相続時精算課税を選択した場合の相続税の計算


今回は、相続時精算課税を選択した場合の相続税の計算を確認してみましょう。

相続などで財産を取得した場合

贈与税の計算は、2つあります。
1、一般贈与
2、相続時精算課税を選択した贈与(支払った贈与税を相続時に精算する。)

1の贈与税については、原則として相続税の計算で精算できません。贈与税と相続税は別の税金だからです。

2の相続時精算課税を選択した場合の贈与税については、相続税の計算で精算が可能です。

贈与税を相続税の計算で精算するためには、贈与で受け取った財産を相続の計算で追加する必要があります。

参考規定を確認してみましょう。

第二十一条の十五 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるもの(第二十一条の二第一項から第三項まで、第二十一条の三、第二十一条の四及び第二十一条の十の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額を相続税の課税価格に加算した価額をもつて、相続税の課税価格とする。

相続税法第21条の15第1項、令和7年6月1日施行

「特定贈与者」は、相続時精算課税を選択した人(例、子)に贈与した人(例、親)、「相続や遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者」は、相続時精算課税を選択した人(例、子)をいいます。

「特定贈与者(例、親)からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるもの」は、相続時精算課税の対象となる財産のことです。

相続時精算課税の対象となる財産の金額から「相続時精算課税の贈与税の基礎控除(110万円)」をマイナスした残りが相続税の計算に追加されます。

相続などで財産を取得しなかった場合

相続などで財産を取得しなかった場合は、別の規定となります。

参考規定を確認してみましょう。

第二十一条の十六 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第一節の規定を適用する。

相続税法第21条の16第1項、令和7年6月1日施行

「特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた」とあります。

「特定贈与者(例、親)からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるもの」は、相続時精算課税の対象となる財産のことです。

相続などで財産を取得しなかったとしても、特定贈与者から相続により取得したものとして取り扱われます。

第1節は、相続税の計算に関する規定です。
・第11条、相続税の課税
・第11条の2、相続税の課税価格
・第12条、相続税の非課税財産
・第13条、債務控除
・第14条
・第15条、遺産に係る基礎控除
・第16条、相続税の総額
・第17条、各相続人等の相続税額
・第18条、相続税額の加算
・第19条、相続開始前7年以内に贈与があつた場合の相続税額
・第19条の2、配偶者に対する相続税額の軽減
・第19条の3、未成年者控除
・第19条の4、障害者控除
・第20条、相次相続控除
・第20条の2、在外財産に対する相続税額の控除

実際に相続などにより財産を取得していませんが、贈与で受け取った財産を相続で受け取ったものとして相続税を計算する必要があります。

相続税の計算に含めないものもある。

相続などで財産を取得した場合のカッコ書きを確認してみましょう。

(第二十一条の二第一項から第三項まで、第二十一条の三、第二十一条の四及び第二十一条の十の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)

第21条の2、贈与税が課税される金額
・第1項、居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者
・第2項、居住制限納税義務者、非居住制限納税義務者
・第3項、第1項と第2項が混在する場合
・第4項、対象外

第21条の3、贈与税がかからない場合
第21条の4、特定障がい者の贈与税がかからない場合
第21条の10、相続時精算課税を選択した場合に贈与税が課税される金額

上記の規定により、贈与税の計算に含まれるものに限り、相続税の計算に追加されます。贈与税の計算に含まれないもの(例、生活費など)については、相続税の計算に追加する必要はありません。

まとめ

1、相続などで財産を受け取った場合は、
相続で受け取った財産+贈与で受け取った財産で相続税を計算します。
(支払った贈与税を相続時に精算するため)

2、相続などで財産を受け取らなった場合は、
贈与で受け取った財産で相続税を計算します。
(支払った贈与税を相続時に精算するため)

3、贈与税がかからない場合(例、非課税となる生活費など)は、
贈与で受け取ったとしても相続税の計算に追加する必要はありません。


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