非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予と国税通則法など_その2


今回は、非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予と国税通則法などを確認してみましょう。

国税通則法と国税徴収法

所得税を含む国税の一般的な取扱いは、国税通則法や国税徴収法に規定されています。

税金の支払いを先延ばしできる納税猶予も国税通則法に規定されていますが、非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予は規定されていません。所得税固有の規定だからです。

そのため、非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予については、国税通則法や国税徴収法の取扱いを少し変えて適用することになります。

取扱いが変わる規定は、全部で6つ。
・第1号、延滞税の区分が必要
・第2号、非上場株式等の担保提供
・第3号、非上場株式等の処分条件
・第4号、利子税と時効
・第5号、納税猶予の期限は、延納の期限に含まれる。
・第6号、延納できない。

今回は、4から6までを確認してみましょう。

参考リンク、1から3までの取扱い
非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予と国税通則法など_その1

利子税と時効

国税通則法の規定を読み替えてみましょう。

(利子税)
第六十四条 延納(所得税法第百三十七条の三第一項又は第二項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定による納税の猶予を含む。)若しくは物納又は納税申告書の提出期限の延長に係る国税の納税者は、国税に関する法律の定めるところにより、当該国税にあわせて利子税を納付しなければならない。

非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予は、延納制度に含まれます。納税猶予の利子税がある場合は、所得税と一緒に支払う必要があります。

時効の取扱いを確認してみましょう。

4 国税の徴収権の時効は、延納(所得税法第百三十七条の三第一項又は第二項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定による納税の猶予を含む。)、納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予に係る部分の国税(当該部分の国税に併せて納付すべき延滞税及び利子税を含む。)につき、その延納(所得税法第百三十七条の三第一項又は第二項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定による納税の猶予を含む。)又は猶予がされている期間内は、進行しない。

非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予は、延納制度に含まれます。そのため、納税猶予を受けている期間中は、時効が進みません。

納税猶予の期限は、延納の期限に含まれる。

非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予の期限は、国税通則法や国税徴収法で規定されている法定納期限や納期限の規定を適用する場合には、延納の期限に含まれます。

国税通則法や国税徴収法では、延納の期限は法定納期限に含まれないと規定されています。

延納と納税猶予は異なる制度です。納税猶予の期限を延納の期限に含めることによって、納税猶予の期限が国税通則法や国税徴収法では、法定納期限や納期限に含まれないということになるのでしょう。

納税猶予を選択すると延納できない。

非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予に関する所得税については、所得税の分割支払い(延納)ができなくなります。

参考規定

非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予と国税通則法等

13 第一項の者又は第二項の相続人がこれらの規定の適用を受けようとし、又はこれらの規定による納税の猶予がされた場合におけるこの法律並びに国税通則法及び国税徴収法の規定の適用については、次に定めるところによる。
一 省略
二 省略
三 省略
四 第一項又は第二項の規定による納税の猶予を受けた所得税については、国税通則法第六十四条第一項(利子税)及び第七十三条第四項中「延納」とあるのは、「延納(所得税法第百三十七条の三第一項又は第二項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定による納税の猶予を含む。)」とする。
五 第一項又は第二項の規定による納税の猶予に係る期限(第六項、第九項又は第十一項の規定による当該期限を含む。)は、国税通則法及び国税徴収法中法定納期限又は納期限に関する規定を適用する場合には、所得税法の規定による延納に係る期限に含まれるものとする。
六 第一項、第二項、第六項、第九項又は第十一項の規定に該当する所得税については、前款の規定は、適用しない。

所得税法第137条の3第13項、施行日令和7年1月1日
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