法人課税信託の受託者が複数いる場合の消費税


今回は、法人課税信託の受託者が複数いる場合の消費税を確認してみましょう。

メインの受託者は誰か

1つの法人課税信託について受託者が2人以上いる場合、
信託事務を主宰する受託者(主宰受託者)が
信託に関する資産を持っているものとして、消費税法が適用されます。
信託に関する取引も主宰受託者の取引となります。

税法では、主宰受託者の信託資産等として取り扱われますが、
税法以外(信託法など)では、そうではないことになります。

確認してみますと信託法では、
信託財産は合有という特殊な関係になります。

受託者が2人以上いる場合の信託事務の処理については、
受託者の過半数(多数決)により決めます。

多数決だと煩雑なので、税法上は、
主宰受託者(メイン、1人)の資産や取引としてまとめることにしています。

主宰受託者A(メイン) → 信託資産等として取り扱う → 消費税法を適用
受託者B(サブ) → 信託資産等なし
受託者C(サブ) → 信託資産等なし

受託者Bと受託者Cの取引は、主宰受託者Aにまとめられます。
仮に、主宰受託者Aが消費税を納めない場合、
受託者Bも受託者Cも消費税を納めないことになるため、
受託者Bと受託者Cには、連帯納付の責任が生じます。

徴収するのは誰か

サブの受託者に連帯納付の責任がありますが、
誰が消費税を徴収するのかについての規定がありません。
そのため、読替規定が規定されています。

連帯納付に関する読替規定を確認してみましょう。

14 前項に規定する消費税を主宰受託者以外の受託者から徴収する場合における国税通則法第四十三条第一項(国税の徴収の所轄庁)の規定の適用については、同項中「国税の徴収」とあるのは「消費税法第十五条第一項(法人課税信託の受託者に関するこの法律の適用)に規定する法人課税信託の同条第十二項に規定する主宰受託者(以下この項において「主宰受託者」という。)以外の受託者(以下この項において「連帯受託者」という。)の同条第十三項に規定する連帯納付の責任に係る消費税の徴収」と、「その国税の納税地」とあるのは「当該消費税の納税地又は当該連帯受託者が当該法人課税信託の主宰受託者であつたとした場合における当該消費税の納税地」とする。

消費税法第15条第14項、施行日令和6年4月9日

読み替える前に、国税通則法第43条第1項を確認してみましょう。

(国税の徴収の所轄庁)
第四十三条 国税の徴収は、その徴収に係る処分の際におけるその国税の納税地(以下この条において「現在の納税地」という。)を所轄する税務署長が行う。ただし、保税地域からの引取りに係る消費税等その他税関長が課する消費税等又は国際観光旅客税(国際観光旅客税法第十六条第一項(国内事業者による特別徴収等)の規定により徴収して納付すべきものを除き、その滞納処分費を含む。)については、これらの国税の納税地を所轄する税関長が行う。

国税通則法第43条第1項、施行日令和6年6月14日

国税の徴収は、徴収時の納税地(例えば、住所地や本店所在地)を
所轄する税務署長が行います。

読替後の規定を確認してみましょう。

(国税の徴収の所轄庁)
第四十三条 消費税法第十五条第一項(法人課税信託の受託者に関するこの法律の適用)に規定する法人課税信託の同条第十二項に規定する主宰受託者(以下この項において「主宰受託者」という。)以外の受託者(以下この項において「連帯受託者」という。)の同条第十三項に規定する連帯納付の責任に係る消費税の徴収は、その徴収に係る処分の際における当該消費税の納税地又は当該連帯受託者が当該法人課税信託の主宰受託者であつたとした場合における当該消費税の納税地(以下この条において「現在の納税地」という。)を所轄する税務署長が行う。ただし、保税地域からの引取りに係る消費税等その他税関長が課する消費税等又は国際観光旅客税(国際観光旅客税法第十六条第一項(国内事業者による特別徴収等)の規定により徴収して納付すべきものを除き、その滞納処分費を含む。)については、これらの国税の納税地を所轄する税関長が行う。

連帯納付の責任があるサブの受託者を「連帯受託者」といいます。
連帯受託者の消費税の徴収については、
・主宰受託者(メイン)の納税地
・連帯受託者(サブ)を主宰受託者と仮定した場合の納税地
を所轄する税務署長が行います。

主宰受託者と仮定しますので、
連帯受託者自身の納税地と異なることがあります。

参考規定

主宰受託者の信託資産等とみなす。

12 一の法人課税信託の受託者が二以上ある場合には、各受託者の当該法人課税信託に係る信託資産等は、当該法人課税信託の信託事務を主宰する受託者(以下この条において「主宰受託者」という。)の信託資産等とみなして、この法律の規定を適用する。

消費税法第15条第12項、施行日令和6年4月9日

受託者の連帯納付責任

13 前項の規定により主宰受託者の信託資産等とみなされた当該信託資産等に係る消費税については、主宰受託者以外の受託者は、その消費税について、連帯納付の責めに任ずる。

消費税法第15条第13項、施行日令和6年4月9日

政令委任

15 前各項に定めるもののほか、法人課税信託の併合又は分割が行われた場合の仕入れに係る消費税額の計算その他受託事業者又は固有事業者についてのこの法律の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

消費税法第15条第15項、施行日令和6年4月9日

信託法

(信託財産の合有)
第七十九条 受託者が二人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
(信託事務の処理の方法)
第八十条 受託者が二人以上ある信託においては、信託事務の処理については、受託者の過半数をもって決する。

信託法第79条、第80条、施行日令和5年6月14日


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