今回は、賃上げ促進税制の比較月数が異なる場合等と雇用安定助成金額がある場合を確認してみましょう。
雇用安定助成金額がある場合の調整
先に規定を確認してみましょう。
21 法第四十二条の十二の五第一項から第三項までの規定の適用を受けようとする法人が次の各号に掲げる場合に該当する場合において、当該各号に定める金額の計算の基礎となる給与等に充てるための同条第五項第六号イに規定する雇用安定助成金額があるときは、同号ロに掲げる金額は、当該各号に定める金額から当該雇用安定助成金額を控除して計算した同項第十一号に規定する比較雇用者給与等支給額とする。
一 法第四十二条の十二の五第五項第十一号の前事業年度の月数と同号の適用年度の月数とが異なる場合 第十八項第一号又は第二号イ若しくはロの給与等支給額
二 前二項の規定によりみなされた第十二項又は第十四項の規定の適用を受ける場合 第十七項第一号又は前二項の給与等支給額
租税特別措置法施行令第27条の12の5第21項、施行日令和6年9月2日
賃上げ促進税制の
・全企業向け
・中堅企業向け
・中小企業向け
を利用しようとする法人がこの規定の対象となります。
1つ目の要件は、対象となる法人が第1号や第2号(後で確認)に該当する場合です。
2つ目の要件は、「当該各号に定める金額の計算の基礎となる給与等に充てるための同条第五項第六号イに規定する雇用安定助成金額があるとき」です。
当該各号は、第1号や第2号のことです。
第1号や第2号の金額の基礎となる
給与等に充てるための「雇用安定助成金額」があるときは、
支払った給与等から受け取った助成金をマイナスする必要があります。
国や地方公共団体から受け取る
・雇用調整助成金
・産業雇用安定助成金など
を雇用安定助成金額といいます。
例えば
・支払った給与等 1000万円
・受け取った助成金額 100万円
の場合、比較雇用者給与等支給額(前期の給与等)は、
1000万円-100万円=900万円となります。
比較月数が異なる場合(第1号)
1号の規定を確認してみましょう。
一 法第四十二条の十二の五第五項第十一号の前事業年度の月数と同号の適用年度の月数とが異なる場合 第十八項第一号又は第二号イ若しくはロの給与等支給額
比較する月数が異なる場合に、
・第十八項第一号又は第二号イ若しくはロの給与等支給額
から雇用安定助成金額をマイナスします。
第18項は、比較雇用者給与等支給額(前期の給与等)に関する規定です。第1号、第2号イとロには、比較月数が異なる場合の調整方法が規定されています。
そのため、比較月数が異なる場合は、先に給与等を比較するための調整計算をした後に雇用安定助成金額をマイナスすると読めます。
合併や分割があった場合(第2号)
規定を確認してみましょう。
二 前二項の規定によりみなされた第十二項又は第十四項の規定の適用を受ける場合 第十七項第一号又は前二項の給与等支給額
前2項は、
・合併があった場合の比較雇用者給与等支給額の調整計算(第19項)
・分割があった場合の比較雇用者給与等支給額の調整計算(第20項)
のことです。
第12項と第14項は、比較教育訓練費の調整計算に関する規定です。
・合併があった場合の比較教育訓練費の調整計算(第12項)
・分割があった場合の比較教育訓練費の調整計算(第14項)
合併や分割があった場合は、比較する給与等の前提が合併や分割の前後で異なりますので、比較月数が異なる場合と同様に調整計算が必要となります。
合併や分割があった場合の調整計算についても
調整計算した後に受け取った助成金をマイナスすると考えられます。
雇用安定助成金額の控除のタイミング
「そのため、比較月数が異なる場合は、先に給与等を比較するための調整計算をした後に雇用安定助成金額をマイナスすると読めます。」と書きましたが、気になる点がありますので追記します。
別表6(24)付表1を確認してみましょう。
給与等支給額、比較教育訓練費の額及び翌期繰越税額控除限度超過額の計算に関する明細書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2024/pdf/06(24)-f1.pdf
11欄、比較雇用者給与等支給額(判定)の計算式は、
・7欄-8欄+9欄=計算後の金額×10欄(月数調整)
と記載されています。
+9欄で雇用安定助成金額を足し戻しています。
(8欄でマイナスした部分を取り消している。)
12欄、調整比較雇用者給与等支給額の計算式は、
・7欄-8欄=計算後の金額×10欄(月数調整)
と記載されています。
調整比較雇用者給与等支給額の計算では、
9欄の雇用安定助成金額を足し戻しません。
(雇用安定助成金額を含めてマイナスする。)
この結果、雇用安定助成金額をマイナスしてから
月数の調整をしています。
規定を再度確認してみましょう。
カッコ書きで説明を追加しています。
同号ロに掲げる金額(控除額計算の調整比較雇用者給与等支給額)は、当該各号に定める金額(月数調整した後の給与等)から当該雇用安定助成金額を控除して計算した同項第十一号に規定する比較雇用者給与等支給額とする。
と読みますと、
月数調整した後の給与等の金額から受け取った助成金をマイナスして計算した比較雇用者給与等支給額となるため、1000万円(給与等)×12月÷6月(月数調整)-100万円(受け取った助成金)=1900万円となります。
受け取った助成金をマイナスしてから月数調整を行うと
1000万円(給与等)-100万円(受け取った助成金)=900万円×12月÷6月(月数調整)=1800万円となります(別表記載の方法)。
受け取った助成金については、月数調整に関する規定が見当たらないため、
月数調整した後に受け取った助成金をマイナスするように読めます。
参考規定
雇用安定助成金額の定義
雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額をいう。以下この号において同じ。)
租税特別措置法第42条の12の5第5項第6号イ、施行日令和6年9月2日
—
新しいこと
・大根もち