非居住者に有価証券等を贈与した後に通知する必要がある場合


今回は、非居住者に有価証券等を贈与した後に通知する必要がある場合を確認してみましょう。

国外に転出した時にはない通知義務

・国外転出した時に有価証券等を持っている場合の国外転出時課税
・非居住者に有価証券等を贈与した場合の国外転出時課税
この2つの特例は似ています。

今回確認する通知義務については、国外転出した時の制度にはありません。
非居住者に有価証券等を贈与した場合にだけあります。

通知義務がある場合、要件を満たしたときに、誰かが誰かに定めたられた内容を定められた日までに通知する必要があります。

通知の内容

通知する必要がある人は、財産を受け取った非居住者です。

細かく確認しますと

猶予適用贈与者から贈与により
有価証券等を受け取った非居住者で

猶予適用贈与者から
贈与した年の所得税について
・納税猶予を受けていること
・納税猶予の基準日の通知を受けたもの

をいいます。

上記の通知を受けた非居住者が受け取った有価証券等を
贈与日から納税猶予の基準日までの間に
・売却
・限定相続等
による移転をした場合が、要件です。

要件を満たす場合、有価証券等を売却した日から2月以内に、猶予適用贈与者に対して一定の事項を通知する必要があります。

一定の事項
・有価証券等を売却したこと
・売却した有価証券等の種類、銘柄、数など

有価証券等の売却だけではなく
・未決済の信用取引等
・未決済のデリバティブ取引
を決済した場合も同様に通知する必要があります。

通知義務は、国外転出時課税の再計算の対象となる人(猶予適用贈与者)に国外転出時課税の再計算の機会を知らせるための規定です。

参考規定

財産を受け取った非居住者は、財産を渡した人に通知する必要がある。

9 猶予適用贈与者から贈与により有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の移転を受けた非居住者で当該猶予適用贈与者(その相続人を含む。以下この項において同じ。)からその贈与の日の属する年分の所得税につき第百三十七条の三第一項又は第二項の規定による納税の猶予を受けている旨及び当該納税の猶予に係る基準日の通知を受けたもの(その相続人を含む。)が、当該有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約を、その贈与の日から当該納税の猶予に係る基準日までの間に、譲渡若しくは決済又は限定相続等による移転をした場合には、その者は、その譲渡若しくは決済又は限定相続等の日(当該限定相続等に係る相続人にあつては、その相続の開始があつたことを知つた日)から二月以内に、当該猶予適用贈与者に、当該有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の譲渡若しくは決済又は限定相続等による移転をした旨、その譲渡若しくは決済又は限定相続等による移転をした有価証券等又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引に係る契約の種類、銘柄及び数その他参考となるべき事項を通知しなければならない。

所得税法第60条の3第9項、施行日令和6年6月12日

おまけ

非居住者に有価証券等を贈与した場合の納税猶予については、
1、贈与(亡くなったことを原因とする贈与を除く)
2、相続と遺贈(亡くなったことを原因とする贈与を含む)
の2つがあります。

今回確認した通知義務の「贈与」は、原因が限定されていませんので、1と2の両方の贈与が対象となります。

参考規定の中で、「第百三十七条の三第一項又は第二項の規定による」とあり、ここからも読み取れます。第1項が1の贈与、第2項が2の相続と遺贈を指します。

「猶予適用贈与者」は1の贈与の内容となりますので、猶予適用贈与者が2の相続と遺贈の納税猶予を受けることがある(できる)のかという点が少し気になります。別の規定がありそうな気もしますが……

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