非居住者に株式等を贈与等した場合の所得税の支払いを先延ばしにする手続きと期限を延長する手続き


今回は、
1、非居住者に株式等を贈与等した場合の支払いを先延ばしにする手続き
2、支払いの期限を延長する手続き
の2つを確認してみましょう。

所得税の支払い期限を5年から10年に延長できる。

非居住者に株式等を
・贈与
・相続
・遺贈
により移して、株式等の含み益に所得税が課された場合、手許に所得税を支払うお金が残っていないことがあるため、所得税の支払いの先延ばしが可能です。納税猶予といいます。

納税猶予は原則として5年ですが、手続きすれば10年に延長できます。延長できる場合は、2つあります。

1つ目は、贈与・相続・遺贈の納税猶予を受けている場合です。

・贈与の日
・相続の開始日
から5年を経過する日までに延長を希望する旨の届出書(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の期限延長届出書)を税務署長に提出すれば期限を5年から10年に延長できます。

5年を経過する前に財産を受け取った非居住者が帰国等をする場合は、その帰国等をする日の「前日」が届出書の提出期限となるため注意しましょう。

2つ目は、特殊なケースです。

原則として相続の開始日から5年を経過する日が期限となりますが、遺産分割等により、5年を経過する日の後に期限後申告書の提出期限が到来することがあります。

この場合は、相続の開始日から5年以内に延長を希望する旨の届出書が提出できないため、届出書の提出期限が期限後申告書の提出期限まで延長されています。

納税猶予には手続きが必要

非居住者に株式等を「贈与」した場合の納税猶予については、「納税猶予を受ける人の確定申告書=財産を渡した人の確定申告書」に、納税猶予を希望する旨を記載する必要があります。

非居住者が株式等を「相続」した場合の納税猶予については、納税猶予を受ける人が提出した「適用被相続人等の確定申告書=財産を渡した人の確定申告書」に納税猶予を希望する旨を記載する必要があります。

それぞれ、
・納税猶予の対象となる所得税の計算明細書
・一定の書類
の添付が必要となりますので注意しましょう。

上記の要件を満たさないことについて、やむを得ない事情がある場合は、後から手続きすることで納税猶予を受けられることがあります。

参考規定

納税猶予の期限を5年から10年に延長できる。

3 次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める日又は期限までに、前二項の規定による納税の猶予に係る期限の延長を受けたい旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を、納税地の所轄税務署長に提出した場合には、これらの規定中「五年」とあるのは、「十年」とする。
一 前二項の規定の適用を受けている者 贈与の日又は相続の開始の日から五年を経過する日(同日前に受贈者帰国等の場合又は相続人帰国等の場合に該当することとなつた場合には、その該当することとなつた日の前日)
二 第百五十一条の五第一項の規定による期限後申告書の提出期限が相続の開始の日から五年を経過する日後である者 当該提出期限

所得税法第137条の3第3項、施行日令和7年1月1日

納税猶予の手続き

4 第一項又は第二項(これらの規定を前項の規定により適用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定は、第一項の規定の適用を受けようとする者の提出した確定申告書又は第二項の規定の適用を受けようとする相続人が提出した適用被相続人等の確定申告書に、これらの規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、第六十条の三第一項から第三項までの規定により行われたものとみなされた対象資産の譲渡又は決済の明細及び贈与納税猶予分の所得税額又は相続等納税猶予分の所得税額(以下この条において「納税猶予分の所得税額」という。)の計算に関する明細その他財務省令で定める事項を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。

所得税法第137条の3第4項、施行日令和7年1月1日

やむを得ない事情がある場合

5 税務署長は、前項の確定申告書の提出がなかつた場合又は同項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項又は第二項の規定を適用することができる。

所得税法第137条の3第5項、施行日令和7年1月1日
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