固有事業者の特定期間における課税売上高


今回は、固有事業者の特定期間おける課税売上高を確認してみましょう。

法人課税信託の取扱い

消費税の納税義務は、原則として
基準期間(2年前)の課税売上高により判定しますが、
特例により特定期間(前年の上半期)の課税売上高で
判定することがあります。

法人課税信託の場合、1人の事業者を
・固有事業者
・受託事業者
の2人に分けますが、
特定期間の課税売上高の計算はどうなるでしょうか?

規定を確認してみましょう。

7 固有事業者又は受託事業者に係る第九条の二第一項に規定する特定期間における課税売上高(同条第三項の規定の適用がある場合には、同項に規定する合計額)、第十一条第四項に規定する当該事業年度の基準期間における課税売上高及び第三十条第二項に規定する課税期間における課税売上高については、第九条の二第二項若しくは第三項、第十一条第四項又は第三十条第六項の規定にかかわらず、それぞれこれらの金額に相当するものとして第四項又は第五項の規定に準じて政令で定めるところにより計算した金額とする。

消費税法第15条第7項、施行日令和6年4月9日

まとめてみますね。

固有事業者や受託事業者に係る
・特定期間における課税売上高
・合併があった場合(第11条第4項)の基準期間における課税売上高
・個別対応方式等(第30条第2項)の課税期間における課税売上高
の3つについては、原則に関係なく、

・第4項、固有事業者の基準期間における課税売上高の計算の特例
・第5項、受託事業者の基準期間における課税売上高の計算の特例
の規定に準じて計算した金額となります。

特定期間における課税売上高

消費税法施行令を確認してみましょう。

2 固有事業者(法第十五条第四項に規定する固有事業者をいう。以下第八項までにおいて同じ。)に係る同条第七項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる金額の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 固有事業者の固有事業年度等(個人事業者である固有事業者のその年又は法人である固有事業者のその事業年度をいう。以下この号において同じ。)に係る法第九条の二第一項に規定する特定期間における課税売上高 次に掲げる金額の合計額
イ 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間(法第九条の二第四項に規定する特定期間をいう。以下この号において同じ。)における課税売上高として同条第二項の規定により計算した同項に規定する残額(同条第三項の規定の適用がある場合には、当該特定期間中に支払つた給与等金額(同項に規定する給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものをいう。ロにおいて同じ。)の合計額)
ロ 当該固有事業者に係る各法人課税信託(法第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。以下この項、次項及び第六項第七号において同じ。)の受託事業者(同条第三項に規定する受託事業者をいう。以下この項、第六項及び第七項において同じ。)の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該金額のうちその計算の基礎となつた期間の月数が当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間の月数を超えるものである場合には、当該金額をその計算の基礎となつた期間の月数で除し、これに当該特定期間の月数を乗じて計算した金額)の合計額
(1) 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間中に当該受託事業者の準特定期間(当該受託事業者の事業年度(六月以下であるものを除く。)開始の日以後六月の期間をいい、当該六月の期間の末日を第二十条の六第一項に規定する六月の期間の末日とみなした場合において同項各号に掲げる場合に該当するときは同項の規定によりみなされた期間とする。(1)において同じ。)の末日が到来する場合 当該準特定期間における課税売上高(当該準特定期間を法第九条の二第二項に規定する特定期間とみなした場合における同項に規定する残額をいい、当該固有事業者のイの残額の計算につき同条第三項の規定の適用がある場合には当該準特定期間中に支払つた給与等金額の合計額とする。)
(2) 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間中に終了した当該受託事業者の各事業年度がある場合((1)に該当する場合を除く。) 当該各事業年度における課税売上高(当該固有事業者のイの残額の計算につき法第九条の二第三項の規定の適用がある場合には、当該各事業年度中に支払つた給与等金額の合計額)の合計額
以下省略
消費税法施行令第27条第2項、施行日令和6年4月1日

長い規定のため、確認する前に整理してみます。

1号、特定期間における課税売上高=イ+ロ

イ、固有事業者の固有事業年度等の特定期間における課税売上高として一定の方法で計算した残額

ロ、固有事業者の各法人課税信託の受託事業者について一定の方法で計算した金額の合計額

固有事業者の計算

イの規定を確認してみましょう。

イ 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間(法第九条の二第四項に規定する特定期間をいう。以下この号において同じ。)における課税売上高として同条第二項の規定により計算した同項に規定する残額(同条第三項の規定の適用がある場合には、当該特定期間中に支払つた給与等金額(同項に規定する給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものをいう。ロにおいて同じ。)の合計額)

「同条(消費税法第9条の2)第2項の規定により計算した同項に規定する残額」とありますので、規定を確認してみましょう。

2 前項に規定する特定期間における課税売上高とは、当該特定期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した金額の合計額を控除した残額をいう。
一 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額
二 特定期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額

消費税法第9条の2第2項、施行日令和6年4月9日

特定期間中の税抜き純課税売上高のことです。

「同条第三項の規定の適用がある場合には、~」とありますので、
売上ではなく給与等で判定できます。

受託事業者の計算

ロの規定を確認してみましょう。

ロ 当該固有事業者に係る各法人課税信託(法第十五条第一項に規定する法人課税信託をいう。以下この項、次項及び第六項第七号において同じ。)の受託事業者(同条第三項に規定する受託事業者をいう。以下この項、第六項及び第七項において同じ。)の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該金額のうちその計算の基礎となつた期間の月数が当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間の月数を超えるものである場合には、当該金額をその計算の基礎となつた期間の月数で除し、これに当該特定期間の月数を乗じて計算した金額)の合計額
(1) 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間中に当該受託事業者の準特定期間(当該受託事業者の事業年度(六月以下であるものを除く。)開始の日以後六月の期間をいい、当該六月の期間の末日を第二十条の六第一項に規定する六月の期間の末日とみなした場合において同項各号に掲げる場合に該当するときは同項の規定によりみなされた期間とする。(1)において同じ。)の末日が到来する場合 当該準特定期間における課税売上高(当該準特定期間を法第九条の二第二項に規定する特定期間とみなした場合における同項に規定する残額をいい、当該固有事業者のイの残額の計算につき同条第三項の規定の適用がある場合には当該準特定期間中に支払つた給与等金額の合計額とする。)
(2) 当該固有事業者の固有事業年度等に係る特定期間中に終了した当該受託事業者の各事業年度がある場合((1)に該当する場合を除く。) 当該各事業年度における課税売上高(当該固有事業者のイの残額の計算につき法第九条の二第三項の規定の適用がある場合には、当該各事業年度中に支払つた給与等金額の合計額)の合計額

(1)の場合と(2)の場合で分かれます。

(1)の内容
固有事業者の固有事業年度等の特定期間中に
受託事業者の特定期間(準特定期間)の末日が到来する場合、
「準特定期間における税抜き純課税売上高」を計算する必要があります。
給与で判定することも可能です。

受託事業者の特定期間がある場合は、その期間で計算する。
という意味です。

(2)の内容
固有事業者の固有事業年度等の特定期間中に終了した
受託事業者の各事業年度がある場合、
「各事業年度における税抜き純課税売上高」を計算する必要があります。
給与で判定することも可能です。

受託事業者の特定期間がない場合であっても、
事業年度があるときは、その期間で計算する。
という意味です。

(1)の特定期間と(2)の事業年度が重複する場合は、
(1)の特定期間の計算が優先となります。

受託事業者の特定期間の月数>固有事業者の特定期間の月数の場合は、
売上や給与を固有事業者の特定期間の月数に換算する必要があります。

参考規定

各事業年度における課税売上高については、
別の規定で定義されています。

(法人課税信託の固有事業者の基準期間における課税売上高等の特例)
第二十七条 法第十五条第四項第二号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の固有事業者のその課税期間の基準期間の初日から同日以後一年を経過する日までの間に終了した同号の受託事業者の各事業年度における課税売上高(第二十二条第一項に規定する各事業年度における課税売上高をいう。次項において同じ。)の合計額(当該受託事業者の各事業年度の月数の合計数が十二を超える場合には、当該合計額を当該合計数で除し、これに十二を乗じて計算した金額)とする。

消費税法施行令第27条第1項、施行日令和6年4月1日

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