今回は、試験研究費の特別控除のうち
「通算法人の税額控除限度額の特例」を確認します。

内容

通算法人以外の場合と同様に、
「税額控除限度額」と「控除上限額」の計算に特例があります。

通算法人以外の場合は、
「増減試験研究費割合」と「試験研究費割合」を使用しますが、
通算法人の場合は、全体計算するため、
「合算増減試験研究費割合」と「合算試験研究費割合」を使用します。

税額控除限度額の計算式は、通常法人以外の場合と同じです。
各法人の金額で計算するか、全体の金額で計算するかの違いがあります。

通算法人の税額控除限度額の特例（措置法42条の4第8項8号）

税額控除限度額の計算は、通算法人以外の場合と同様に、
「中小企業者等以外」と「中小企業者等」の2パターンあります。

全体計算の内容を確認します。

第8項第3号、全体計算（当初申告）
イ、試験研究費基準額
　試験研究費の額の合計額×一定割合（上限10％、中小企業者等12％）
ロ、法人税額基準額
　調整前法人税額の合計額×25％
ハ、調整前法人税額の合計額

今回の特例は、イの一定割合に関するものです。

特例の内容を算式で確認します。
税額控除限度額（8項3号イ）＝
試験研究費の額の合計額（3号イの合計額）×一定割合（次の特例）

中小企業者等以外の場合（8号イ）

小数点以下3位未満の端数は切捨て、上限14％です。

（１）、（２）以外の事業年度
（ⅰ）、合算増減試験研究費割合＞12％（ⅲの場合を除く。）
　11.5％+（合算増減試験研究費割合-12％）×0.375（傾き）
　12％を超える部分については、傾きが1.5倍となります。
（ⅱ）、合算増減試験研究費割合≦12％（ⅲの場合を除く。）
　11.5％-（12％-合算増減試験研究費割合）×0.25（傾き）
（ⅲ）、比較試験研究費の額の合計額＝0
　8.5％（合算増減試験研究費割合を0％で計算した割合）

（２）、合算試験研究費割合＞10％
（ⅰ）、（１）（ⅰ）から（ⅲ）までの割合
（ⅱ）、（ⅰ）の割合×控除割増率
控除割増率＝（合算試験研究費割合-10％）×0.5（上限10％）

中小企業者等の場合（8号ロ）

12％+一定割合
（小数点以下3位未満の端数は切捨て、合計後の割合は上限17％）

一定割合の計算方法
（１）、合算増減試験研究費割合＞12％（一定の事業年度を除く。）
（合算増減試験研究費割合-12％）×0.375（傾き）
12％を超える部分については、傾きが1.5倍となります。

（２）、合算試験研究費割合＞10％（一定の事業年度を除く。）
12％×控除割増率（注1）
注1、（合算試験研究費割合-10％）×0.5（上限10％）

（３）、合算増減試験研究費割合＞12％、かつ、合算試験研究費割合＞10％（一定の事業年度を除く。）
次の割合を合計した割合、（１）と（２）の特例を併用したもの
（ⅰ）、（１）に定める割合
（ⅱ）、（ⅰ）の割合×（２）の控除割増率
（ⅲ）、（２）の割合

（１）の一定の事業年度
比較試験研究費の額の合計額＝0の事業年度、計算できないため
合算試験研究費割合＞10％の事業年度、（２）に該当するため

（２）の一定の事業年度
比較試験研究費の額の合計額＞0で、合算増減試験研究費割合＞12％の事業年度
（３）に該当するため

（３）の一定の事業年度
比較試験研究費の額の合計額＝0の事業年度、計算できないため

参考規定

租税特別措置法42条の4第8項8号

合算増減試験研究費割合

十一　合算増減試験研究費割合　第八項第三号の通算法人の適用対象事業年度及び同号イの他の通算法人の他の事業年度の試験研究費の額の合計額から比較試験研究費合計額（当該通算法人及び他の通算法人の比較試験研究費の額を合計した金額をいう。以下この号において同じ。）を減算した金額の当該比較試験研究費合計額に対する割合をいう。

租税特別措置法42条の4第19項

試験研究費の額の合計額－比較試験研究費合計額（マイナスあり）
—————————————————————————
比較試験研究費合計額（過去3期平均）

合算試験研究費割合

十二　合算試験研究費割合　第八項第三号の通算法人の適用対象事業年度及び同号イの他の通算法人の他の事業年度の試験研究費の額の合計額の当該通算法人及び他の通算法人の平均売上金額の合計額に対する割合をいう。

租税特別措置法42条の4第19項

試験研究費の額の合計額
————————————————–
平均売上金額の合計額（当期含む4期平均）