今回は、電帳法のポイントである「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」の詳細を見ていきます。2022/5/16、修正
目次
電子取引データの保存義務の概要
所得税・法人税の書類などの保存義務者が、領収証や請求書をデータで受け渡しした場合は、一定の方法(改ざん防止措置、検索要件等)により、そのデータを保存する必要があります。
具体的な保存ルールを見る前に「電子取引」を確認します。
電子取引
「取引情報」の受け渡しをメール等により行う取引を「電子取引」といいます。取引の対象となるものがデータかどうかではなく、取引情報がデータかどうかです。
例えば、音楽のダウンロードであっても、紙の領収書や請求書を受け渡しすれば、電子取引に該当しません。逆に、Amazon等で注文したものが有形のものであっても、領収書や請求書をデータで受け渡しすれば、電子取引に該当します。
実務上、電子取引に該当するものと該当しないものの判断は困難でしょう。基本的には全て電子取引に該当するものとして保存するのではないかと予想しています。システムを導入する会社もあるのでしょうね。
取引情報
取引に関して受け渡しする
注文書、契約書、領収書、見積書、その他の書類
に通常記載される事項を「取引情報」をいいます。
データで受け取ったとしても、取引情報がない場合は、
データの保存義務はありませんが、
取引情報がある場合は保存義務があります。
取引の都度、判断するのは難しいと思います。
参考規定、電子取引と取引情報の定義規定
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
五 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録<データ>を保存しなければならない。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
改ざん防止措置
以下の4つのうち、いずれか1つを満たす必要があります。
取引によって組み合わせてもOKです。
- タイムスタンプ済データの受領
- 自社でタイムスタンプを付す方法
- 訂正・削除が実質的に行えないシステムを利用する方法
- 事務処理規程を用いる方法
1について
タイムスタンプが付されているデータを受け渡しするため、改ざんできません。
2について
改ざんされる可能性があるため、送受信の後、タイムスタンプを付すか、
約2ヶ月以内の間にまとめてタイムスタンプを付すかを選択します。
まとめて付す場合は、その間に改ざんされる可能性が残りますので、
タイムスタンプ規程を設ける必要があります。
3について
訂正・削除ができないシステム、
訂正・削除の履歴が残るシステムを利用するため、
改ざんされるリスクは軽減できます。
4について
事務処理規程を設けて、データの改ざんを防止する方法です。
上記4つの措置を行って、一定のルールで保存すれば保存義務を満たします。
検索要件
次の3つの要件を満たす必要があります。
- 出力要件
- 検索要件
- 概要書の備え付け要件
出力要件(2条2項2号)
データは人間の目で視認できませんので、
視認できるような環境を整えることを要件としています。
検索要件(2条6項6号)
税務調査等で効率良く調べようとする場合、検索機能が必要です。
検索要件は次の3つです。
- 日付(いつ)、取引金額(いくら)、相手先(誰)を検索できること。
- 日付、取引金額については、範囲指定ができること。
(1月1日から3月31日まで、10,000円以上100,000円未満など) - 検索条件を組み合わせることができること。
A社、かつ、10,000円以上など
受領したデータに上記3項目が記載されていれば問題ありませんが、
通常上記3項目が付されていないと思います。
この検索要件をどう満たすかがポイントでしょう。
取引量が少なければ、手作業で乗り切れると思いますが、
多くなるとシステム等で対応する必要がありそうです。
概要書の備え付け(2条6項7号準用する2条2項1号)
自社で開発したプログラムを使う場合は、電子計算機処理システムの概要を記載した書類(システム概要書)を備え付ける必要があります。他社で開発したプログラムを使う場合は、概要書の備え付けは不要です。