今回は、非居住者に株式等を贈与した場合の納税猶予の更新手続きをしなかったときを確認してみましょう。
更新手続きをしなかった場合
所得税の支払いを先延ばしにできる納税猶予制度。最長で5年4カ月(延長すると10年4カ月)先延ばしできます。
先延ばしをするためには、毎年更新手続きが必要です。具体的には、継続適用届出書を3月15日(確定申告期限)までに提出する必要があります。
この継続適用届出書を提出期限までに提出しなかった場合は、納税猶予が途中で終了します。
終了日は、継続適用届出書の提出期限から4月を経過する日です。
仮に、継続適用届出書の提出期限から4月を経過する日までの間に、納税猶予を受けている人が亡くなった場合は、その相続人が亡くなったことを知った日から6月を経過する日となります。
贈与の納税猶予を受けている人が国外転出する場合
所得税の納税猶予は、2つあります。
1、国外転出する場合
2、非居住者に株式等を贈与する場合
1は人が日本から海外に移動する場合、
2はものが日本から海外に移動する場合です。
非居住者に株式等を贈与する場合は、株式等が先に日本から海外に移動しています。その後、人も日本から海外に移動する(国外転出する)場合に手続きが必要となります。
具体的には国外転出する時までに、納税管理人の届出が必要です。
国外転出する時までに納税管理人の届出をしない場合は、
第8項の規定と第9項の規定が準用されます。
第8項にはやむを得ない事情がある場合、
第9項には更新手続きをしなかった場合が規定されています。
2つの規定が準用されますので、納税管理人の届出を国外転出の時までにしなかった場合は、納税猶予が途中で終了します。
納税管理人の届出を国外転出の時までにしなかったことについて、やむを得ない事情がある場合は、後から届出をすることで納税猶予が継続されます。
税務署長が判断する場合
次の3つにあてはまる場合は、税務署長の判断で納税猶予が途中で終了することがあります。
1、担保の変更等の命令に応じない場合
2、更新手続き(継続適用届出書)の記載内容が事実と異なる場合
3、納税管理人を解任した場合、納税管理人の届出をしない場合など
納税猶予が途中で終わる場合は、税務署長は納税猶予を選んだ人から話を聞く必要があり、納税猶予が途中で終わる場合は納税猶予を選んだ人に通知が必要となります。
参考規定
更新手続きをしなかった場合は、納税猶予が途中で終わる。
9 継続適用届出書が提出期限までに納税地の所轄税務署長に提出されない場合には、当該提出期限における納税猶予分の所得税額(既に第六項の規定の適用があつた場合には、同項の規定の適用があつた金額を除く。)に相当する所得税については、第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該提出期限から四月を経過する日(当該提出期限から当該四月を経過する日までの間に当該所得税に係る適用贈与者等が死亡した場合には、当該適用贈与者等の相続人が当該適用贈与者等の死亡による相続の開始があつたことを知つた日から六月を経過する日)をもつてこれらの規定による納税の猶予に係る期限とする。
所得税法第137条の3第9項、施行日令和7年1月1日
納税猶予を受けている人が国外転出する場合は、納税管理人の届出が必要。
10 第一項の規定の適用を受けている者が第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する国外転出をしようとする場合には、当該国外転出の時までに、国税通則法第百十七条第二項の規定による納税管理人の届出をしなければならない。この場合において、前二項の規定は、当該納税管理人の届出が当該国外転出の時までになかつた場合について準用する。
所得税法第137条の3第10項、施行日令和7年1月1日
税務署長の判断で納税猶予が途中で終わることがある。
11 税務署長は、次に掲げる場合には、納税猶予分の所得税額(既に第六項の規定の適用があつた場合には、同項の規定の適用があつた金額を除く。)に相当する所得税に係る第一項又は第二項の規定による納税の猶予に係る期限を繰り上げることができる。この場合においては、国税通則法第四十九条第二項及び第三項(納税の猶予の取消し)の規定を準用する。
所得税法第137条の3第11項、施行日令和7年1月1日
一 適用贈与者等が第一項又は第二項に規定する担保について国税通則法第五十一条第一項(担保の変更等)の規定による命令に応じない場合
二 適用贈与者等から提出された継続適用届出書に記載された事項と相違する事実が判明した場合
三 前二号に掲げる場合のほか、適用贈与者等が国税通則法第百十七条第一項に規定する納税管理人を解任したことその他の政令で定める事由が生じた場合