損益通算の遮断措置の不適用


今回は、損益通算の遮断措置の不適用を確認します。
損益通算の遮断についてはこちら

遮断措置の不適用の趣旨

遮断措置の趣旨は、修正・更正があった場合の損益通算の再計算を避けることです。ただし、無条件に再計算をしないようにすると課税が生じる場合があるため、次の3要件を満たすときは損益通算の再計算をします。

  1. 通算事業年度の「全て」について、期限内申告書の所得が0以下である。
  2. 通算事業年度の「いずれか」について、所得が過少、損失が過大である。
  3. 通算事業年度の「いずれか」について、損益通算の遮断措置の不適用などを使用しないで計算した所得が0を超えること。

1について
「全て」は、通算法人の「全て」という意味です。
P社、S1社、S2社、S3社であれば、4社全ての所得が0以下の場合です。

2について
上記4社のうち1社でも所得が過少又は損失が過大であるときです。
修正申告や(増額)更正がある場合です。

3について
損益通算の遮断措置を使用した場合(数字を固定した場合)に、
所得(税金)が発生する場合です。

遮断措置の具体例

この事例では、遮断措置の不適用(損益通算の再計算あり)となりますが、
遮断措置あり(損益通算の再計算なし)で計算します。

当初申告を次の金額とします。

内容P社S1社S2社S3社合計
損益通算前所得2,0001,000▲1,000▲4,000▲2,000
損益通算▲2,000
損金算入
▲1,000
損金算入
600
益金算入
2,400
益金算入
0
損益通算後所得00▲400▲1,600▲2,000
法人税20%00000
当初申告、損益通算あり。

損益通算
黒字合計、2,000+1,000=3,000
赤字合計、1,000+4,000=5,000
少ない金額、3,000<5,000 → 3,000

P社、▲3,000×(2,000÷3,000)=▲2,000
S1社、▲3,000×(1,000÷3,000)=▲1,000
S2社、3,000×(1,000÷5,000)=600
S3社、3,000×(4,000÷5,000)=2,400

仮に、S2社で売上計上もれが1,500あった場合に
損益通算の金額を固定すると次の金額となります。

内容P社S1社S2社S3社合計
損益通算前所得2,0001,000▲1,000
+1,500
=500
▲4,000▲500
損益通算
(遮断措置あり)
▲2,000
損金算入
▲1,000
損金算入
600
益金算入
2,400
益金算入
0
損益通算後所得00▲400
 ↓
1,100
▲1,600▲500
法人税20%002200220
損益通算する場合、遮断措置あり。

遮断措置を使用すると損益通算の金額を固定するため、
S2社の所得▲400から+1,100となり、S2社で法人税が220発生します。

グループ全体では▲500の欠損金があるにもかかわらず、遮断措置により、
S2社の所得1,100とS3社の損失▲1,600が相殺できません。

遮断措置の不適用

遮断措置の規定により相殺できないため、
遮断措置を止めて、損益通算を再計算します。

内容P社S1社S2社S3社合計
損益通算前所得2,0001,000▲1,000
+1,500
=500
▲4,000▲500
損益通算
(遮断措置なし)
▲2,000
損金算入
▲1,000
損金算入
▲500
益金算入
3,500
益金算入
0
損益通算後所得000▲500▲500
法人税20%00000
損益通算する場合、遮断措置の不適用。

損益通算の再計算
黒字合計、2,000+1,000+500(S2社)=3,500
赤字合計、4,000
少ない金額、3,500<4,500 → 3,500

P社、▲3,500×(2,000÷3,500)=▲2,000
S1社、▲3,500×(1,000÷3,500)=▲1,000
S2社、▲3,500×(500÷3,500)=▲500
S3社、3,500×(4,000÷4,000)=3,500

遮断措置の不適用(損益通算の再計算)により
S2社の所得1,100とS3社の損失1,600が相殺できて、
S2社の法人税がなくなりました。

遮断措置の不適用の3要件をまとめます。

  1. 全ての法人が当初申告で所得が発生していない。
  2. 修正申告や(増額)更正が生じた。
  3. 遮断措置の不適用を使用しない場合に所得(税金)が発生する。

遮断措置の不適用の規定は、
上記3要件を満たした場合に遮断措置を止めて、
損益通算の再計算により所得(税金)が生じないようにしています。

参考リンク
グループ通算制度の損益通算
損益通算の遮断措置
・損益通算の遮断措置の不適用(この規定)
遮断措置がない場合の2回目の修正申告等

遮断措置の不適用の規定(参考)

6 通算事業年度(第七十四条第一項の規定による申告書を提出した事業年度に限る。以下この項及び次項において同じ。)のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、次に掲げる要件の全てに該当するときは、第一項の通算法人の所得事業年度又は第三項の通算法人の欠損事業年度については、前項<損益通算の遮断措置>の規定は、適用しない

一 通算事業年度の全てについて、第七十四条第一項の規定による申告書に当該通算事業年度の所得の金額として記載された金額零であること又は同項の規定による申告書に当該通算事業年度の欠損金額として記載された金額があること。

二 通算事業年度のいずれかについて、第七十四条第一項の規定による申告書に添付された書類に当該通算事業年度の通算前所得金額として記載された金額が過少であり、又は同項の規定による申告書に添付された書類に当該通算事業年度の通算前欠損金額として記載された金額が過大であること。

三 通算事業年度のいずれかについて、この項<損益通算の遮断措置の不適用>及び第六十四条の七第八項<欠損金の遮断措置の不適用>の規定その他政令で定める規定を適用しないものとして計算した場合における当該通算事業年度の所得の金額が零を超えること。

法人税法64条の5、第6項
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