配偶者の相続税が減る特例_未分割の財産がある場合


今回は、配偶者の相続税が減る特例のうち、未分割の財産がある場合を確認してみましょう。

未分割の場合

配偶者が相続などにより亡くなった方の財産を受け取った場合は、配偶者の相続税が減る特例があります。「配偶者に対する相続税額の軽減」といいます。

参考リンク
配偶者の相続税が減る特例

配偶者に対する相続税額の軽減を受けるためには、相続税の確定申告書に一定の書類を添付するなどの手続きが必要です。

他には、相続税の確定申告期限までに財産の分割が済んでいる必要があります。

規定を確認してみましょう。
(参考規定は最後に掲載しています。)

「第27条の規定による申告書」は、相続税の確定申告書のことです。

「当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合」は、

1、亡くなった方の財産の全てが未分割の場合
2、亡くなった方の財産の一部が未分割の場合(一部は分割済)
の2つの意味があります。

「前項の規定の適用については、」は、配偶者に対する相続税額の軽減を指します。

「その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。」の同項第2号ロは、相続などにより財産を取得した配偶者が取得した財産の金額です。

まとめますと、未分割の財産の金額は、配偶者が取得した財産の金額に含まれないことになります。

計算例

例えば、相続人Aの財産が2億円で
・配偶者B、1億円
・子C、1000万円
・子D、1000万円
が取得したとします。残り8000万円は未分割です。

未分割の8000万円については、民法で規定されている相続の割合(法定相続分)などで財産を取得したものとして相続税の計算をします。

未分割の8000万円を法定相続分で取得したと仮定して計算してみましょう。
・配偶者B 8000万円×1/2=4000万円
・子C、8000万円×1/4=2000万円
・子D、8000万円×1/4=2000万円

分割済の財産と未分割の財産を合計します。
・配偶者B 1億円+4000万円=1億4000万円
・子C、1000万円+2000万円=3000万円
・子D、1000万円+2000万円=3000万円

配偶者は1億4000万円の財産を取得していますが、税額軽減の計算上、未分割の4000万円は配偶者が取得した財産の金額に含まれません。そのため、分割済の1億円で軽減される金額を計算することになります。

1、配偶者の軽減前の相続税
・相続税の総額(全体で2700万円)×取得した割合(70%)=1890万円
・配偶者が取得した財産の割合 合計1億4000万円÷2億円=70%

2、配偶者の相続税の軽減額
・相続税の総額(全体で2700万円)×軽減される割合(50%)=1350万円
・配偶者の相続税が軽減される割合 分割済の1億円÷2億円=50%
(分割済1億円<1億6000万円、少ない金額1億円)

1の金額(1890万円)-2の金額(1350万円)=配偶者の相続税(540万円)

参考規定など

相続税の配偶者の税額軽減、未分割の場合

2 前項の相続又は遺贈に係る第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、以下省略

相続税法第19条の2第2項、令和6年4月1日

検算
・相続税の総額(全体で2700万円)×未分割の割合(20%)=540万円
・配偶者の未分割財産の割合 未分割4000万円÷2億円=20%

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