建物と土地を同時に売却した場合の消費税


今回は、建物と土地を同時に売却した場合の消費税を確認します。

現行の取扱い

建物(課税資産)と土地(非課税資産)を同時に売却した場合に、
売却代金が建物の代金と土地の代金に
合理的に区分されていないときは、合理的に区分する必要があります。

合理的に区分する基準は、時価の比率です。
譲渡代金が合理的に区分されているときは按分不要です。

令和5年10月1日以後の取扱い

インボイスの制度に伴って、上記規定が改正されています。

大きな変更はありませんが、軽減税率の譲渡も追加で規定されているため、
課税資産と非課税資産の一括譲渡だけではなく、
次の一括譲渡についても適用できる規定に変更されます。

組み合わせ
1、10%課税売上げと軽減8%課税売上げ
2、10%課税売上げと非課税売上げ
3、軽減8%課税売上げと非課税売上げ
4、10%課税売上げと軽減8%課税売上げと非課税売上げ

対価の額

改正前の「対価の額」は税抜き金額を指していますが、
改正後の「対価の額」については、
対価の額に消費税額等が含まれている場合は対価の額×100÷110
(軽減税率の場合は、対価の額×100÷108)とする内容に変わっています。

対価の額に消費税額等が含まれていない場合は
税抜き金額のため、割り戻し計算は不要です。

計算例

建物(課税資産)と土地(非課税資産)を9500万円で売却した場合、
建物の売却については消費税がかかりますが、
土地の売却については消費税がかかりませんので、
譲渡代金を時価で按分する必要があります。
(時価とは、近隣の売買実例価額、鑑定評価額、税法評価額など)

建物の時価が3000万円、土地の時価が7000万円の場合、

建物の売却代金
9500万円×3000万円÷(3000万円+7000万円)=2850万円

建物の売却に係る課税標準
2850万円×100÷110=25,909,091円

建物の売却に係る消費税
25,909,091円×10%=2,590,909円

土地の売却代金
9500万円×7000万円×(3000万円+7000万円)=6650万円

税抜仕訳の例、建物の簿価2000万円、土地の簿価7000万円の場合

借方貸方
現金 28,500,000建物 20,000,000
仮受消費税 2,590,909
建物売却益 5,909,091
現金 66,500,000
土地売却損 3,500,000
土地 70,000,000
一括譲渡の仕訳例

実務上の注意点

固定資産の売却損益は消費税の計算に関係しないため、
建物の課税売上げ(税込金額)が2850万円、
土地の非課税売上が6650万円となるように仕訳をきったり、
消費税コードを設定する必要がありますので注意しましょう。

参考規定

現行、課税資産と非課税資産を一括譲渡した場合の課税標準

3 事業者が課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項において同じ。)に係る資産(以下この項において「課税資産」という。)と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下この項において「非課税資産」という。)とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額(法第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする。

消費税法施行令45条

改正規定、課税資産と非課税資産を一括譲渡した場合の課税標準

3 事業者が次に掲げる資産の区分のうち異なる二以上の区分の資産を同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額が次に掲げる資産ごとに合理的に区分されていないときは、第一号に掲げる資産の譲渡の対価の額については、これらの資産の譲渡の対価の額にこれらの資産の譲渡の時におけるこれらの資産の価額の合計額のうちに同号に掲げる資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とし、第二号に掲げる資産の譲渡の対価の額については、これらの資産の譲渡の対価の額にこれらの資産の譲渡の時におけるこれらの資産の価額の合計額のうちに同号に掲げる資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする。この場合において、第一号に掲げる資産の譲渡に係る消費税の課税標準は、当該資産の譲渡の対価の額(当該対価の額に消費税額等(その資産の譲渡につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額をいう。以下この項において同じ。)が含まれる場合には、当該対価の額に百十分の百を乗じて算出した金額)とし、第二号に掲げる資産の譲渡に係る消費税の課税標準は、当該資産の譲渡の対価の額(当該対価の額に消費税額等が含まれる場合には、当該対価の額に百八分の百を乗じて算出した金額)とする。
一 課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等及び軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る資産
二 軽減対象課税資産の譲渡等に係る資産
三 課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産

消費税法施行令45条、施行日令和5年10月1日
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