今回は、消費税を取り戻した場合の税抜経理を確認してみましょう。
内容
令和5年10月19日に、法令解釈通達の趣旨説明が公表されています。
【改正】14の2
適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税等の処理
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/231016/index.htm
改正内容の前に、基本通達の内容を確認してみましょう。
この基本通達は、インボイス発行事業者でない人から
課税仕入れをした場合の税抜経理に関するものです。
例えば、インボイス発行事業者でない人から課税仕入れをして、
110,000円を支払った場合に次の仕訳をきったとします。
借方 | 貸方 |
---|---|
経費 100,000円 | 現金 110,000円 |
仮払消費税等 10,000円 | - |
仮払消費税等10,000円は、
原則として消費税の控除ができないため、
税金計算上、次の仕訳が必要です。
借方 | 貸方 |
---|---|
経費 110,000円 | 現金 110,000円 |
改正内容
追加された部分を確認してみましょう。
3 本文の取扱いは、本文の課税仕入れが国若しくは地方公共団体、消法別表第三に掲げる法人又は人格のない社団等において、消法令第 75 条第8項⦅国、地方公共団体等の仕入れに係る消費税額の特例⦆の規定の適用を受け、又は受けることが見込まれるものであっても同様であることに留意する。
【改正】(適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税等の処理)
「消費税を取り戻した場合であっても同様」と言ってますね。
解説を確認してみましょう。
3 そこで、法人が、その明らかにした課税期間の課税仕入れ等の税額の合計額に加算することとされ、又は加算することが見込まれる金額の計算の基礎となった適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて、その取引の対価の額と区分して消費税等の額に相当する金額を計上する経理をした場合、その消費税等の額に相当する金額を課税仕入れに係る取引の対価の額に含めて法人税の課税所得金額を計算するのかという疑問が生ずる。この点、その明らかにした課税期間の課税仕入れ等の税額の合計額に加算することとされ、又は加算することが見込まれる金額の計算の基礎となった適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、その取引の対価の額と区分される消費税等の額はないのであるから、その経理をした消費税等の額に相当する金額を当該取引の対価の額に含めて法人税の課税所得金額の計算を行うことを、本通達の注書3で留意的に明らかにしている。
解説(適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る消費税等の処理)
具体的に、消費税を取り戻した場合と
消費税を取り戻さなかった場合を比較して確認してみます。
特例の適用の有無による違い
仮払消費税10,000円の全額が
2重制限の対象となる場合で確認してみましょう。
税金計算上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
経費 110,000円 | 現金 110,000円 |
消費税を取り戻さなかった場合の消費税の精算仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
雑損失 10,000円 | 未払消費税等 10,000円 |
消費税を取り戻した場合の消費税の精算仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
雑損失 0円 | 未払消費税等 0円 |
特例を適用して消費税を取り戻した場合であっても同様の取扱い
(本体価格と消費税を分けない処理)が必要です。
仮に同様の取扱いとしない場合を考えてみます。
仮払消費税等が残り、雑損失に振り替えられます。
借方 | 貸方 |
---|---|
経費 100,000円 | 現金 110,000円 |
仮払消費税等 10,000円 | - |
借方 | 貸方 |
---|---|
雑損失 0円 雑損失 10,000円 | 未払消費税等 0円 仮払消費税等 10,000円 |
精算の結果、本体価格と消費税が分離され、
税込経理とバランスが取れないため、
消費税を取り戻した場合であっても同様の処理が必要です。
まとめ
仮払消費税等10,000円について2重制限を受けます。
1、インボイスがないことによる控除制限、10,000円
2、補助金を受け取ったことによる控除制限、10,000円
特例を適用した場合、過重制限の10,000円が戻ってきます。
戻ってくる10,000円は、1ではなく2の10,000円なので、
税金計算上(法人税・所得税)の取扱いは、
同様(そのまま)という意味です。