仮装経理で余分に支払った法人税を還付請求できる場合


今回は、仮装経理で余分に支払った法人税を還付請求できる場合を確認してみましょう。

内容

法人が税金の計算を誤って余分に法人税を支払った場合、法人税の還付請求ができます。更正の請求といいます。

ただし、余分に支払った理由が粉飾決算など(仮装経理)の場合は、原則として一定の要件を満たすまで、法人税が還付されません。

原則として法人税は還付されませんが、一定の事実が生じた場合には還付請求ができます。

参考規定はこちら↓

4 適用法人につき次に掲げる事実が生じた場合には、当該適用法人は、当該事実が生じた日以後一年以内に、納税地の所轄税務署長に対し、その適用に係る仮装経理法人税額(既に前二項又は第七項の規定により還付されるべきこととなつた金額及び第七十条の規定により控除された金額を除く。第六項及び第七項において同じ。)の還付を請求することができる。
一 更生手続開始の決定があつたこと。
二 再生手続開始の決定があつたこと。
三 前二号に掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

法人税法第135条第4項、令和7年4月1日施行

仮装経理をした法人で法人税の還付が制限されているものを「適用法人」といいます。

適用法人は、一定の事実が生じた日から1年以内に法人税の還付請求ができます。

一定の事実は、次の3つです。
1、更生手続開始の決定
2、再生手続開始の決定
3、特別清算開始の決定、1や2に準ずる事実

法人税を還付しないペナルティより、
特別に法人税を還付して事業のやり直しや清算を優先する規定です。

この法人税の還付請求については、更正の請求と異なり、還付請求書を事実が生じた日から1年以内に提出する必要があります。

参考情報

国税庁、C1-54 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額・地方法人税額の還付の請求
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_72.htm

還付請求書については、
・法人税
・地方法人税
がセットになっています。

令和8年4月1日から防衛特別法人税が始まりますので、防衛特別法人税の欄も追加されるのでしょう。

還付請求書を提出した後は税務署長の調査があり、調査結果は書面で通知されます。

参考規定

更生手続開始や再生手続開始の決定に準ずる事実

2 法第百三十五条第四項第三号に規定する政令で定める事実は、次に掲げる事実とする。
一 特別清算開始の決定があつたこと。
二 第二十四条の二第一項(再生計画認可の決定に準ずる事実等)に規定する事実
三 法令の規定による整理手続によらない負債の整理に関する計画の決定又は契約の締結で、第三者が関与する協議によるものとして財務省令で定めるものがあつたこと(前号に掲げるものを除く。)

法人税法施行令第175条第2項、令和7年4月1日施行

財務省令とありますので、法人税法施行規則を確認してみましょう。

(法令の規定による整理手続によらない負債整理計画の決定等)
第六十条の二 令第百七十五条第二項第三号(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う還付特例対象法人税額等の範囲)に規定する財務省令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
二 行政機関、金融機関その他第三者のあつせんによる当事者間の協議による前号に準ずる内容の契約の締結

法人税法施行規則第60条の2第1項、令和6年11月18日施行

法令の手続きをとらずに、当事者で負債の整理をするような場合です。

還付請求書を提出する必要があります。

6 第四項の規定による還付の請求をしようとする適用法人は、その還付を受けようとする仮装経理法人税額、その計算の基礎その他財務省令で定める事項を記載した還付請求書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

法人税法施行令第175条第6項、令和7年4月1日施行

還付請求書を提出した後は調査があります。

7 税務署長は、前項の還付請求書の提出があつた場合には、その請求に係る事実その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした適用法人に対し、仮装経理法人税額を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する。

法人税法施行令第175条第7項、令和7年4月1日施行

PAGE TOP