適格分割等があった場合の貸倒引当金の設定_中小企業者等の特例


今回は、適格分割等があった場合の貸倒引当金の設定のうち、中小企業者等の特例を確認してみましょう。

規定の概要

今回確認する規定は、こちらです。

2 法人で法人税法第五十二条第六項に規定する適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に中小企業者等に該当するもの(中小法人にあつては、適用除外事業者に該当するもの(当該適格分割等の直前の時において通算法人である中小法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、当該通算法人である中小法人を含む。)を除く。)が同項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定にかかわらず、当該適格分割等の直前の時における当該適格分割等により移転する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に政令で定める割合を乗じて計算した金額をもつて、同項に規定する一括貸倒引当金繰入限度額に相当する金額とすることができる。

租税特別措置法第57条の9第2項、令和7年10月1日施行

カッコ書きを外してみましょう。

2 法人で法人税法第五十二条第六項に規定する適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に中小企業者等に該当するもの(注1)が同項の規定の適用を受ける場合には、同項の規定にかかわらず、当該適格分割等の直前の時における当該適格分割等により移転する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に政令で定める割合を乗じて計算した金額をもつて、同項に規定する一括貸倒引当金繰入限度額に相当する金額とすることができる。

1、適格分割
2、適格現物出資
3、適格現物分配(残余財産の全部分配を除外)
上記3つを併せて「適格分割等」といいます。

法人税法第52条第6項は、適格分割等により
・一括評価金銭債権(売掛金など)
を移転する場合に、期中に貸倒引当金を設定できる規定です。

「適格分割等の直前の時を事業年度終了の時とした場合に」とあるのは、適格分割等の場合は、事業年度が終了しないため、事業年度が終了したと仮定した場合に、という意味です。

事業年度が終了したと仮定した場合に「中小企業者等」に該当するものが、同項(法人税法第52条第6項)の規定の適用を受ける場合には、法人税法第52条第6項を適用しないで、租税特別措置法の計算が選択できます。

取扱い

要件を満たした場合の取扱いを確認してみましょう。

当該適格分割等の直前の時における当該適格分割等により移転する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に政令で定める割合を乗じて計算した金額をもつて、同項に規定する一括貸倒引当金繰入限度額に相当する金額とすることができる。

算式に変えます。

一括貸倒引当金繰入限度額=
一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額×政令で定める割合

となります。

政令で定める割合

政令で定める割合は、主たる事業によって異なります。

第1号、卸売業、小売業
・飲食店業や料理店業を含みます。
・第4号に掲げる割賦販売小売業は、除外されています。
10/1000

第2号、製造業
・電気業、ガス業、熱供給業、水道業、修理業を含みます。
8/1000

第3号、金融業、保険業
3/1000

第4号、割賦販売小売業など
7/1000

第5号、上記以外の事業
6/1000

参考規定
租税特別措置法施行令第33条の7第4項、令和7年10月1日施行

参考情報

省略したカッコ書きを確認してみましょう。

中小企業者等に該当するもの(中小法人にあつては、適用除外事業者に該当するもの(当該適格分割等の直前の時において通算法人である中小法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人が適用除外事業者に該当する場合には、当該通算法人である中小法人を含む。)を除く。)

中小法人が適用除外事業者に該当する場合は、
「中小企業者等に該当するもの」から除外されます。

2つ目のカッコ書きは、通算制度を選択している場合の取扱いです。

適格分割等の直前に、いずれかの通算法人が適用除外事業者に該当する場合は、「適用除外事業者に該当するもの」に含まれるため、「中小企業者等に該当するもの」から除外されます。

適用除外事業者に該当する場合は、租税特別措置法の計算が選択できません。

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