2回目以降の相続税の障がい者控除


今回は、2回目以降の相続税の障がい者控除を確認してみましょう。

障がい者控除の制限

1、相続などにより財産を取得している。
2、民法で規定されている相続人(法定相続人)に該当する。
3、財産を受け取った人が障がい者に該当する。
上記3つにあてはまる人は、相続税を減らすことが可能です。
(障がい者控除といいます。)

控除額は、
・100,000円×85歳に達するまでの年数(端数は1年に切上げ)
で計算しますが、2回目の相続でも同様に計算できるのでしょうか?

規定を確認してみましょう。

3 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「第十九条の三」と読み替えるものとする。

相続税法第19条の4第3項、令和7年6月1日施行

前条(第19条の3)第2項及び第3項は、未成年者控除に関する規定です。第1項(障がい者控除)を適用する場合に準用します。

マイナスできない場合は、扶養義務者の相続税が減る。

読み替える必要がありますので読み替えてみましょう。

2 前項の規定により控除を受けることができる金額がその控除を受ける者について第十五条から第十九条の三までの規定により算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額は、政令で定めるところにより、その控除を受ける者の扶養義務者が同項の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産の価額について第十五条から第十九条の三までの規定により算出した金額から控除し、その控除後の金額をもつて、当該扶養義務者の納付すべき相続税額とする。

未成年者控除が未成年者(例、子)の相続税からマイナスできない場合は、マイナスできなかった残りの控除額を未成年者の扶養義務者(例、親)の相続税からマイナスできる規定です。

未成年者控除を障がい者控除で使えるようにするために読み替えています。

前条(第19条の2)を第19条の3に読み替えます。

第15条から前条(第19条の2)第19条の3までの規定
・第15条、遺産に係る基礎控除
・第16条、相続税の総額
・第17条、各相続人等の相続税額
・第18条、相続税額の加算
・第19条、相続開始前7年以内に贈与があつた場合の相続税額
・第19条の2、配偶者に対する相続税額の軽減
・第19条の3、未成年者控除(追加)

未成年者控除(第19条の3)を計算する場合は、第15条から第19条の2(配偶者に対する相続税額の軽減)までの規定を適用します。

障がい者控除を計算する場合は、第15条から第19条の3(未成年者控除)までの規定を適用します。

マイナスは、次の順で行います。
1、第19条の3、未成年者控除
2、第19条の4、障がい者控除

2回目以降の相続税の障がい者控除

2回目以降の相続税の障がい者控除の規定は、読み替えずそのまま適用(準用)できます。

3 第一項の規定に該当する者がその者又はその扶養義務者について既に前二項の規定による控除を受けたことがある者である場合においては、その者又はその扶養義務者がこれらの規定による控除を受けることができる金額は、既に控除を受けた金額の合計額が第一項の規定による控除を受けることができる金額(二回以上これらの規定による控除を受けた場合には、最初に相続又は遺贈により財産を取得した際に同項の規定による控除を受けることができる金額)に満たなかつた場合におけるその満たなかつた部分の金額の範囲内に限る。

第1項は、障がい者控除のことです。

前2項は、
・第1項、障がい者控除
・第2項、扶養義務者の相続税が減る。
のことです。

・その者(障がい者本人)
・その扶養義務者(親や兄弟姉妹など)
がこれらの規定(第1項と第2項)による
控除を受けることができる金額は、

既に控除を受けた金額の合計額が
第1項の規定による控除を受けることができる金額()
に満たなかつた場合における
その満たなかつた部分の金額の範囲内に限る。

障がい者控除は、控除額に限度があります。

計算例

例えば、次の場合で確認してみましょう。
・1回目に計算した障がい者控除の金額 100万円
・1回目に相続税からマイナスした障がい者控除額 40万円

マイナスできなかった金額は、100万円-40万円=残り60万となります。

2回目の計算

「既に控除を受けた金額の合計額(1回目の40万円)が第1項の規定による控除を受けることができる金額(1回目の100万円)に満たなかつた場合におけるその満たなかつた部分の金額(60万円)の範囲内に限る。」となりますので、

・1回目に計算した障がい者控除の金額
80万円(10万円×8年)と計算されたとしても60万円が限度ですので、60万円

・2回目に相続税からマイナスした障がい者控除 40万円

マイナスできなかった金額は、60万円-40万円=残り20万円となります。

3回目の計算

既に控除を受けた金額の合計額(1回目の40万円と2回目の40万円=80万円)が第1項の規定による控除を受けることができる金額(1回目の100万円)に満たなかつた場合におけるその満たなかつた部分の金額(20万円)の範囲内に限る。

となりますので、
・2回目に計算した障がい者控除の金額
50万円(10万円×5年)と計算されたとしても20万円が限度ですので、20万円

・3回目にマイナスした障がい者控除 20万円

マイナスできなかった金額は、20万円-20万円=残り0円となります。

1回目でマイナスした金額 40万円
2回目でマイナスした金額 40万円
3回目でマイナスした金額 20万円
合計しますと40万円+40万円+20万円=100万円となります。


おまけ

「第一項の規定による控除を受けることができる金額」は、1回目の相続で計算した未成年者控除額や障がい者控除額をいいます。

参考通達
相続税法基本通達19の3-5(法第19条の3第3項に規定する「第1項の規定による控除を受けることができる金額」の意義)

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