今回は、消費税の2割特例の計算と付表6の記載方法を確認してみましょう。
目次
2割特例の概要
2割特例は、納付する消費税を受け取った消費税の20%にできる制度です。
例えば、受け取った消費税が15万円の場合、
納付する消費税は15万円×20%=3万円となります。
今回は、2割特例の具体的な計算方法や
付表6の記載方法を確認したいと思います。
消費税と地方消費税
日本の消費税は現在10%ですが、
消費税の内訳は「消費税7.8%」と「地方消費税2.2%」に分かれます。
そのため、消費税の確定申告書を作成する場合は、
消費税7.8%部分と地方消費税2.2%部分に分けて作成する必要があります。
飲食料品の譲渡などの8%(軽減税率)の対象となるものは、
消費税6.24%部分と地方消費税1.76%部分に分ける必要があります。
消費税の確定申告書についても、消費税7.8%部分を計算する欄と
地方消費税2.2%部分を計算する欄が分かれており、
先に消費税7.8%部分を計算した後、
地方消費税2.2%部分を計算する流れとなっています。
納付する消費税の計算用紙は3枚
2割特例で納付する消費税を計算する用紙は、次の3枚です。
- 消費税及び地方消費税の申告書(申告書第1表)
- 課税標準額等の内訳書(申告書第2表)
- 付表6、税率別消費税額集計表(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する課税期間用)
下記URLから<2割特例用>の用紙がダウンロードできます。
(個人事業者用は現時点でありません。)
令和5年10月1日以後終了する課税期間分の消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/shohi/07.htm
納付する消費税は、
上記の反対で付表6→申告書第2表→申告書第1表の順に計算します。
参考リンク
・2割特例の計算と付表6の記載方法(このページ)
・2割特例の計算と第2表の記載方法
・2割特例の計算と第1表の記載方法
付表6、税率別消費税額集計表
付表6、税率別消費税額集計表を使って、
消費税申告書第1表と第2表に記載する金額を計算します。
付表6の記載内容は、次の3つです。
- 課税標準額に対する消費税額及び控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額
- 控除対象仕入税額とみなされる特別控除税額
- 貸倒れに係る税額
1で、売上に係る消費税や2割特例を計算するための金額を計算します。
2で、2割特例(80%控除額)を計算します。
3で、売上代金が回収できなくなった消費税を計算します。
それぞれ、税率6.24%(軽減税率8%)と税率7.8%(標準税率10%)を計算する欄があり(A列とB列)、A列とB列を合計したものをC列に記載します。
仮に、飲食料品の譲渡など(軽減税率8%)がない場合は、
A列の金額は0となりますので、B列とC列は同じ金額となります。
付表6の記入例
今回は、最初に記入する付表6の記載方法を確認します。
例えば、令和5年10月1日から令和5年12月31日までの
消費税がかかる売上(課税売上げ、税込み)が1,650,000円、
消費税がかかる売上のマイナス(税込み)が1,760円の場合
先に、計算過程などを載せます。
付表6、税率別消費税額集計表
Ⅰ、課税標準額に対する消費税額及び控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額
区分 | 税率6.24% (軽減税率8%) A | 税率7.8% (標準税率10%) B | 合計 C=A+B |
---|---|---|---|
1、課税資産の譲渡等の対価の額 | 0 | 1,650,000÷1.1= 1,500,000 | 1,500,000 |
2、課税標準額 | 0 (千円未満切捨て) | 1,500,000 (千円未満切捨て) | 1,500,000 (千円未満切捨て) |
3、課税標準額に対する消費税額 | 上記金額×6.24%= 0 | 1,500,000×7.8%= 117,000 | 117,000 |
4、貸倒回収に係る消費税額 | 0 | 0 | 0 |
5、売上対価の返還等に係る消費税額 | 0 | 1,760×7.8÷110= 124 | 124 |
6、控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額 3+4-5 | 0 | 117,000+0-124= 116,876 | 116,876 |
Ⅱ、控除対象仕入税額とみなされる特別控除税額
区分 | 税率6.24% (軽減税率8%) A | 税率7.8% (標準税率10%) B | 合計 C=A+B |
---|---|---|---|
7、特別控除税額 6×80% | 0 | 116,876×80%= 93,500 | 93,500 |
Ⅲ、貸倒れに係る税額
区分 | 税率6.24% (軽減税率8%) A | 税率7.8% (標準税率10%) B | 合計 C=A+B |
---|---|---|---|
8、貸倒れに係る税額 | 0 | 0 | 0 |
金額の計算について、1円未満の端数は切り捨てます。
課税標準額に対する消費税額及び控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額
1、課税資産の譲渡等の対価の額
税込み売上高を税抜金額に割り戻します。
2、課税標準額
1の金額の千円未満の端数を切り捨てます。
3、課税標準額に対する消費税額
2の金額に消費税率7.8%(軽減税率の場合は6.24%)を
かけたものを記入します。
4、貸倒回収に係る消費税額
貸倒れた金額が回収された場合に記入します。
今回はありませんので0を記入します。
5、売上対価の返還等に係る消費税額(売上のマイナスの消費税)
税込み金額を税抜き金額に割り戻して、
消費税率7.8%(軽減税率の場合は6.24%)をかけたものを記入します。
6、控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額
3+4-5(2割特例の計算の基礎となる金額)を計算して記入します。
控除対象仕入税額とみなされる特別控除税額
7、特別控除税額(控除対象仕入税額とみなされる金額)
6×80%を計算して記入します。
受け取った消費税に80%をかけないようにしましょう。
貸倒れに係る税額
貸倒れた金額がある場合に記入します。
今回はありませんので0を記入します。
A列(軽減税率)とB列(標準税率)を計算した後、
C列にA列とB列の合計額を記入します。
参考規定など
2023/9/8、国税庁から2割特例用の確定申告の手引きが公表されています。https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023008-043.pdf
2割特例
(適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)
消費税法、施行日令和5年10月1日
第五十一条の二 適格請求書発行事業者(新消費税法第五十七条の三第三項の規定により新消費税法第五十七条の二第一項の登録を受けた事業者とみなされる者を含む。以下この条において同じ。)の五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日までの日の属する課税期間(同項の登録(新消費税法第五十七条の三第三項の規定により新消費税法第五十七条の二第一項の登録を受けた事業者とみなされる場合における当該登録を含む。)、消費税法第九条第四項の規定による届出書の提出又は同法第十条第一項の規定の適用がなかったとしたならば消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間に限るものとし、次に掲げる課税期間を除く。)については、新消費税法第三十条から第三十七条までの規定により新消費税法第三十条第一項に規定する課税標準額に対する消費税額から控除することができる消費税法第三十条第二項に規定する課税仕入れ等の税額の合計額は、新消費税法第三十条から第三十七条までの規定にかかわらず、特別控除税額とすることができる。この場合において、当該特別控除税額は、当該課税期間における新消費税法第三十二条第一項第一号に規定する仕入れに係る消費税額とみなす。
一 五年施行日の属する課税期間であって五年施行日前から引き続き消費税法第九条第四項の規定の適用を受ける課税期間
二 消費税法第九条第七項に規定する調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合に該当する場合における同項に規定する調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から当該調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間
三 登録開始日の前日までに消費税法第十条第一項の相続があったことにより同項の規定の適用を受ける課税期間
四 消費税法第十九条第一項第三号から第四号の二までの規定の適用を受ける課税期間及び同条第二項又は第四項の規定により一の課税期間とみなされる期間
特別控除税額の定義
2 前項に規定する特別控除税額とは、当該適格請求書発行事業者の当該課税期間の課税資産の譲渡等(消費税法第七条第一項若しくは第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額に対する消費税額から当該課税期間における新消費税法第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の百分の八十に相当する金額をいう。
消費税法、施行日令和5年10月1日