適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置_政令


今回は、適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の政令を確認します。

概要

今回確認する規定は、次の4つです。

  • 登録申請書の提出等(消費税項施行令15条)
  • 適格請求書発行事業者の登録に係る小規模事業者に係る納税義務の免除の特例(消費税項施行令16条)
  • 棚卸資産の消費税額の調整(消費税項施行令17条)
  • 簡易課税制度(消費税項施行令18条)
登録申請書の提出等(消令15条)

原則として、令和5年3月31日までにインボイスの登録申請をする必要があります。ただし、困難な事情がある場合において、その旨を記載してインボイスの登録がされたときは、令和5年10月1日にインボイスの登録を受けたものとして取り扱われます。

(登録申請書の提出等に関する経過措置)
第十五条 二十八年改正法附則第四十四条第一項の規定により五年消費税法第五十七条の二第二項の申請書を提出しようとする事業者が、二十八年改正法附則第四十四条第一項ただし書に規定する五年施行日の六月前の日までに当該申請書を提出することにつき困難な事情がある場合において、当該申請書に当該困難な事情を記載して提出し、五年消費税法第五十七条の二第三項の規定による同条第一項の登録がされたときは、二十八年改正法附則第四十四条第一項ただし書の規定にかかわらず、五年施行日に五年消費税法第五十七条の二第一項の登録を受けたものとみなす。

租税特別措置法86条の5、施行日令和5年10月1日
特別な被災した場合(消令16条)

特別な被災を受けた場合の特例です。

基準期間における課税売上高が1000万円以下のインボイス発行事業者が、
指定日までにインボイスの登録取りやめ届出書を提出した場合には、
その提出翌日にインボイスの登録が取り消されます(措置法)。

この取り消しの対象となった課税期間については、
消費税の納税義務が免除されます(消費税法)。

わかりにくいので流れをメモします。

消費税法施行令、附則16条
措置法86の5、13項(被災した場合のインボイスの取りやめ)の課税期間は、
納税義務の免除(28年改正法附則第44条第4項の規定)は、適用しない。

 ↓

消費税法、附則44条4項
当該登録開始日から当該課税期間の末日までの間は、
インボイス登録事業者となる。

 ↓

課税事業者期間とインボイス
登録開始日からインボイス取りやめ届出書の提出日までは、
インボイスが有効。提出翌日からインボイスが無効。
(課税事業者期間とインボイス登録期間がずれる?)

以下、インボイス登録の取りやめに関する特例です。
租税特別措置法86条の5、施行日令和5年10月1日

 被災事業者で被災日の属する課税期間以後の課税期間につき消費税法第九条第四項の規定の適用を受けることをやめようとする者が、同条第五項の規定による届出書を指定日までにその納税地を所轄する税務署長に提出したときは、当該届出書を同条第四項の規定の適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなして、同条第八項の規定を適用する。

13 被災事業者である適格請求書発行事業者(消費税法第二条第一項第七号の二に規定する適格請求書発行事業者をいい、その課税期間に係る同法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である者に限る。以下この項及び次項において同じ。)が、指定日までに同法第五十七条の二第十項第一号の規定による届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その提出があつた日の翌日に、同条第一項の登録は、その効力を失う。この場合において、当該適格請求書発行事業者のその提出があつた日の属する課税期間に係る同法第九条第一項及び第十五条第六項の規定の適用については、同法第九条第一項中「である者(適格請求書発行事業者を除く。)」とあるのは「である者」と、同法第十五条第六項中「の初日において適格請求書発行事業者である場合又は当該課税期間における」とあるのは「における」と、「若しくは」とあるのは「又は」とする。

14 前項の規定は、被災事業者である適格請求書発行事業者が、第三項の届出書を提出した場合について準用する。この場合において、前項中「同法第五十七条の二第十項第一号の規定による」とあるのは「第三項の」と、「の翌日」とあるのは「に、同法第五十七条の二第十項第一号の規定による届出書がその納税地を所轄する税務署長に提出されたものとみなし、同日の翌日」と、「のその」とあるのは「の第三項の届出書の」と読み替えるものとする。

租税特別措置法86条の5、施行日令和5年10月1日

インボイスの登録の取りやめがあった場合は免税事業者に戻ります。

13項による消費税法9条1項の読み替え

(小規模事業者に係る納税義務の免除)
第九条 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

消費税法

インボイスの登録は、提出翌日に効力を失いますが、
納税義務の免除については、提出翌日ではないように読めます。
「当該適格請求書発行事業者のその提出があつた日の属する課税期間に係る同法第九条第一項及び第十五条第六項の規定の適用については」とあるからです。

14項に準用規定があるので、13項を読み替えます。

13 被災事業者である適格請求書発行事業者(消費税法第二条第一項第七号の二に規定する適格請求書発行事業者をいい、その課税期間に係る同法第九条第一項に規定する基準期間における課税売上高が千万円以下である者に限る。以下この項及び次項において同じ。)が、指定日までに第三項の届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その提出があつた日に、同法第五十七条の二第十項第一号の規定による届出書がその納税地を所轄する税務署長に提出されたものとみなし、同日の翌日に、同条第一項の登録は、その効力を失う。

この場合において、当該適格請求書発行事業者の第三項の届出書の提出があつた日の属する課税期間に係る同法第九条第一項及び第十五条第六項の規定の適用については、同法第九条第一項中「である者(適格請求書発行事業者を除く。)」とあるのは「である者」と、同法第十五条第六項中「の初日において適格請求書発行事業者である場合又は当該課税期間における」とあるのは「における」と、「若しくは」とあるのは「又は」とする。

租税特別措置法86条の5、施行日令和5年10月1日

基準期間における課税売上高が1000万円以下のインボイス発行事業者が、指定日までに「課税事業者選択不適用届出書」を提出した場合には、その提出日にインボイス取りやめ届出書が提出されたものとみなされ、その提出翌日にインボイスの登録が取り消されます。

免税事業者+インボイス登録(経過措置)の事業者が、
インボイス登録事業者を取りやめる場合が13項です。

課税事業者(選択)+インボイス登録の事業者が、
インボイス登録事業者を取りやめる場合が14項です。

後者の場合、インボイス登録取りやめ届出書を提出したとしても課税事業者として残ってしまうため、課税事業者選択の取りやめとインボイス登録事業者の取りやめの両方を手続きする必要があります。

それだと煩雑なので、「課税事業者選択不適用届出書」の提出により、
インボイス取りやめ届出書が提出したものとして扱われます。

気になる点。
課税事業者選択不適用届出の効力は遡りますが、
インボイスの登録失効は遡りません。
相手方の仕入税額控除に配慮した取扱いなのでしょうか。
13項も14項も、既に交付したインボイスは有効で、
売り手の消費税の納税義務だけ免除するような特例だと思います。

経過措置によりインボイス登録事業者となった事業者は、原則として2年間課税事業者が強制されますが、特別な被災によりインボイスの登録を取り消した場合は、2年間の課税事業者が強制されずに免税事業者に戻ることができます。

参考規定

(適格請求書発行事業者の登録に係る小規模事業者に係る納税義務の免除の特例に関する経過措置)
第十六条 二十八年改正法第十条の規定による改正後の租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号。次項において「新租税特別措置法」という。)第八十六条の五第十三項(同条第十四項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けた課税期間については、二十八年改正法附則第四十四条第四項の規定は、適用しない。
2 新租税特別措置法第八十六条の五第十三項の規定の適用を受ける課税期間以後の課税期間(同項の規定により効力を失うこととされた五年消費税法第五十七条の二第一項の登録により二十八年改正法附則第四十四条第五項本文の規定の適用を受けることとなる課税期間に限る。については、二十八年改正法附則第四十四条第五項本文の規定は、適用しない。

消費税法施行令、附則、令和5年10月1日施行

インボイス制度前の記事について(参考)
特定非常災害があった場合の消費税の届出などの特例

棚卸資産の消費税額の調整(消費税法施行令17条)

免税事業者がインボイス登録事業者となった場合、登録開始日から課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)に変わるため、登録開始日の前日を基準に棚卸資産の消費税額を調整する必要が生じます。

(納税義務の免除を受けないこととなった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整に関する経過措置)
第十七条 消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者が、二十八年改正法附則第四十四条第四項の規定により消費税法第九条第一項本文の規定の適用を受けないこととなった場合において、登録開始日(二十八年改正法附則第四十四条第三項に規定する登録開始日をいう。次条において同じ。)の前日において消費税を納める義務が免除されていた期間中に国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産(消費税法第二条第一項第十五号に規定する棚卸資産をいう。以下この条において同じ。)又は当該期間における保税地域(消費税法第二条第一項第二号に規定する保税地域をいう。)からの引取りに係る課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号に規定する課税貨物をいう。)で棚卸資産に該当するもの(これらの棚卸資産を原材料として製作され、又は建設された棚卸資産を含む。)を有しているときは、消費税法第三十六条第一項及び第二項の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「又は第十二条第五項」とあるのは、「、第十二条第五項又は所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第四十四条第四項」と読み替えるものとする。

消費税法施行令、附則、令和5年10月1日施行
簡易課税制度(消費税法施行令18条)

簡易課税制度の選択は原則として事前提出ですが、インボイス制度の改正により課税事業者となる場合は、事後提出が認められています。ただし、登録開始日を含む課税期間中の事後提出に限ります。また、事後提出である旨を届出書に記載する必要がありますので注意しましょう。

(仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用を受ける旨の届出に関する経過措置)
第十八条 二十八年改正法附則第四十四条第四項の規定の適用を受ける事業者が、消費税法第三十七条第一項に規定する届出書を登録開始日を含む課税期間中にその納税地を所轄する税務署長に提出した場合において、当該届出書に当該届出書を提出した日の属する課税期間について同項の規定の適用を受ける旨を記載したときは、当該課税期間の初日の前日に当該届出書を当該税務署長に提出したものとみなして、同項の規定を適用する。

消費税法施行令、附則、令和5年10月1日施行
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