今回は、配偶者の相続税が減る特例のうち、未分割であっても軽減できる場合を確認してみましょう。
未分割であっても軽減できる場合
配偶者の相続税が減る特例の主な要件は、次の3つです。
1、亡くなった方の配偶者が相続などにより財産を取得している。
2、相続税の確定申告書に一定の書類を添付する(手続きする)。
3、相続税の確定申告期限までに財産を分割する。
確定申告期限までに分割していない財産(未分割の財産)については、原則として配偶者の税額を減らすことができません。
ただし、例外の要件を満たす場合は、後から税額を減らすことが可能です。例外の規定を確認してみましょう。
2 省略。ただし、その分割されていない財産が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。
相続税法第19条の2第2項、令和6年4月1日
未分割の財産が相続税の申告期限から3年以内()に分割された場合は、分割された財産については税額軽減の対象となります。
カッコ書きには、3年以内に分割されなかったことにつき、やむを得ない事情があり、承認を受けた場合には、3年を超えても税額軽減の特例が適用できることが規定されています。
3年以内に分割される見込みがある場合
3年以内に分割される見込みがある場合は、相続税の確定申告書に
・申告期限後3年以内の分割見込書
を添付する必要があります。
参考リンク、B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2327.htm
参考規定、相続税法施行規則第1条の6第3項第2号
3年以内に分割できない事情
3年以内に分割ができない事情は、次の5つです。
申告期限の翌日から3年を経過する日において
1、訴えの提起がされている場合
2、和解、調停、審判の申立てがされている場合
3、遺産の分割が禁止されている場合
4、相続の承認や放棄の期間が伸長されている場合
5、他にやむを得ない事情があると認められる場合
分割ができない事情が解決した場合は、解決した日から4月以内に分割する必要があります。
3年を超える場合は、承認の申請が必要
3年を超える場合は、別に承認申請が必要となります。承認を受けるための手続きを確認してみましょう。
2 法第十九条の二第二項に規定する相続又は遺贈に関し同項に規定する政令で定めるやむを得ない事情があることにより同項の税務署長の承認を受けようとする者は、当該相続又は遺贈に係る申告期限後三年を経過する日の翌日から二月を経過する日までに、その事情の詳細その他財務省令で定める事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
相続税法施行令第4条の2第2項、令和7年4月1日施行
申請の期限は、相続税の申告期限後、3年を経過する日の翌日から2月以内です。
参考リンク、B1-6 遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/1585-01.htm
申請をすると、税務署長から書面により連絡があります。連絡がなかった場合は自動的に申請が承認されます。
まとめ
1、原則 申告期限までに分割が必要
2、例外 申告期限を超えて分割する場合
・3年以内の場合は、分割見込書を確定申告書に添付
・3年を超える場合は、3年経過後2月以内に承認申請が必要。4月以内に分割。
その他参考規定
書面通知
3 税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合において、承認又は却下の処分をするときは、その申請をした者に対し、書面によりその旨を通知する。
相続税法施行令第4条の2第3項、令和7年4月1日施行
自動承認
4 第二項の申請書の提出があつた場合において、当該申請書の提出があつた日の翌日から二月を経過する日までにその申請につき承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす。
相続税法施行令第4条の2第4項、令和7年4月1日施行
やむを得ない事情と政令で事情が解決した日
(配偶者に対する相続税額の軽減の場合の財産分割の特例)
相続税法施行令第4条の2第1項、令和7年4月1日
第四条の二 法第十九条の二第二項に規定する政令で定めるやむを得ない事情がある場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定める日は、これらの場合の区分に応じ当該各号に定める日とする。
一 当該相続又は遺贈に係る法第十九条の二第二項に規定する申告期限(以下次項までにおいて「申告期限」という。)の翌日から三年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合(当該相続又は遺贈に関する和解又は調停の申立てがされている場合において、これらの申立ての時に訴えの提起がされたものとみなされるときを含む。) 判決の確定又は訴えの取下げの日その他当該訴訟の完結の日
二 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から三年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合(前号又は第四号に掲げる場合に該当することとなつた場合を除く。) 和解若しくは調停の成立、審判の確定又はこれらの申立ての取下げの日その他これらの申立てに係る事件の終了の日
三 当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から三年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百八条第一項若しくは第四項(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)の規定により遺産の分割が禁止され、又は同法第九百十五条第一項ただし書(相続の承認又は放棄をすべき期間)の規定により相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合(当該相続又は遺贈に関する調停又は審判の申立てがされている場合において、当該分割の禁止をする旨の調停が成立し、又は当該分割の禁止若しくは当該期間の伸長をする旨の審判若しくはこれに代わる裁判が確定したときを含む。) 当該分割の禁止がされている期間又は当該伸長がされている期間が経過した日
四 前三号に掲げる場合のほか、相続又は遺贈に係る財産が当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から三年を経過する日までに分割されなかつたこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合 その事情の消滅の日