電子取引の検索要件の緩和


電子取引の検索要件は難しいため、
小規模事業者などは検索要件が緩和されています。

緩和される条件

規定を確認します。

(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第四条 法第七条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、当該電子取引の取引情報(法第二条第五号に規定する取引情報をいう。以下この項及び第三項において同じ。)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次に掲げる措置のいずれかを行い、第二条第二項第二号及び第六項第六号並びに同項第七号において準用する同条第二項第一号(同号イに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、同条第六項第六号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が、その判定期間に係る基準期間における売上高が千万円以下である事業者である場合であって、当該要求に応じることができるようにしているときは、同号に掲げる要件)を除く。に従って保存しなければならない。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則

最後に「除く」とあります。

ダウンロード要件

ダウンロード要件(注1)とは、税務調査などがあったときに、保存しているデータを提示・提出ができるようにしている場合をいいます。

注1、国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合

ダウンロード要件を満たせば、2条6項6号(ロ・ハ限定)に掲げる要件を除くと規定されているため、イの要件を満たせば検索要件をクリアしたことになります。2条6項6号を確認します。

六 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、2条6項6号

ダウンロード要件を満たす場合であっても、
取引年月日、取引金額、取引先の3つは
検索できるようにしておく必要があります。

小規模事業者への配慮

小規模事業者についてはダウンロード要件を満たす場合、
検索要件が不要となります。

内容を要約します。
「当該保存義務者が、その判定期間に係る基準期間における売上高が1,000万円以下である事業者である場合であって、当該要求<ダウンロード要件のこと>に応じることができるようにしているときは、同号<6号=検索要件>に掲げる要件」

判定期間とは、R4年分の判定をするときはR4年を指しています。
R5年であればR5年です。基準期間とは判定期間の2年前です。
R4年であればR2年、R5年であればR3年です。

売上高が1000万円以下は消費税と異なり、
非課税売上や免税売上などを含む売上高を指しています。

通常売上高とは言わない雑収入や固定資産売却収入は、売上高に含みません。
売上高1000万円以下の小規模事業者は、ダウンロード要件を満たせば、
検索要件(6号のイ・ロ・ハの全て)が不要となります。

まとめると以下のとおりです。

内容原則ダウンロード
要件
ダウンロード要件、小規模事業者
イ_検索条件
ロ_範囲指定
ハ_組み合わせ
検索要件の比較
売上高1000万円の判定方法

電帳法の規定は、消費税法の規定と似ています。

事業者であれば、業務を行う個人事業者と法人をいいます。
判定期間は、判定する期間そのものです。
個人は、1/1~12/31までの暦年です。
法人は、会計期間と同じです。

基準期間は個人であれば、判定期間の2年前です。
法人であれば、会計期間の2期前です。
2期前が1年未満である法人については、
「2年前の日の前日」から「同日以後1年経過日」までの間に
「開始」する各会計期間を合わせた期間をいいます。

消費税と異なり、電帳法の判定については、
売上高の年換算をしないため注意が必要です。

小規模事業者の判定の例1

R5/7/1に開業した。
R5/7/1-R5/12/31が1期目、売上高600万円
R6/1/1-R6/12/31が2期目
R7/1/1-R7/12/31が3期目

R7年度の電帳法の判定
2期前はR5/7/1-R5/12/31で1年未満であるため、例を規定にあてはめると

「その事業年度開始の日<R7/1/1>の二年前の日<R5/1/2>の前日<R5/1/1>から同日<R5/1/1>以後一年を経過する日<R5/12/31>までの間に「開始」した各事業年度を合わせた期間」

となり、R5/7/1-R5/12/31の6ヶ月間が電帳法の基準期間になります。
電帳法では、年換算しないため、売上高600万円≦1000万円となり、
DL要件を満たせば、検索要件は不要となります。

消費税の納税義務の判定では、年換算規定があるため、
600万円÷6月☓12月=1200万円>1000万円となり、R7は課税事業者となります。

小規模事業者の判定の例2

R5/7/1に開業した。
R5/7/1-R5/12/31が1期目、売上高1100万円(うち課税売上高500万円)
R6/1/1-R6/12/31が2期目
R7/1/1-R7/12/31が3期目

R7年度の電帳法の判定
基準期間は例題1と同じ。

売上高1100万円>1000万円となり、小規模事業者に該当せず、
DL要件を満たしたとしても、検索要件のイが残ります。

消費税の納税義務の判定では、年換算規定がありますが、
売上高ではなく、消費税が課税されている課税売上高だけで判定するため、
500万円÷6月☓12月=1000万円≦1000万円となり、免税事業者となります。

電帳法の売上高1000万円と消費税法の課税売上高1000万円の違い

消費税法の課税売上高は、売上の値引き・返品・割戻し・割引があった場合は売上高からマイナスします。この課税売上高は、純売上高をいいます。

2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項、次条第二項、第十一条第四項及び第十二条の三第一項において同じ。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額(以下この項及び第十一条第四項において「売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額」という。)を控除した残額
イ 基準期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
ロ 基準期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額

二 基準期間が一年でない法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から当該基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額を当該法人の当該基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額

消費税法9条、小規模事業者に係る納税義務の免除

電帳法の売上高は、消費税法のように売上の値引き等を差し引く規定がないため、売上値引き等を差し引く前の総売上高を指すと考えます。取引金額の多寡で小規模事業者の判定を行う趣旨でしょう。

例えば、消費税が課税される売上高が1100万円、値引きが200万円ある場合。

消費税法の課税売上高は1100万円-200万円=900万円≦1000万円となり、免税事業者となります。電帳法の売上高は、1100万円>1000万円となり、検索要件が不要となりません。

消費税法と電帳法の相違点
内容消費税法電帳法
法律が適用される期間課税期間判定期間
期間を短縮できるかできるできない
判定対象となる期間基準期間(2期前)基準期間(2期前)
判定対象となる金額課税売上高1000万円売上高1000万円
雑収入、固定資産売却収入の取扱い課税取引であれば、
課税売上高に含む。
売上高に含めない。
売上値引き等マイナスするマイナスしない
(規定がない)
売上の種類課税売上高のみ非課税売上を含む
年換算するしない
消費税法と電帳法の相違点
参考規定

2 前項及びこの項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 事業者 個人事業者(業務を行う個人をいう。以下この項において同じ。)及び法人をいう。
二 判定期間 次に掲げる事業者の区分に応じそれぞれ次に定める期間をいう。
イ 個人事業者 電子取引を行った日の属する年の一月一日から十二月三十一日までの期間
ロ 法人 電子取引を行った日の属する事業年度(法人税法第十三条及び第十四条(事業年度)に規定する事業年度をいう。次号において同じ。)
三 基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則、4条2項
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