今回は、災害により仮決算をした場合の法人税の中間申告を確認してみましょう。
法人税の中間申告
法人税には、前半6カ月の法人税を概算で納付する制度があります。中間申告といいます。概算は、前期の法人税の1/2です。
前半6カ月の業績は考慮されないため、赤字であっても一旦納付する必要がありますが、納付する法人税を少なくできる制度もあります。仮決算といいます。
仮決算の結果、前半6カ月が赤字(課税される所得がマイナス)であれば、中間申告の法人税は0円となります。確定申告と同様に計算しますが、確定申告と異なり法人税の還付が受けられません。ただし、災害が発生した場合は特例があります。
災害が発生した場合
1つ目の要件は、災害の発生です。
2つ目の要件は、一定期間中に災害による損失(災害損失金額)が発生していることです。
一定期間は、「内国法人の当該災害のあつた日から同日以後六月を経過する日までの間に終了する第一項に規定する期間」をいいます。
第1項に規定する期間は、上半期(前半6カ月)のことです。
災害損失金額は、
・棚卸資産
・固定資産
・一定の繰延資産
の損失額で、受け取った保険金などがある場合はマイナスした後の金額です。
(保険金などで補填されなかった損失の金額)
2つの要件を満たした場合、中間申告書の記載事項を追加できます。
追加できる記載内容
・外国税額の控除
・所得税額の控除
で法人税の計算上、マイナスしきれなかった金額が記載できます。
原則として仮決算では還付が受けられませんが、災害が発生した場合は還付が受けられます。
還付される金額の上限
還付される金額には、上限があります。
(参考規定のカッコ書きの内容)
還付される金額>災害損失金額の場合は、
還付される金額から超える部分の金額をマイナスします。
例えば、次の場合
・還付される金額 1000万円
・災害損失金額 800万円
超える部分の金額は、1000万円-800万円=200万円となります。
還付される金額(記載できる金額)は、
1000万円-200万円=800万円となります。
受け取った保険金などで補填されない損失が災害損失金額(800万円)となりますので、災害損失金額(800万円)を補填する部分に対して法人税が還付されます。
参考規定
災害が発生した場合の仮決算による法人税の中間申告
4 災害(震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいう。以下この項において同じ。)により、内国法人の当該災害のあつた日から同日以後六月を経過する日までの間に終了する第一項に規定する期間において生じた災害損失金額(当該災害により棚卸資産、固定資産又は政令で定める繰延資産について生じた損失の額で政令で定めるものをいう。第一号において同じ。)がある場合における同項に規定する中間申告書には、同項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載することができる。
法人税法第72条第4項、令和7年4月1日施行
一 当該期間を一事業年度とみなして第六十九条第一項に規定する外国法人税の額で同条の規定により控除されるべき金額及び第六十八条第一項に規定する所得税の額で同項の規定により控除されるべき金額をこれらの順に控除するものとしてこれらの規定を適用するものとした場合に同項の規定による控除をされるべき金額で第一項第二号に掲げる法人税の額の計算上控除しきれなかつたものがあるときは、その控除しきれなかつた金額(当該金額が当該期間において生じた災害損失金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)
二 前号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項
政令で定める災害
2 法第七十二条第四項に規定する政令で定める災害は、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害とする。
法人税法施行令第150条の2、令和7年4月1日施行
「その他」と「その他の」の違い
災害の定義
災害(震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいう。以下この項において同じ。)
災害は、次の4つです。
・震災
・風水害
・火災
・その他政令で定める災害
「その他」とありますので、「政令で定める災害」の中には、
震災や風水害は含まれません。
政令で定める災害は、次の3つです。
・冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害
・鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害
・害虫、害獣その他の生物による異常な災害
「その他の」とありますので、
その他の前にある冷害、鉱害、害虫などは例示です。