個人が限定承認を選択しない相続により、土地・建物などの不動産、株式を取得した場合には、亡くなった方の取得費を引き継いで譲渡所得等の計算をします。今回は、個人が限定承認を選択した場合の取得費の取扱いを確認します。
内容
個人が限定承認を選択した場合は、亡くなった方の取得費を引き継がず、取得時の価額(時価)で取得したものとして譲渡所得等の計算をします。
例えば、亡くなった方が取得した金額1000万円
亡くなったときの取得費500万円、時価600万円の場合、
時価600万円で取得したものとして譲渡所得などの金額を計算します。
限定承認がある場合の比較
内容 | 被相続人 (亡くなった方) | 相続人 |
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所得税の取扱い | 時価による譲渡 (所法59①一) | 時価による取得 (所法60④) |
限定承認がない場合の比較
内容 | 被相続人 (亡くなった方) | 相続人 |
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所得税の取扱い | - | 取得費等の引継ぎ (所法60①) |
消費税については、いずれも特殊な取扱いはありません。
参考規定
時価により売ったものとする取扱い
(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
所得税法
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
時価により取得したものとする取扱い
4 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。
所得税法60条