電子帳簿保存法の概要


 今日は2021年に大混乱?があった電子帳簿保存法を整理していきます。電子帳簿保存法の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。電子帳簿保存法や電帳法とも呼びます。

 電帳法はかなり理解しづらい規定です。その理由は電帳法そのものがある規定の「特例」だからだと思っています。「特例」ということは原則的な取扱いがどこかに定められていますが、法人であれば「法人税法」、個人であれば「所得税法」に原則的な取扱いがそれぞれ規定されています。

 普段、法人税法や所得税法の保存等の規定を意識していないでしょう。原則的な取扱いを意識せず、電帳法だけ見ても理解しづらいかもしれません。

 法人税法・所得税法には、一定の要件に従って(紙の)帳簿・書類を保存「しなければならない」と規定されています。「することができる」という例外的な規定もありますが、基本的には紙の帳簿・書類を保存する義務が規定されています。この原則的な取扱いを踏まえて「電帳法」を確認する必要があるでしょう。

電帳法の大枠は2つ

 電帳法の大枠は2つの規定です。

  • 紙の保存規定の例外(電帳法4条)
  • 電子取引の取引情報のデータ保存(電帳法7条)

 帳簿書類のデータ保存(4条)は法人税法・所得税法の特例です。紙で保存する義務があるものを例外的にデータ保存することを認める規定です。

 帳簿のデータ保存(1項)、書類のデータ保存(2項)、書類のスキャナ保存(3項)は、全てできる規定(任意規定)です。紙で保存するかデータで保存するかを選択できます。

 電子取引の取引情報のデータ保存(7条)は、法人税法・所得税法に規定がないため、新設された規定です。データ保存が原則規定で、紙の保存規定のように「しなければならない」と規定されています。

 どこから対処するのかとなると、7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)の義務規定と考えます。最後に参考資料として4条と7条の規定を載せています。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存

 対象者は、所得税と法人税の保存義務者です。消費税の保存義務者は含まれていません。電帳法の要件と消費税の実務とに差があるため、あえて消費税は対象としないと解説されています。

 電子取引のデータ保存の要件は、電子取引を行った場合です。電子取引を行った場合は、一定の要件に従って、データを保存する義務がある。

ポイントは、次の2つです。

  • 電子取引の内容
  • 電子取引のデータ保存の要件
2022年改正(電子保存の規定緩和)

 本来であれば、令和4年1月1日から電帳法7条の規定(電子取引の取引情報のデータ保存義務)が始まる予定でしたが、実務上ほとんど対応できていないということで、例外規定(宥恕規定)が設けられています。

 この例外規定の要件は次の2つです。

  • 法令に従えない「やむを得ない事情がある」こと。
  • 税務調査等で保存しているデータを紙で見せたり、提出したりできるようにすること。

 上記2つを守れば、現在の要件に関係なく、データで保存することができるという例外規定が設けられる予定です。あくまでも、一定の要件に従わずデータで保存することができるだけで、データを保存しなくても良いとは規定されていないので注意が必要です。

 この例外規定は、令和4年1月1日から2年間限定です。

参考規定

(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第四条 保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
2 保存義務者は、国税関係書類の全部又は一部について、自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
3 前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。この場合において、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存が当該財務省令で定めるところに従って行われていないとき(当該国税関係書類の保存が行われている場合を除く。)は、当該保存義務者は、当該電磁的記録を保存すべき期間その他の財務省令で定める要件を満たして当該電磁的記録を保存しなければならない。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律

(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
PAGE TOP