配偶者の相続税が減る特例


今回は、配偶者の相続税が減る特例を確認してみましょう。

内容

1つ目の要件は、
亡くなった方の配偶者が相続や遺贈により財産を取得した場合です。

2つ目の要件は、
第1号の金額-第2号の金額がプラス残高の場合です。

残高がある場合は、残高が相続税額となります。
残高がない場合は、相続税がかかりません。

第1号の金額と第2号の金額の計算方法を確認してみましょう。
(参考規定は最後に載せています。)

第1号の金額、配偶者の相続税

第1号を確認してみましょう。

一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額

第1号の金額は、配偶者の相続税が減る特例が適用される前の配偶者の相続税です。

第15条から~とありますので、該当する規定を確認してみましょう。

第15条、遺産に係る基礎控除、3000万円+法定相続人×600万円
第16条、相続税の総額、税率表にあてはめて相続税の全体を求める。
第17条、各相続人等の相続税額、相続税を取得した財産の割合で按分する。
前条(第19条)、生前の贈与を相続したものとして加算する特例

第2号の金額、軽減される相続税

第2号の金額は、配偶者の相続税が減る金額です。

長い規定ですので分けて確認してみましょう。

二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額

例えば、相続人Aの財産が2億円で
・配偶者B、1億8000万円
・子C、1000万円
・子D、1000万円
が取得したとします。

相続により財産を取得した全ての者は、
・配偶者B
・子C
・子D
の3人で、3人の相続税の総額(全体)は、2700万円となります。

この相続税の総額(全体)に軽減される割合をかけたものが
配偶者の相続税が減る金額です。

軽減される割合

軽減される割合は

次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額
÷相続などにより財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額

で計算します。

次に掲げる金額は、イとロに規定されています。

イを確認してみましょう。

イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分()を乗じて算出した金額()に相当する金額(当該金額が1億6000万円に満たない場合には、1億6000万円)

カッコ書きは、相続の放棄があった場合の取扱いなので省略しています。

相続などにより財産を取得した全ての者に係る
相続税の課税価格の合計額は、

・配偶者B、1億8000万円
・子C、1000万円
・子D、1000万円
を合計すると2億円となります。

合計額(2億円)に
配偶者の民法で定められている相続の割合(法定相続分)をかけます。

今回の相続人は配偶者と子の組み合わせですので、
配偶者の法定相続分は、1/2となります。

合計額(2億円)×配偶者の法定相続分(1/2)=1億円

計算した金額が1億6000万円に満たない場合は、
自動的に1億6000万円となります。

今回は、1億円<1億6000万円ですので、1億6000万円となります。

ロを確認してみましょう。

ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額

配偶者の相続税の課税価格(課税される財産を取得した金額)は、配偶者Bの1億8000万円となります。

軽減される割合は、

次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額(イとロを比べて少ない金額)
÷相続などにより財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額

で計算しますので、数字を使って確認してみましょう。

次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額(イとロを比べて少ない金額)
イ、1億6000万円(2億円×1/2=1億円、最低1億6000万円)
ロ、1億8000万円(配偶者が取得した金額)
ハ、イとロを比べて少ない金額 イの1億6000万円

相続などにより財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額
・配偶者B、1億8000万円
・子C、1000万円
・子D、1000万円
を合計すると2億円となります。

軽減される割合は、
1億6000万円÷2億円=0.8となります。

まとめ

第1号の金額(配偶者の軽減前の相続税)
・相続税の総額(全体で2700万円)×取得した割合(0.9)=2430万円
・配偶者が取得した財産の割合 1億8000万円÷2億円=0.9

第2号の金額(配偶者の相続税の軽減額)
・相続税の総額(全体で2700万円)×軽減される割合(0.8)=2160万円
・配偶者の相続税が軽減される割合 1億6000万円÷2億円=0.8

第1号の金額(2430万円)-第2号の金額(2160万円)
=配偶者の相続税(270万円)

配偶者の相続税が減る特例については、手続きが必要です。
(相続税の確定申告書に一定の書類を添付)

参考規定

配偶者に対する相続税額の軽減

第十九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。
一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額
二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額
イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が一億六千万円に満たない場合には、一億六千万円)
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額

相続税法第19条の2第1項、令和6年4月1日

配偶者の相続税の軽減は、手続きが必要

3 第一項の規定は、第二十七条の規定による申告書(当該申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。第五項において同じ。)又は国税通則法第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に、第一項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をした書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

相続税法第19条の2第3項、令和6年4月1日

やむを得ない事情がある場合

4 税務署長は、前項の財務省令で定める書類の添付がない同項の申告書又は更正請求書の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。

相続税法第19条の2第4項、令和6年4月1日
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