今回は、相続した人が18歳未満の場合の特例(未成年者控除)を確認してみましょう。
18歳未満の場合、相続税が減る。
未成年者控除の主な要件は、次の3つです。
1、相続や遺贈により財産を取得した。
2、民法で規定されている相続人(法定相続人)に該当する。
3、18歳未満であること。
要件を満たす場合は、
・100,000円×18歳に達するまでの年数(端数は1年に切上げ)
の控除(未成年者控除)を受けることが可能です。
控除しきれない場合
相続税(例、100万円)より控除額(例、160万円)が多く、マイナスしきれない場合(残り60万円)はどうなるでしょうか?
マイナスしきれない金額(残り60万円)は、18歳未満の子の扶養義務者(配偶者や兄弟姉妹など)の相続税からマイナスが可能です。
参考規定
2 前項の規定により控除を受けることができる金額がその控除を受ける者について第十五条から前条までの規定により算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額は、政令で定めるところにより、その控除を受ける者の扶養義務者が同項の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産の価額について第十五条から前条までの規定により算出した金額から控除し、その控除後の金額をもつて、当該扶養義務者の納付すべき相続税額とする。
相続税法第19条の3第2項、令和7年6月1日施行
具体的な計算方法は、施行令を確認してみましょう。
(扶養義務者の未成年者控除)
相続税法施行令第4条の3、令和7年4月1日施行
第四条の三 法第十九条の三第二項の規定による控除を受けることができる扶養義務者が二人以上ある場合においては、各扶養義務者が同項の規定による控除を受けることができる金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
一 扶養義務者の全員が、協議によりその全員が控除を受けることができる金額の総額を各人ごとに配分してそれぞれその控除を受ける金額を定め、当該控除を受ける金額を記載した法第二十七条又は第二十九条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書を含む。)を提出した場合 これらの申告書に記載した金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 扶養義務者の全員が控除を受けることができる金額の総額を、各人が法第十九条の三第二項に規定する相続又は遺贈により取得した財産の価額につき法第十五条から第十九条の二までの規定により算出した金額によりあん分して計算した金額
扶養義務者が2人以上いる場合の控除額の分け方が規定されています。
1、扶養義務者の全員が協議して、控除額を申告書に記載する方法
2、1以外の場合、控除額を取得した財産の金額に応じて按分する方法
参考規定など
未成年者控除
第十九条の三 相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)に該当し、かつ、十八歳未満の者である場合においては、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円にその者が十八歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
相続税法第19条の3第1項、令和7年6月1日施行
相続税法の扶養義務者の定義
(定義)
相続税法第1条の2、令和7年6月1日施行
第一条の二 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 扶養義務者 配偶者及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条(扶養義務者)に規定する親族をいう。
民法の扶養義務者
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
民法第877条第1項、令和6年5月24日施行
相続税法の扶養義務者
=配偶者+民法の扶養義務者に規定する親族(直系血族と兄弟姉妹)
扶養義務者の範囲は、民法上の親族の範囲より狭くなっています。
第15条から前条(第19条の2)までの規定
・第15条、遺産に係る基礎控除
・第16条、相続税の総額
・第17条、各相続人等の相続税額
・第18条、相続税額の加算
・第19条、相続開始前7年以内に贈与があつた場合の相続税額
・第19条の2、配偶者に対する相続税額の軽減
2025/6/2、15:22、追加しました。
特別の事情がある場合は、3親等内の親族も扶養義務者に含まれます。
相続税法基本通達
(「扶養義務者」の意義)
1の2-1 相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条((扶養義務者))の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)
相続税法基本通達を確認しますと、生計を一(サイフが同じ)にする3親等内の親族も扶養義務者に含まれます。
相続税法の扶養義務者=
・配偶者
・民法の扶養義務者に規定する親族(直系血族と兄弟姉妹)
・家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族
・3親等内の親族で生計を一にする者