今回は、贈与税を相続のときに精算する方法(相続時精算課税)を確認してみましょう。
相続時精算課税は、選択できる。
先に規定を確認してみましょう。
(相続時精算課税の選択)
相続税法第21条の9第1項、令和7年6月1日施行
第二十一条の九 贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年一月一日において十八歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において六十歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、この節の規定の適用を受けることができる。
財産をもらった人の要件は、次の3つです。
・贈与により財産を受け取っている。
・贈与した人の推定相続人(相続のときに相続人となるべき人)に該当する。
・贈与した人の子や孫など(直系卑属)で、1月1日時点で18才以上。
贈与した人の要件は、1月1日時点で60才以上であることです。
要件を満たす場合に相続時精算課税が選択できます。
届出書の提出が必要
相続時精算課税を選択する場合は、贈与税の確定申告の期間内(翌年2月1日から3月15日)までに「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
参考リンク、国税庁、令和6年分贈与税の申告書等の様式一覧
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/yoshiki2024/01.htm
25番に相続時精算課税選択届出書(令和6年分以降用)があります。
参考規定
2 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第二十八条第一項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
相続税法第21条の9第2項、令和7年6月1日施行
暦年課税に戻れない。
先に規定を確認してみましょう。
3 前項の届出書に係る贈与をした者からの贈与により取得する財産については、当該届出書に係る年分以後、前節及びこの節の規定により、贈与税額を計算する。
相続税法第21条の9第3項、令和7年6月1日施行
「相続時精算課税選択届書に記載した贈与者」から贈与で受け取った財産については、相続時精算課税を選択した年分以後は、相続時精算課税の計算方法で贈与税を計算する必要があります。
例えば、令和7年分の贈与から相続時精算課税を選択した場合は、令和7年分以後の贈与については、相続時精算課税の計算方法で贈与税を計算します。
(通常の贈与税の計算が選べなくなります。)
途中で推定相続人となった場合
先に規定を確認してみましょう。
4 その年一月一日において十八歳以上の者が同日において六十歳以上の者からの贈与により財産を取得した場合にその年の中途においてその者の養子となつたことその他の事由によりその者の推定相続人となつたとき(配偶者となつたときを除く。)には、推定相続人となつた時前にその者からの贈与により取得した財産については、第一項の規定の適用はないものとする。
相続税法第21条の9第4項、令和7年6月1日施行
1年1月時点で
・財産をもらった人の要件は、18才以上の人
・財産を贈与する人の要件は、60才以上の人
が相続時精算課税の要件です。
年の途中で推定相続人(例、養子縁組で養子となる等)となった場合は、推定相続人となる前の贈与については、相続時精算課税で計算できないため留意しましょう。
途中で推定相続人でなくなった場合
先に規定を確認してみましょう。
5 第二項の届出書を提出した者(以下「相続時精算課税適用者」という。)が、その届出書に係る第一項の贈与をした者(以下「特定贈与者」という。)の推定相続人でなくなつた場合においても、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産については、第三項の規定の適用があるものとする。
相続税法第21条の9第5項、令和7年6月1日施行
財産をもらった人で相続時精算課税選択届書を提出した人を「相続時精算課税適用者」、届出書に記載した贈与者を「特定贈与者」といいます。
相続時精算課税適用者(例、養子)が特定贈与者の推定相続人でなくなった場合(例、離縁で親族関係が終了)であっても、相続時精算課税の計算方法が継続します。
相続時精算課税は、途中で止められない。
相続時精算課税選択届書を提出した人は、相続時精算課税選択届出書を取り下げる(撤回)ができません。相続時精算課税を一度選択すると、暦年贈与の計算ができなくなります。
参考規定
6 相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない。
相続税法第21条の9第6項、令和7年6月1日施行
まとめ
1、相続時精算課税は、要件を満たせば選択できる。
2、相続時精算課税を選択する場合は、届出書の提出が必要。
3、相続時精算課税を選択すると、暦年贈与に戻れない。
4、途中で推定相続人になった場合は、途中から相続時精算課税制度が始まる。
5、途中で推定相続人でなくなったとしても、暦年課税に戻れない。
6、相続時精算課税は、取り下げできない。