所得税のリース譲渡はどう変わる?


今回は、所得税のリース譲渡がどう変わるのかを確認してみましょう。

経過措置の取扱い

リース会計基準の変更に併せて、所得税の取扱いも変わります。具体的には、リース資産を販売した場合(リース譲渡)の特例が廃止されます。

急に取扱いが変わると取引や所得税に影響が生じるため、一定の期間、例外が設けられています。経過措置といいます。

今回は、経過措置に関する法案を確認してみましょう。

(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期に関する経過措置)
第四条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に第一条の規定による改正前の所得税法(以下「旧所得税法」という。)第六十五条第一項に規定するリース譲渡を行った個人の令和七年分以前の所得税については、なお従前の例による。

所得税法等の一部を改正する法律案

法律の施行日より前にリース譲渡を行った場合については、令和7年分以前の所得税については、改正前の法律が適用できます。

「令和7年分以前」と規定されているため、令和8年分以後については取扱いが変わります。

リース譲渡を行ったことがある場合

法案を確認してみましょう。

2 施行日前に旧所得税法第六十五条第一項に規定するリース譲渡を行ったことがある個人(施行日前に行われた同項に規定するリース譲渡に係る契約の移転を受けた個人を含む。)の令和八年以後の各年分の旧リース譲渡(令和九年以前の各年において行われた同項に規定するリース譲渡をいう。以下この条において同じ。)に係る事業所得の金額の計算については、旧所得税法第六十五条(旧所得税法第百六十五条第一項の規定により準じて計算する場合を含む。)の規定は、なおその効力を有する。この場合において、旧所得税法第六十五条第一項ただし書中「場合」とあるのは「場合(所得税法等の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号。以下この項及び次項において「令和七年改正法」という。)附則第四条第三項第一号(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期に関する経過措置)に掲げる場合に該当する場合を除く。)又は令和七年改正法附則第四条第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた場合」と、「の年分」とあるのは「の年分又は同条第三項に規定する基準年以後の年分」と、同条第二項中「算入する。」とあるのは「算入する。ただし、当該リース譲渡に係る収入金額及び費用の額につき、同日の属する年の翌年以後のいずれかの年において令和七年改正法附則第四条第三項又は第四項の規定の適用を受けた場合は、同条第三項に規定する基準年以後の年分の事業所得の金額の計算については、この限りでない。」とする。

所得税法等の一部を改正する法律案

施行日より前にリース譲渡を行ったことがある個人が対象です。
(行ったことがない個人は対象外)

令和8年以後の各年分の旧リース譲渡(令和9年以前の各年のリース譲渡)に係る事業所得の金額の計算については、削除予定の規定(リース譲渡の特例)の効力が残ります。

急に取扱いが変わると取引や所得税に影響が生じるため、令和8年分と令和9年分については、削除されなかったものとして特例が適用できることになります。

令和7年の改正を考慮する必要があるため、読み替えが必要です。

延払基準の特例の読替え

延払基準の特例を読み替えてみましょう。

(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期)
第六十五条 居住者が、第六十七条の二第三項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引による同条第一項に規定するリース資産の引渡し(以下この条において「リース譲渡」という。)を行つた場合において、そのリース譲渡に係る収入金額及び費用の額につき、そのリース譲渡の日の属する年以後の各年において政令で定める延払基準の方法により経理したとき(当該リース譲渡につき次項の規定の適用を受ける場合を除く。)は、その経理した収入金額及び費用の額は、当該各年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。ただし、当該リース譲渡に係る収入金額及び費用の額につき、同日の属する年の翌年以後のいずれかの年において当該延払基準の方法により経理しなかつた場合(所得税法等の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号。以下この項及び次項において「令和七年改正法」という。)附則第四条第三項第一号(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期に関する経過措置)に掲げる場合に該当する場合を除く。)又は令和七年改正法附則第四条第三項若しくは第四項の規定の適用を受けた場合は、その経理しなかつた年の翌年分以後の年分又は同条第三項に規定する基準年以後の年分の事業所得の金額の計算については、この限りでない。

1、延払基準の方法により経理しなかった場合
 令和7年改正法の附則第4条第3項第1号に掲げる場合に該当する場合を除く。
2、令和7年改正法附則第4条第3項、第4項
の適用を受けた場合は、

1、経理しなかった年の翌年分以後の年分
2、同条(附則第4条)第3項に規定する基準年以後の年分
の事業所得の金額の計算にについては、この限りでない。

読替えにより、リース譲渡の特例が適用されない場合の要件が追加されています。

利息相当額の特例の読替え

利息相当額の特例を読み替えてみましょう。

2 居住者がリース譲渡を行つた場合には、その対価の額を政令で定めるところにより利息に相当する部分とそれ以外の部分とに区分した場合における当該リース譲渡の日の属する年以後の各年の収入金額及び費用の額として政令で定める金額は、当該各年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。ただし、当該リース譲渡に係る収入金額及び費用の額につき、同日の属する年の翌年以後のいずれかの年において令和七年改正法附則第四条第三項又は第四項の規定の適用を受けた場合は、同条第三項に規定する基準年以後の年分の事業所得の金額の計算については、この限りでない。

・令和7年改正法附則第4条第3項
・令和7年改正法附則第4条第4項
の規定の適用を受けた場合は、同条(附則第4条)第3項に規定する基準年以後の年分の事業所得の金額については、この限りでない。

この規定もリース譲渡の特例が適用されない場合の要件が追加されています。共通する規定は、附則第4条第3項と第4項です。

令和7年改正法附則第4条第3項

令和7年改正法附則第4条第3項を確認してみましょう。

3 前項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧所得税法(以下この条において「旧効力所得税法」という。)第六十五条第一項本文又は第二項本文(旧所得税法第百六十五条第一項の規定によりこれらの規定に準じて計算する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用を受ける個人のその適用に係る旧リース譲渡に係る収入金額及び費用の額が次の各号に掲げる場合に該当する場合には、当該収入金額及び費用の額(当該各号に定める年の前年以前の各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額及び必要経費に算入されるものを除く。次項においてそれぞれ「未計上収入金額」及び「未計上経費額」という。)は、当該各号に定める年(次項及び第五項において「基準年」という。)の年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額及び必要経費に算入する。
一 当該旧リース譲渡(旧効力所得税法第六十五条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。)に係る収入金額及び費用の額につき令和八年又は令和九年において同項に規定する延払基準の方法により経理しなかった場合 その経理しなかった年
二 当該旧リース譲渡に係る収入金額及び費用の額のうち、令和九年までの各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額及び必要経費に算入されなかったものがある場合(次に掲げる場合に該当する場合を除く。) 令和十年
イ 前号に掲げる場合
ロ 当該旧リース譲渡(旧効力所得税法第六十五条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。)に係る収入金額及び費用の額につき令和十年において同項に規定する延払基準の方法(同年以後の各年において当該旧リース譲渡の対価の額のうちに含まれる利息に相当する金額のみを当該各年の収入金額とする方法に限る。)により経理した場合

施行日にリース譲渡の特例が削除されますが、経過措置に該当する場合はリース譲渡の特例の効力が残ります。経過措置により効力が残っているリース譲渡の特例を利用する個人の取扱いについて規定されています。

旧リース譲渡には、収入金額と費用の額があり、
・第1号、令和8年か令和9年に延払基準の方法を止めた場合
・第2号、令和9年までに未計上がある場合(一定の場合を除く。)
に該当する場合には、
・未計上収入金額
・未計上経費額
は、「基準年」に収入金額と費用の額を計上する必要があります。

第1号の基準年は、経理を止めた年です。
令和8年に止めた場合は令和8年、令和9年に止めた場合は令和9年です。

第2号の基準年は、令和10年です。

一定の場合(イとロ)を確認してみましょう。
1つ目は、令和8年か令和9年に経理を止めた場合です。
2つ目は、令和10年に延払基準の方法により経理した場合です。
ただし、利息のみを収入金額とする方法に限定されます。

参考情報

第1号は、「旧効力所得税法第六十五条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。」とあるので、経理したか経理しなかったかで取扱いが異なります。

第2号は、「旧効力所得税法第六十五条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。」がないので、経理方法は関係しません。

第2号のイは、「前号に掲げる場合」とあるので、経理方法が関係します。

第2号のロは、「旧効力所得税法第六十五条第一項本文の規定の適用に係るものに限る。」とあるので、経理したか経理しなかったかで取扱いが異なります。

旧効力所得税法第65条第1項本文(延払基準、賦払金割合、リース譲渡)は、経理方法が要件となります。

旧効力所得税法第65条第2項本文(20%相当額を利息相当額とする特例)は、経理方法が要件とならず、確定申告書に計算明細の記載が要件となります。

それぞれ要件が異なるため、経過措置を利用する場合は確認しておきましょう。

まとめ
・令和8年に延払経理を止めた場合は、令和8年で計上
・令和9年に延払経理を止めた場合は、令和9年で計上
・令和8年と令和9年に延払経理を止めなかった場合は、令和10年で計上
・ただし、令和10年に延払経理の方法を変更した場合は、この経過措置(第3項)の対象外のため、他の経過措置(第4項)に該当しない場合は、旧リース譲渡の特例が継続します。

今回確認した経過措置は、原則的なもので、
・法人税の5年均等処理
・消費税の10年均等処理
のような取扱いはありません。

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