外国を転出した時の有価証券等の取扱い


今回は、外国を転出した時の有価証券等の取扱いを確認してみましょう。

有価証券等

以前、2つの特例を確認しました。
1、国外に転出すると有価証券等を売却したものとして税金がかかる。
(所得税法第60条の2)
2、非居住者に有価証券等を贈与すると売却したものとして税金がかかる。
(所得税法第60条の3)

国外転出時課税といいます。
今回は、外国転出時課税の取扱いを確認してみましょう。

規定はこちら↓

(外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例)
第六十条の四 居住者が外国転出時課税の規定の適用を受けた有価証券等の第六十条の二第四項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する譲渡をした場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その外国転出時課税の規定により課される外国所得税(第九十五条第一項(外国税額控除)に規定する外国所得税をいう。次項及び第三項において同じ。)の額の計算において当該有価証券等の譲渡をしたものとみなして当該譲渡に係る所得の金額の計算上収入金額に算入することとされた金額をもつて、当該有価証券等の取得に要した金額とする。

所得税法第60条の4第1項、施行日令和6年6月12日

「外国」転出時課税という言葉が出てきます。「国外」転出時課税じゃないの?と思いましたが、とりあえず先に進んでみましょう。

「有価証券等の第六十条の二第四項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する譲渡をした場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、」

とありますので、

有価証券等を売却した場合の
・事業所得の金額
・譲渡所得の金額
・雑所得の金額
の計算に関する内容だとわかります。

続きを確認してみましょう。

「その外国転出時課税の規定により課される外国所得税(第九十五条第一項(外国税額控除)に規定する外国所得税をいう。次項及び第三項において同じ。)の額の計算において当該有価証券等の譲渡をしたものとみなして当該譲渡に係る所得の金額の計算上収入金額に算入することとされた金額をもつて、当該有価証券等の取得に要した金額とする。」

外国所得税の計算で有価証券等を売却したものとして計算したときの収入金額(売却金額)をその有価証券等の購入金額として取り扱う。

という内容が規定されています。

未決済の信用取引等とデリバティブ取引

外国転出時課税についても、有価証券等だけではなく
・未決済の信用取引等
・未決済のデリバティブ取引
の2つが規定されています。

規定はこちら↓

2 居住者が外国転出時課税の規定の適用を受けた未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引の決済をした場合における事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、当該決済によつて生じた利益の額若しくは損失の額(以下この項において「決済損益額」という。)からその外国転出時課税の規定により課される外国所得税の額の計算において当該未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の決済をしたものとみなして算出された利益の額に相当する金額を減算し、又は当該決済損益額に当該外国所得税の額の計算において当該決済をしたものとみなして算出された損失の額に相当する金額を加算する。

所得税法第60条の4第2項、施行日令和6年6月12日

外国転出時課税の対象となった
・未決済の信用取引等
・未決済のデリバティブ取引
を実際に決済した場合には、

実際の決済損益-外国転出時課税の利益
実際の決済損益+外国転出時課税の損失

とすると規定されています。

損益を2重に計算しないようにするための規定です。

外国転出時課税って何?

第1項が有価証券等の取扱い、
第2項が未決済の信用取引等とデリバティブ取引の取扱い、
外国転出時課税は第3項に規定されています。

規定はこちら↓

3 前二項に規定する外国転出時課税の規定とは、外国における第六十条の二第一項に規定する国外転出に相当する事由その他政令で定める事由が生じた場合に同項から同条第三項までの規定に相当する当該外国の法令の規定によりその有している有価証券等又は契約を締結している未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の譲渡又は決済があつたものとみなして外国所得税を課することとされている場合における当該外国の法令の規定をいう。

所得税法第60条の4第3項、施行日令和6年6月12日

外国転出時課税は、外国の国外転出時課税を指します。

まとめると

外国の国外転出時課税(外国転出時課税)の対象となった有価証券等を実際に売却した場合の購入金額は、実際の購入金額ではなく、外国転出時課税で計算した収入金額とする必要があります。

損益を2重に計算しないようにするためです。

例えば、次の場合で確認してみましょう。
・外国で購入した有価証券等の金額 1000万円
・外国転出時課税の時価 1500万円
・実際の売却金額 2100万円

外国転出時課税
1,500万円-1,000万円=500万円が外国の所得税の対象となります。

実際に売却した場合
2,100万円-1,500万円=600万円が所得税の対象となります。

実際に購入した金額は1000万円ですが、外国転出時課税の対象となる場合は収入金額(売却金額)1500万円に更新されますので、実際に売却したときの購入金額は1500万円となります。

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