雑所得の現金基準


今回は、雑所得の現金基準を確認してみましょう。

雑所得の現金基準

小規模の事業者については、取引の発生を基準とする発生基準ではなく、現預金の入出金を基準とする現金基準の選択が可能です。

現金基準は、
・不動産所得か事業所得を青色申告している人
が選択できます。

雑所得については、現金基準が選択できないのかと思われるかもしれませんが、雑所得の現金基準も認められています。

ただし、雑所得の現金基準の要件は、事業所得等の現金基準の要件と異なり、
・2年前の雑所得に関する業務の売上が300万円以下
となります。

要件の違い
・事業所得等の要件は「所得」が300万円以下
・雑所得の要件は「収入金額」が300万円以下

現金基準の対象外

雑所得の現金基準については、現金基準が選択できない取扱いが2つあります。

・業務の全部を売却した年、業務を廃止した年、亡くなった年
・山林、動産、不動産の売却
(事業所得者の農産物を収穫した場合の取扱いはなし)

現金以外の物を受け取ったり、経済的な利益が発生した場合は、現預金の直接の収入はありませんが、雑所得の収入として計上する必要があります。

経費については、現金基準が選択できない取扱いが2つあります。
・減価償却の計算
・資産の損失

1つ10万円以上の固定資産については、原則として使用年数に応じて費用を按分する必要があります。
(減価償却といいます。)

減価償却は複数年にわたって計算するため、資産の損失は損失の発生に応じて費用が計上するため、現金基準の対象外となります。

現金基準の手続き

雑所得の現金基準については、確定申告書を提出する場合、
・雑所得の現金基準を選択する旨
を確定申告書に記載する必要があります。

事業所得等の現金基準については、
・現金基準を選択しようとする年の3月15日
までに届出書を提出する必要があるのに対して、雑所得の現金基準については、届出書の提出規定がありません。

参考規定

小規模事業者の雑所得の現金基準

2 雑所得を生ずべき業務を行う居住者のうち小規模な業務を行う者として政令で定める要件に該当するもののその年分の当該雑所得を生ずべき業務に係る雑所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額及び必要経費に算入すべき金額は、政令で定めるところにより、その業務につきその年において収入した金額及び支出した費用の額とすることができる。

所得税法第67条第2項、施行日令和6年6月12日

2年前の雑所得の業務収入が300万円以下であること。

(雑所得を生ずべき小規模な業務を行う者の要件)
第百九十六条の二 法第六十七条第二項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)に規定する政令で定める要件は、その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が三百万円以下であることとする。

所得税法施行令第196条の2、施行日令和6年4月1日

収入の計算方法

(雑所得を生ずべき小規模な業務を行う者の収入及び費用の帰属時期)
第百九十六条の三 法第六十七条第二項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)に規定する居住者で前条に規定する要件に該当するもののその年分(雑所得を生ずべき業務の全部を譲渡し、若しくは廃止し、又は死亡した日の属する年分を除く。)の雑所得を生ずべき業務に係る雑所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額に算入すべき金額は、法第二編第二章第二節第三款(収入金額の計算)の規定の適用を受けるものを除き、その者の選択により、その業務につきその年において収入した金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入した場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とすることができる。

所得税法施行令第196条の3第1項、施行日令和6年4月1日

費用の計算方法

2 前項の規定の適用を受ける居住者のその年分の同項に規定する雑所得を生ずべき業務に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、償却費及び法第五十一条第四項(資産損失の必要経費算入)の規定の適用を受けるものを除き、その年において当該業務に係る雑所得の総収入金額を得るために直接支出した費用の額及びその年において当該業務について支出した費用の額とする。

所得税法施行令第196条の3第2項、施行日令和6年4月1日

その他

3 前二項に定めるもののほか、第一項の規定の適用を受ける居住者がその適用を受けないこととなる場合における雑所得に係る総収入金額及び必要経費の特例その他前二項の規定の適用に関し必要な事項は、財務省令で定める。

所得税法施行令第196条の3第3項、施行日令和6年4月1日

雑所得の現金基準の手続き

3 前条第一項の選択をする居住者は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書を提出する場合には、当該申告書にその適用を受ける旨の記載をしなければならない。

所得税法施行令第197条第3項、施行日令和6年4月1日

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