消費税は2年前(基準期間)の課税売上高が1000万円以下の場合、納税義務が免除されます。納税義務が免除されると消費税の確定申告ができなくなります。今回は、課税事業者の選択について確認します。
課税事業者を選択する目的
通常、税金の確定申告がなくなるとラッキー?と思いますが、
消費税の確定申告は難しいところがあります。
所得税については、条件にあてはまれば制限なく還付申告できますが、
消費税の免税事業者については還付申告できません。
免税事業者の場合、仮に支払った消費税が発生した消費税より多かったとしても確定申告ができないため、還付申告ができなくなってしまいます。
例えば、次の場合
- 発生した消費税 0円
- 支払った消費税 500万円
- 還付される消費税 1-2=500万円
課税事業者は500万円の還付申告が可能ですが、免税事業者は還付申告ができません。そのため、消費税は免税事業者であっても自ら課税事業者を選択できる制度があります。
課税事業者を選択する場面
免税事業者が課税事業者を選択する場面は、主に次の2つです。
- 輸出等の免税取引が発生する予定
- 高額な設備投資を行う予定
1の輸出取引(免税取引)については、消費税が10%ではなく免除(0%課税)となります。発生した消費税が支払った消費税より少なくなり、一般的には還付申告が可能です。
2の設備投資については、単純に支払った消費税が多くなるため、
還付申告になることがあります。
手続き
課税事業者の選択は、課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
この届出については、提出期限がなく、
提出した年度の次の年度から効力が生じます。
消費税の選択制度は提出期限がないため
災害等があったとしても提出期限の延長がされないため注意が必要です。
例えば、令和5年1月1日から課税事業者を選択する場合、
令和4年12月31日までに提出する必要があります。
注意点
自ら課税事業者を選択した場合、2年間強制的に課税事業者となります。
例えば、個人事業者が令和4年に課税事業者選択届出書を提出した場合、
令和5年だけではなく令和6年も課税事業者となります。
課税事業者を選択する場合、
還付を受ける1年目だけではなく2年目の消費税についても試算しましょう。
課税事業者の選択を止める場合
自ら課税事業者を選択した場合、
課税事業者の選択を止めない限り、課税事業者となります。
取りやめの手続きは、課税事業者選択不適用届出書を提出する必要があります。
課税事業者選択不適用届出書についても、提出期限がなく、
提出した年度の次の年度から効力が生じます。
提出期限の延長がない点についても課税事業者選択届出書と同様です。
例えば、個人事業者が令和7年1月1日から課税事業者の選択を取りやめる場合、
令和6年12月31日までに提出する必要があります。
やむを得ない事情がある場合
消費税の届出書については提出期限が設けられていないため、災害等があったとしても提出期限の延長が認められていません。そのため、災害等があった場合の申請制度があります。
申請については課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書を
提出する必要があります。
申請が承認された場合、本来提出するつもりであった期間に、
課税事業者選択届出書や課税事業者選択不適用届出書を
提出したものとして取り扱われます。
課税事業者届出書
2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、手続きなく課税事業者となります。課税事業者となったことをお知らせするため課税事業者届出書を提出する必要があります。
届出書の名前が課税事業者選択届出書と似ているため注意しましょう。誤って、課税事業者選択届出書を提出してしまった場合、免税事業者であっても強制的に2年間課税事業者となり、余計な納税リスクが生じます。
まとめ
今回確認した届出書等をまとめます。
書類の名称 | 用途 | 期限 | 届出書等の効力 |
---|---|---|---|
課税事業者選択届出書 | 免税事業者が消費税の還付を受けるため自ら課税事業者を選択する場合 | ありません。 | 翌年度から |
課税事業者選択不適用届出書 | 課税事業者の選択を止める場合 | ありません。 | 翌年度から |
消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書 | 災害等により提出したい日に提出できなかった場合 | やむを得ない事情が止んだ後、相当の期間内 | 提出したかった期間に提出したものとみなされる。 |
課税事業者届出書 | 課税事業者のお知らせ | 速やかに | ありません。 |