法人、現物出資を受けた法人)の
帳簿に記載された金額に変わります。

おまけ

公益法人等に該当する現物出資法人が非収益事業の
・資産 600
・負債 200
を現物出資した場合、

被現物出資法人は、帳簿に記載された金額に変わります。

例えば、帳簿に
・資産 700
・負債 250
と記載したとします。

資本金等の額の計算方法を確認してみました。

八 適格現物出資により移転を受けた資産及び当該資産と併せて移転を受けた負債の純資産価額(現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該資産の帳簿価額(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)から当該現物出資法人の当該適格現物出資の直前の当該負債の帳簿価額(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)を減算した金額をいう。)から当該適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額(法人を設立する適格現物出資にあつては、その設立の時における資本金の額又は出資金の額)を減算した金額

法人税法施行令第8条第1項第8号、令和7年4月1日施行

A、(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)

B、(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)

AからBを減算した金額とありますので、
A、資産 700
B、負債 250
A-B=450となります。

450から増加した資本金の額(仮に200)を減算した金額(450-200=250)が、資本金等の額の加算となります。

金額を変更して記載した場合
資産 700 / 負債 250
     / 資本金の額(資本金等の額) 200
     / その他(資本金等の額) 250

資本金等の額 200+250=450

金額を変更しないで記載した場合
資産 600 / 負債 200
      / 資本金の額(資本金等の額) 200
      / その他(資本金等の額) 200

資本金等の額 200+200=400

金額を変更して記載した場合と変更しないで記載した場合とで資本金等の額が変わるのでしょうか? 再度規定を確認してみます。

A、(当該資産が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する資産であつた場合には、当該資産の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)

B、(当該負債が当該現物出資法人である公益法人等又は人格のない社団等の収益事業以外の事業に属する負債であつた場合には、当該負債の価額として当該法人の帳簿に記載された金額)

AとBに規定されている「当該法人」の帳簿に記載された金額の「当該法人」は、被現物出資法人だと読みましたが、現物出資法人を指しているのでしょう。

現物出資法人の帳簿に記載された金額であれば、
被現物出資法人の記載金額に関係なく、資本金等の額は変わりません。

金額を変更して記載した場合
資産 700 / 負債 250
     / 資本金の額(資本金等の額) 200
     / その他(資本金等の額) 250ではなく、

現物出資法人の帳簿に記載された金額から計算しますと
・資産(600)-負債(200)-資本金の額(200)=資本金等の額(200)
となります。

2025/10/31、削除

まとめ
・資産と負債の取得価額は、受け取った法人の帳簿に記載した金額
・資本金の額の増加額は、渡した法人の帳簿に記載した金額

資産や負債の金額を変更して記載した場合、資本金等の額や利益積立金額が一致しなくなるため、別表調整が必要になるのでしょう。

2025/10/31、追加

被現物出資法人が金額を変更して記載した場合は、変更した金額を使用してそのまま資本金等の額の加算額を計算する方法が正しいと考えれます。

資産 700 / 負債 250
     / 資本金の額(資本金等の額) 200
     / その他(資本金等の額) 250


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