今回は、一括値引き等があった場合の消費税を確認します。
一括売上げ値引き
課税事業者が税率の異なる取引について
一括して売上値引きを行った場合に、
値引額が合理的に区分されていないときは、
税込価額の割合で按分する必要があります。
例えば、110,000円(10%課税売上げ、税込み)と
108,000円(軽減税率8%課税売上げ、税込み)に対して
20,000円(税込み)の値引きをした場合、
税込価額の割合で按分します。
軽減税率8%の値引き
20,000円(税込み)×108,000円÷218,000円=9,908円(税込み)
9,908円÷1.08=9,174円(税抜き)
差し引くと10%の値引きは、
20,000円(税込み)-9,908円=10,092円(税込み)
10,092円÷1.1=9,175円(税抜き)となります。
値引額が合理的に区分されているときは、
その区分された金額で計算します。
建物(課税売上げ)と土地(非課税売上げ)を一括譲渡した場合の按分と同じ考え方ですが、値引きの場合は税込価額を基準に按分する規定になっていますね。
仮に税抜価額の割合で按分すると
軽減税率8%の値引き
20,000円(税込み)×100,000円÷200,000円=10,000円
10,000円÷1.08=9,259円
差し引くと10%の値引き
20,000円(税込み)-10,000円=10,000円
10,000円÷1.1=9,091円となります。
インボイスQ&Aの問68、端数値引きがある場合の適格請求書の記載の計算例は、税抜価額の比率で按分されています。
対価の額を直接変更する場合は、売上値引きの規定ではなく、
対価が合理的に按分されていない場合の規定を適用しているため、
時価(計算例では税抜価額)の割合で按分しているのでしょう。
売上値引きとするか対価の修正とするかについては、
インボイスQ&Aの問68に記載されています。
「なお、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かについて厳密な区分が困難である場合は、①と②のいずれの処理を行っても差し支えありません。」とあり、規定は前後で分かれていますが、実務上はいずれの処理も可能です。
参考規定
2 法第三十八条第一項に規定する事業者が、売上げに係る対価の返還等を行う場合において、当該売上げに係る対価の返還等の金額が課税資産の譲渡等(軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る部分と軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分とに合理的に区分されていないときは、当該売上げに係る対価の返還等に係る税込価額(同項に規定する税込価額をいう。以下この項及び第六十条において同じ。)に、当該売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等の税込価額の合計額のうちに軽減対象課税資産の譲渡等の税込価額の占める割合を乗じて計算した金額を、当該軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分の金額として、法第三十八条第一項の規定を適用する。
消費税法施行令58条、施行日令和5年10月1日
一括仕入れ値引き
課税事業者が税率の異なる取引について
一括して仕入値引きを受けた場合に、
値引額が合理的に区分されていないときは、
税込価額の割合で按分する必要があります。
参考規定
2 事業者が、仕入れに係る対価の返還等を受けた場合において、当該仕入れに係る対価の返還等を受けた金額が他の者から受けた課税資産の譲渡等(軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る部分と軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分とに合理的に区分されていないときは、当該仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に、当該仕入れに係る対価の返還等に係る課税仕入れに係る支払対価の額の合計額のうちに軽減対象課税資産の譲渡等に係る課税仕入れに係る支払対価の額の占める割合を乗じて計算した金額を、当該軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分の金額として、法第三十二条第一項第一号の規定を適用する。
消費税法施行令52条、施行日令和5年10月1日
インボイス制度前の仕入れ値引きの規定は、
「事業者が、国内において行つた課税仕入れ又は特定課税仕入れにつき、」
と規定されていますが、
インボイス制度後の仕入れ値引きの規定は、
「事業者が、国内において行つた課税仕入れ(第三十条第一項の規定の適用を受けたものに限る。以下この条において同じ。)又は特定課税仕入れにつき、」
に変わります。
課税仕入れのうち
「仕入税額控除の適用を受けたもの」に限定されます。
そのため、インボイスが取得できない課税仕入れ(経過措置なし)については、原則として仕入税額控除が適用できないため、仕入値引きの処理も不要です。
その他の規定
按分規定について確認してみました。
全部で10個(新法5個と対応する経過措置5個)あります。
課税売上げ(10%、軽減8%、非課税売上など)の一括譲渡
(消費税法施行令45条3項)
仕入値引き等(税率が混在する場合)
(消費税法施行令52条2項)
売上値引き等(税率が混在する場合)
(消費税法施行令58条2項)
貸倒れ控除(税率が混在する場合)
(消費税法施行令60条1項)
貸倒れ回収(税率が混在する場合)
(消費税法施行令60条2項)
経過措置(税率が混在する場合)
・課税売上げ(10%、軽減8%、非課税売上など)の一括譲渡
・仕入値引き等
・売上値引き等
・貸倒れ控除
・貸倒れ回収