非適格合併があった場合の譲渡損益調整資産の取得価額の調整


今回は、非適格合併があった場合の
譲渡損益調整資産の取得価額の調整を確認してみましょう。

譲渡損益調整資産の取得価額の調整

譲渡損益調整資産の譲渡については、
非適格合併による移転も含まれます。

非適格合併の場合は、
資産を時価で譲渡したものとして取り扱うため、
簿価と時価に差がある場合は、譲渡損益が発生します。

移転時の譲渡損益が、
譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延べの対象となります。

今回確認する内容は、
譲渡損益調整資産を取得した合併法人の取扱いです。

規定を整理したものを確認してみましょう。


適格合併に該当しない合併に係る被合併法人が
当該合併による譲渡損益調整資産の移転につき
第1項の規定の適用を受けた場合には、

当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額に相当する金額は
当該合併に係る合併法人の
当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入しないものとし、

当該譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する金額は
当該合併法人の当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入するものとする。


合併法人が取得した譲渡損益調整資産の取得価額を調整する必要があります。

調整方法は、2つです。
1、譲渡利益額は、取得価額に算入しない。
2、譲渡損失額は、取得価額に算入する。

譲渡利益額が発生する場合の事例

譲渡利益額が発生する場合を確認してみましょう。

事例
A社は、B社を吸収合併(非適格)した。

B社の資産
土地の簿価 5億円
土地の時価 7億円


譲渡した法人(被合併法人B)の税務上の仕訳
(土地部分のみ)

借方貸方
資産 7億円土地 5億円
譲渡利益額(益金算入) 2億円
譲渡利益額(損金算入) 2億円譲渡損益調整資産 2億円
被合併法人の仕訳

譲渡収入7億円-譲渡原価5億円=譲渡利益額2億円は、益金算入となります。
(非適格合併のため時価で譲渡)

譲渡利益額2億円は、損金算入となります。
(譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延べ)


譲受法人(合併法人A)の税務上の仕訳

借方貸方
土地(時価) 7億円現金等 7億円
利益積立金額 2億円土地 2億円
合併法人の仕訳

土地(譲渡損益調整資産)の取得価額
7億円(時価)-2億円(譲渡利益相当額)=5億円

被合併法人の繰り延べた譲渡損益が解消されないため、
合併法人で調整する規定です。

被合併法人は、譲渡利益額(損金算入)を計上するため2億円得します。
通常は戻入れにより後で2億円損(益金算入)しますが、
解散しているため戻入れのタイミングがありません。

土地の取得価額減額の相手科目は、利益積立金額になります。

利益積立金額の計算、タの算式(タは1号のマイナス項目、規定は後述)
取得価額に算入しない金額(2億円)-取得価額に算入する金額(0円)
=2億円

別表の記入方法を確認してみましょう。

別表5(1)、利益積立金額

区分期首減算加算期末
譲渡損益調整資産(土地)00△2億円△2億円
別表5(1)、利益積立金額

別表4の調整がないため、検算は不一致となります。

譲渡損失額が発生する場合の事例

譲渡損失額が発生する場合を確認してみましょう。

事例
A社は、B社を吸収合併(非適格)した。

B社の資産
土地の簿価 5億円
土地の時価 4億円

譲渡した法人(被合併法人B)の仕訳

借方貸方
資産 4億円土地 5億円
譲渡損失額(損金算入) 1億円
譲渡損益調整資産 1億円譲渡損失額(益金算入) 1億円
被合併法人の仕訳

譲受法人(合併法人A)の取扱い

借方貸方
土地(時価) 4億円現金等 4億円
土地 1億円利益積立金額 1億円
合併法人の仕訳

土地(譲渡損益調整資産)の取得価額
4億円(時価)+1億円(譲渡損失相当額)=5億円

利益積立金額の計算、タの算式(タは1号のマイナス項目、規定は後述)
取得価額に算入しない金額(0円)-取得価額に算入する金額(1億円)
=△1億円(マイナスを減算するため加算)

別表5(1)、利益積立金額

区分期首減算加算期末
譲渡損益調整資産(土地)001億円1億円
別表5(1)、利益積立金額

別表4の調整がないため、検算は不一致となります。

参考規定

非適格合併による譲渡損益調整資産の移転があった場合

7 適格合併に該当しない合併に係る被合併法人が当該合併による譲渡損益調整資産の移転につき第一項の規定の適用を受けた場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額に相当する金額は当該合併に係る合併法人の当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入しないものとし、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡損失額に相当する金額は当該合併法人の当該譲渡損益調整資産の取得価額に算入するものとする。

法人税法第61条の11第7項、施行日令和5年10月1日

利益積立金額

(利益積立金額)
第九条 法第二条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(当該法人が公共法人に該当していた事業年度を除く。以下この条において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十四号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十四号までに掲げる金額を減算した金額とする。
一 イからヲまでに掲げる金額の合計額からワからネまでに掲げる金額の合計額を減算した金額(当該金額のうちに当該法人が留保していない金額がある場合には当該留保していない金額を減算した金額とし、公益法人等又は人格のない社団等にあつては収益事業から生じたものに限る。)
タ 法第六十一条の十一第七項の規定により譲渡損益調整資産の取得価額に算入しない金額から同項の規定により譲渡損益調整資産の取得価額に算入する金額を減算した金額

法人税法施行令第9条第1項第1号タ、施行日令和5年10月1日
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