10倍超の賞与の源泉徴収


今回は、10倍超の賞与の源泉徴収を確認してみましょう。

源泉徴収税額の計算方法は6つ

法人や個人事業者が従業員に給料や賞与を支払う場合、
源泉徴収が必要となります。

給与や賞与の源泉徴収については、
源泉徴収税額表を使用します。

参考情報、国税庁、令和6年分 源泉徴収税額表
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2023/02.htm

賞与の源泉徴収税額の計算については、次の6つの方法があります。
今回は5と6を確認してみましょう。

1、扶養控除等申告書の提出あり、前月の給与等あり
2、扶養控除等申告書の提出あり、前月の給与等なし
3、扶養控除等申告書の提出なし、前月の給与等あり
4、扶養控除等申告書の提出なし、前月の給与等なし
5、扶養控除等申告書の提出あり、10倍超の賞与
6、扶養控除等申告書の提出なし、10倍超の賞与

10倍超の賞与の取扱い

規定を確認してみましょう。

2 賞与の支払者がその支払を受ける居住者に対し前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等がある場合において、その賞与の金額が前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等の金額の十倍に相当する金額を超えるときは、当該賞与について第百八十三条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ当該各号に定める税額とする。
一 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に対し、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払う賞与 その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額並びに当該申告書に記載された主たる給与等に係る源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額
二 前号に掲げる賞与以外の賞与 その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額

所得税法第186条第2項、施行日令和6年5月17日

要件は次の2つです。
・前月の給与がある。
・賞与の金額>前月の給与×10

2つの要件を満たす場合は、特例計算となります。

特例計算は、
・扶養控除等申告書の提出がある場合
・扶養控除等申告書の提出がない場合
の2つに分かれます。

扶養控除等申告書の提出がある場合

計算に関する規定を確認してみましょう。

その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額並びに給与所得者の扶養控除等申告書に記載された主たる給与等に係る源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額並びに当該申告書に記載された主たる給与等に係る源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の有無及びその数に応ずる別表第二の甲欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額

まとめると
・A_賞与÷6(12)+前月の給与、扶養親族等の数→別表第2の甲欄の税額
・B_前月の給与、扶養親族等の数→別表第2の甲欄の税額
・A-B=差額×6(12)=源泉徴収税額
となります。

Aは、1月あたりの賞与と前月の給与を合計し、
扶養親族等の数を考慮して
月額表の甲欄を確認する、という意味です。

Bは、前月の給与と扶養親族等の数を考慮して
月額表の甲欄を確認する、という意味です。

AからBをマイナスした金額を
割った数でかけ戻します。

賞与の計算期間が6月以下の場合は×6、
6月を超える場合は×12でかけ戻します。

計算例

次の場合で計算してみましょう。
・社会保険料等を控除した後の賞与 2,400,000円
・社会保険料等を控除した後の前月の給与 100,000円
・賞与の計算期間 6月
・扶養親族等 0人

Aの計算
・賞与 2,400,000円÷6=400,000円
・前月の給与 100,000円
・400,000円+100,000円=500,000円
・扶養親族等の数が0人の甲欄の税額 29,890円

Bの計算
・前月の給与 100,000円
・扶養親族等の数が0人の甲欄の税額 720円

A-B=29,890円-720円=29,170円

29,170円×6=175,020円が賞与の源泉徴収税額となります。

扶養控除等申告書の提出がない場合

計算に関する部分を確認してみましょう。

その賞与の金額の六分の一に相当する金額と当該通常の給与等の金額との合計額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額と当該通常の給与等の金額に応ずる別表第二の乙欄に掲げる税額との差額に六を乗じて計算した金額に相当する税額

まとめると
・A_賞与÷6(12)+前月の給与 → 別表第2の乙欄の税額
・B_前月の給与 → 別表第2の乙欄の税額
・A-B=差額×6(12)=源泉徴収税額
となります。

扶養控除等申告書の提出がない場合、
甲欄ではなく乙欄を使用します。

計算例

次の場合で計算してみましょう。
・社会保険料控除した後の賞与 2,400,000円
・社会保険料控除した後の前月の給与 100,000円
・賞与の計算期間 6月

Aの計算
・賞与 2,400,000円÷6=400,000円
・前月の給与 100,000円
・400,000円+100,000円=500,000円
・乙欄の税額 146,800円

Bの計算
・前月の給与 100,000円
・乙欄の税額 3,600円

A-B=146,800円-3,600円=差額143,200円

差額143,200円×6=859,200円が賞与の源泉徴収税額となります。


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