非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益(法法62条の9)


今回は、非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の
時価評価損益(法法62条の9)を確認します。

通算制度に関する時価評価損益の規定を確認していたときに、
今回確認する規定が含まれていましたので、気になっていました。
・通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益(法法64条の11)
・通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益(法法64条の12)
・通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益(法法64条の13)

株式交換(会社法の定義)

税法の取扱いを確認する前に、株式交換を確認します。

株式交換の定義

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

三十一 株式交換 株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

会社法

法人税法にも所得税法にも「株式交換」の定義がなく、
会社法に規定されています。

例えば、次の関係の場合

AS社株主(AS株式所有)   BS社株主        
|       |      |
AS社      →→-----BS社

定義にあてはめます。

株式会社(AS社)がその発行済株式(AS株式)の全部を
他の株式会社等(BS社)に取得させることを株式交換といいます。

株式会社(AS社)の発行済株式の全部を取得する会社を
「株式交換完全親会社」
といいます。
この場合、BS社が株式交換完全親会社となります。

株式交換契約の締結

(株式交換契約の締結)
第七百六十七条 株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。

会社法

AS社株主(AS株式所有)   BS社株主        
|       |      |
AS社      →→-----BS社
(株式交換完全子会社)    (株式交換完全親会社)

完全親会社がいるということは、完全子会社もいます。
上記の場合、AS社が株式交換完全子会社となります。

(株式会社に発行済株式を取得させる株式交換契約)
第七百六十八条 株式会社が株式交換をする場合において、株式交換完全親会社が株式会社であるときは、株式交換契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株式交換をする株式会社(以下この編において「株式交換完全子会社」という。)及び株式会社である株式交換完全親会社(以下この編において「株式交換完全親株式会社」という。)の商号及び住所

会社法

株式交換後の関係は、次のとおりです。

  AS社株主    BS社株主        
   |        |
  BS社(株式交換完全親会社)
        | 100%
  AS社(株式交換完全子会社)

会社法の関係を確認しましたので、税法の取扱いを確認します。

非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益(法法62条の9)

上記の前提を規定にあてはめてみます。

内国法人<AS社>が自己<AS社>を株式交換等完全子法人<AS社>又は株式移転完全子法人とする非適格株式交換等(注1)を行った場合には、その内国法人<AS社>がその非適格株式交換等の直前の時において有する時価評価資産(注2)の評価益の額(注3)又は評価損の額(注4)は、その非適格株式交換等の日の属する事業年度の益金算入又は損金算入となります。

  AS社株主    BS社株主        
   |        |
  BS社(株式交換完全親会社)
        | 100%
  AS社(株式交換完全子会社)→含み損資産は時価評価が必要

目的がわかりにくいですが、時価評価しない場合、
株式交換後にBS社とAS社で適格合併等を行うと
AS社の含み損資産がBS社に持ち込まれてしまうため、
株式交換前(100%子会社化)前に含み損益の精算規定があるのでしょう。


注1、株式交換等又は株式移転(適格株式交換等及び適格株式移転並びに株式交換又は株式移転の直前にその内国法人その株式交換に係る株式交換完全親法人又はその株式移転に係る他の株式移転完全子法人との間に完全支配関係があつた場合におけるその株式交換及び株式移転を除く。以下「非適格株式交換等」といいます。)

株式交換等・株式移転から以下4つを除外します。
1、適格株式交換等
2、適格株式移転
3、株式交換直前に、子と親との間に100%支配関係があった場合の株式交換
4、株式移転直前に、子と親との間に100%支配関係があった場合の株式移転

直前に100%支配関係がある場合は、非適格であっても時価評価は不要です。100%子会社化のために株式交換しますが、株式交換前に100%支配関係がある状態です。直接完全支配関係ではなく、間接完全支配関係や相互関係のことでしょう。

注2、時価評価資産
固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。

注3、評価益の額
その非適格株式交換等の直前の時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。

注4、評価損の額
その非適格株式交換等の直前の時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。

参考規定

法人税法の定義

十二の六 株式交換完全子法人 株式交換によりその株主の有する株式を他の法人に取得させた当該株式を発行した法人をいう。

十二の六の二 株式交換完全子法人 株式交換完全子法人及び株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六に規定する対象法人をいう。

十二の六の三 株式交換完全親法人 株式交換により他の法人の株式を取得したことによつて当該法人の発行済株式の全部を有することとなつた法人をいう。

十二の六の四 株式交換完全親法人 株式交換完全親法人並びに株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六イ及びロに規定する最大株主等である法人並びに同号ハの一の株主等である法人をいう。

法人税法2条、定義

上記の場合、AS社が株式交換完全子法人、BS社が株式交換完全親法人です。

法人税法では、会社法上の株式交換以外に、
一定の行為を株式交換に含めて取り扱うため、
株式交換「等」と定義されています。

PAGE TOP