非特定欠損金の配賦計算


今回は、非特定欠損金の配賦計算を確認します。

3つの割合

欠損金の通算では、次の3つの割合を使用します。

  1. 特定損金算入限度額で使用する割合(特定損金算入割合、定義なし)
  2. 非特定欠損金配賦額の配賦割合
  3. 非特定損金算入限度額で使用する割合(非特定損金算入割合、定義あり)

今回は、2の非特定欠損金の配賦計算(使用する割合)を確認します。
以下、理解のために、正確性を優先していません。

割合の違い

1の特定損金算入限度額で使用する割合と3の非特定損金算入限度額で使用する割合の計算構造は同じですが、2の非特定欠損金配賦額の配賦割合は異なります。

1の特定損金算入割合と3の非特定損金算入割合

           グループ全体の限度額
各社の欠損金額 × -------------
           グループ全体の欠損金額
割合の最高は100%

欠損金額のうち、いくら損金算入できるのか?の割合をかけています。
欠損金額を超えて損金算入できないため、割合の最高は1となります。

2の非特定欠損金配賦額の割合

               各社の限度額
グループ全体の欠損金額 × ------------
               グループ全体の限度額

全体の欠損金額を限度額の比で按分しています。

計算順序は、1→2→3で、2だけ計算の仕組みが異なるため、
わかりにくくなっていると思います。

非特定欠損金配賦額の配賦割合

国税庁の資料、3で計算を確認します。

通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/54.htm

グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)

非特定欠損金の割合でわかりにくいのが、
非特定損金算入割合の分子で使用する190と
配賦割合の分母で使用する200だと思います。
(下記マーカー部分)
数字が近いからかもしれませんが。

特定欠損金額以外の欠損金額の合計額は520で、
「損金算入される特定欠損金額控除後の損金算入限度額」の比で
按分するため、200が分母(分子の合計)となります。

2の非特定欠損金配賦額の計算

                各社の限度額110
グループ全体の欠損金額520 × -------------------
(配賦前)           グループ全体の限度額200(分子の合計)

286(配賦後)

非特定損金算入割合の計算では、
グループ全体の限度額240‐特定欠損金額50=190が分子となり、
特定欠損金額以外の欠損金額の合計額520は分母となります。

3の非特定損金算入限度額の計算

            グループ全体の限度額 240-50=190
各社の欠損金額286 × -------------------
(配賦後)       グループ全体の欠損金額 520(配賦前)
割合の最高は100%

内容P社S1社S2社合計摘要
欠損金額150120300570
うち特定欠損金額050050
うち特定欠損金額以外の欠損金額15070300520
損金算入限度額
(所得×50%)
1104090240
損金算入される
特定欠損金額
5050
全体の非特定欠損金額の損金算入限度額240-50
190
非特定損金算入割合の分子で配賦計算では使用しません。
損金算入される
特定欠損金額控除後の
損金算入限度額

110
(2)
分子
40<50
=0

(2)
分子

90
(2)
分子

200
(3)
=分母
配賦割合は左の数字の割合
特定欠損金額以外の欠損金額15070300520
(1)
全体520を下記割合で按分して基準額を決めます。
配賦割合110/200
=55%
0/200
=0%
90/200
=45%
(2)
---
(3)
非特定欠損金配賦額520×55%
=286
0×R
=0
520×45%
=234
基準額
非特定欠損金配賦額の計算

非特定欠損金配賦額は、欠損金の基準額です。

基準額>欠損金額となる場合
(基準額-特定欠損金額以外の欠損金額がプラスの場合)
欠損金額が基準額に満たないため、他の法人から欠損金額を受け取ります。

基準額<欠損金額となる場合
(基準額-特定欠損金額以外の欠損金額がマイナスの場合)
欠損金額が基準額を超えるため、他の法人に欠損金額を渡します。

内容P社S1社S2社合計摘要
被配賦欠損金額(マイナスは配賦欠損金額)286-150
=136

規定ハの計算
0-70
=△70

規定ニの計算
234-300
=△66

規定二の計算
0
被配賦欠損金額と配賦欠損金額の計算

P社
0           150    →      286
|-----------|-----------
                       基準+136受け取る

S1社
0   ←  70
------
基準 △70→70を渡す

S2社
0                    234  ←  300
|--------------------|------
                    基準△66→66を渡す

プラスは受け取る欠損金額、マイナスは渡す欠損金額です。
自社の欠損金額(配賦前)に加減算したものが配賦後の欠損金額となります。

内容P社S1社S2社合計摘要
非特定欠損金額150+136
=286
70-70
=0
300-66
=234
非特定欠損金額の計算

特定欠損金額以外の欠損金額+被配賦欠損金額=非特定欠損金額(配賦後)
特定欠損金額以外の欠損金額△配賦欠損金額=非特定欠損金額(配賦後)

非特定欠損金額(配賦後)を計算した後に、
非特定損金算入限度額を求めます。

計算の流れ

規定は、1→2→3→4の順です。
計算は、特定→非特定の順(1→3→2→4)となります。
今回は、2の計算をしています。

内容欠損金額の計算限度額と
超える部分の計算
特定欠損金額1、法法64条の7
第1項2号イ
3、法法64条の7
第1項3号イ
非特定欠損金額2、法法64条の7
第1項2号ロハニ
4、法法64条の7
第1項3号ロ
規定のまとめ
参考規定

特定欠損金以外の欠損金額

ロ 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額

法人税法64条の7、1項2号

被配賦欠損金額の計算

ハ (1)に掲げる金額に(2)に掲げる金額が(2)及び(3)に掲げる金額の合計額(ハ及びニにおいて「所得合計額」という。)のうちに占める割合を乗じて計算した金額(ニにおいて「非特定欠損金配賦額」という。)がロに掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(所得合計額が零である場合には、零)
(1) 当該通算法人及び他の通算法人(当該通算法人の適用事業年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係があるもので、同日にその事業年度が終了するものに限る。以下この項、第四項及び第五項において同じ。)の事業年度(前号の規定の適用がある場合には、その適用がないものとした場合における事業年度。(1)において同じ。)で当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある事業年度(当該十年内事業年度終了の日の翌日が開始日である場合には、当該終了の日後に開始した事業年度を含む。)において生じた欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額の合計額

(2) 当該通算法人の適用事業年度の損金算入限度額(第五十七条第一項ただし書(同条第十一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する損金算入限度額をいう。以下この条において同じ。)から次に掲げる金額の合計額を控除した金額
(i) この号の規定により当該十年内事業年度前の各十年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額の合計額
(ii) 当該十年内事業年度に係る当該通算法人の対応事業年度において生じた特定欠損金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

(3) 当該通算法人の適用事業年度終了の日に終了する他の通算法人の事業年度の損金算入限度額から次に掲げる金額の合計額を控除した金額の合計額
(i) この号の規定により当該十年内事業年度開始の日前に開始した当該他の通算法人の各事業年度において生じた欠損金額とされた金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額の合計額
(ii) 当該十年内事業年度の期間内にその開始の日がある当該他の通算法人の事業年度(当該十年内事業年度終了の日の翌日が開始日である場合には、当該終了の日後に開始した事業年度を含む。)において生じた特定欠損金額で第五十七条第一項の規定により適用事業年度終了の日に終了する当該他の通算法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

法人税法64条の7、1項2号

配賦欠損金額

ニ 非特定欠損金配賦額がロに掲げる金額に満たない場合におけるその満たない部分の金額(所得合計額が零である場合には、零)

法人税法64条の7、1項2号

ハの内容
「特定欠損金額以外の欠損金額」に加算する金額

     (2)
(1)× -------------=非特定欠損金配賦額(基準額)
     (2)+(3)=所得合計額

(1)過去10年内の特定欠損金額以外の欠損金額のグループ合計額

(2)当社の損金算入限度額(所得又は所得×50%)
-使用済欠損金額-特定欠損金

(3)他社の損金算入限度額(所得又は所得×50%)
-使用済欠損金額-特定欠損金

非特定欠損金配賦額>ロ、特定欠損金額以外の欠損金額
非特定欠損金配賦額-特定欠損金額以外の欠損金額=加算額

二の内容
「特定欠損金額以外の欠損金額」から控除する金額

非特定欠損金配賦額<ロ、特定欠損金額以外の欠損金額
非特定欠損金配賦額-特定欠損金額以外の欠損金額=控除額

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