非適格株式交換等とリース譲渡の精算


今回は、非適格株式交換等があった場合の法人税のリース譲渡の精算を確認してみましょう。

非適格株式交換等があった場合

先に規定を確認してみましょう。

3 前条第一項の内国法人が同項に規定する非適格株式交換等の日の属する事業年度(以下この項において「非適格株式交換等事業年度」という。)において前二項の規定の適用を受けている場合には、その適用を受けているリース譲渡に係る収益の額及び費用の額(当該非適格株式交換等事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額及び損金の額に算入されるもの並びに前二項の規定により当該非適格株式交換等事業年度の所得の金額の計算上益金の額及び損金の額に算入されるものを除く。)は、当該収益の額と費用の額との差額が少額であるものとして政令で定める要件に該当する契約その他政令で定める契約に係るものを除き、当該非適格株式交換等事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入する。

法人税法第63条第3項、施行日令和6年4月1日

一定の要件を満たす組織再編成(非適格株式交換等)があり、
リース譲渡ついて、
・延払基準の方法による経理
・リース譲渡の特例計算
をしている場合には、原則として
リース譲渡の残額の一括計上が必要となります。

一定の要件を満たす法人が有する資産については、
含み損益を精算する特例が設けられていますが、
リース譲渡で繰り延べられた売上と売上原価(コスト)は、
含み損益に該当しないため、別に規定が設けられています。

ただし、次の2つについては、残額の一括計上が不要となります。
・リース損益が少額なもの
・要件を満たす契約

リース損益が少額なもの

先に規定を確認してみましょう。

(非適格株式交換等に伴うリース譲渡に係る収益及び費用の処理に関する規定の不適用)
第百二十六条 法第六十三条第三項(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度)に規定する政令で定める要件は、同項に規定するリース譲渡に係る契約についての非適格株式交換等事業年度(同項に規定する非適格株式交換等事業年度をいう。以下この項において同じ。)終了の時(非適格株式交換等(同条第三項に規定する非適格株式交換等をいう。以下この条において同じ。)の日から当該非適格株式交換等事業年度終了の日までの期間内に行われた適格分割又は適格現物出資(以下この項において「適格分割等」という。)により分割承継法人又は被現物出資法人に当該リース譲渡に係る契約の移転をした場合におけるその移転をした契約にあつては、当該適格分割等の時)における繰延長期割賦損益額(第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合には、第二号に掲げる金額から第一号に掲げる金額を控除した金額)をいう。)が千万円に満たないこととする。
一 そのリース譲渡に係る収益の額(非適格株式交換等事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるもの及び法第六十三条第一項又は第二項の規定により非適格株式交換等事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されるものを除く。)
二 そのリース譲渡に係る費用の額(非適格株式交換等事業年度前の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの及び法第六十三条第一項又は第二項の規定により非適格株式交換等事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものを除く。)

法人税法施行令第126条第1項、施行日令和6年4月1日

非適格株式交換等の事業年度終了時の繰延長期割賦損益額が1000万円未満の場合、リース譲渡の残額の一括計上は不要となります。少額不追及です。

繰延長期割賦損益額は、
リース譲渡でまだ計上していない利益(損失)をいいます。

要件を満たす契約

先に規定を確認してみましょう。

2 法第六十三条第三項に規定する政令で定める契約は、次に掲げる契約とする。
一 法第六十三条第三項に規定するリース譲渡に係る契約を非適格株式交換等の日の属する事業年度開始の日から当該非適格株式交換等の日の前日までの期間内に他の者に移転をした場合におけるその移転をした契約
二 法第六十三条第三項に規定するリース譲渡に係る契約を非適格株式交換等の日から同日の属する事業年度終了の日までの期間内に締結し、又は当該期間内に他の者から移転を受けた場合におけるその締結し、又は移転を受けた契約

法人税法施行令第126条第2項、施行日令和6年4月1日

次の2つに該当する場合は、
リース譲渡の残額の一括計上は不要となります。

1、非適格株式交換等の日の前日までにリース譲渡契約を移転した場合
2、非適格株式交換等の日以後、リース譲渡契約を締結等した場合

一括計上しない理由

1について
リース譲渡の残額を精算する要件は、非適格株式交換等の日の属する「事業年度」において前二項の規定の適用を受けている場合(リース譲渡の特例を適用している場合)と規定されています。

事業年度単位で規定しているため、非適格株式交換等の日の前日以前にリース譲渡契約を移転した場合であっても、リース譲渡の残額の精算対象となってしまいます。前日以前にリース譲渡契約を移転することは、交換等の直前に含み損益資産を有していないものと同じであるため、残額一括計上の対象外となります。

2について
非適格株式交換等の含み損益の精算は、交換等の直前に有している資産に限られます。非適格株式交換等の日以後にリース譲渡契約を締結したり、移転を受けたりした場合は、交換等の直前に含み損益資産を有していないものと同じであるため、リース譲渡の残額の一括計上の対象外となります。

まとめ

非適格株式交換等の直前にリース譲渡契約があり、期末時点のリース譲渡の未計上利益か損失が1000万円以上の場合に、リース譲渡の精算が必要となります。

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