今回は、相続などで財産を取得しなかった場合の相続時精算課税と債務控除を確認してみましょう。
債務の控除ができる。
先に規定を確認してみましょう。
(今回は読替規定が長いので、分けて確認します。参考規定に掲載しています。)
2 前項の場合において、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税の計算についての第十三条、第十八条、第十九条、第十九条の三及び第十九条の四の規定の適用については、
「前項の場合」は、相続時精算課税を選択していた人が相続などにより財産を取得しなかった場合のことです。この場合は、贈与で受け取った財産を相続で受け取ったものとして相続税を計算する必要があります。
相続で財産を受け取っていない人が相続で財産を受け取ったものとして取り扱われるため、一部の規定を読み替えることになります。
・第13条、債務控除、プラスの財産からマイナス財産を差し引く。
・第18条、相続税額の加算、孫などの相続税が20%増える。
・第19条、7年以内に贈与があつた場合の相続税額、贈与の一部をプラス。
・第19条の3、未成年者控除、未成年者の相続税を減らす。
・第19条の4、障害者控除、障がい者の相続税を減らす。
今回は、第13条の債務控除を確認してみましょう。
一般的な取扱い
読み替える前の規定はこちら↓
(債務控除)
相続税法第13条第1項、令和7年6月1日施行
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
読替規定はこちら↓
第十三条第一項中「取得した財産」とあるのは「取得した財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。第四項において同じ。)」と、「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産」と、
読み替えてみましょう。
(債務控除)
第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。第四項において同じ。)については、課税価格に算入すべき価額は、第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
相続などにより取得した財産はありませんが、相続などで取得したものとして取り扱われることになります。規定を読み替えることで、亡くなった方(被相続人)から贈与により取得した財産で「相続時精算課税の対象となるもの」が債務控除の計算に含まれます。
相続税の計算対象となる金額は、「贈与で受け取った財産から相続時精算課税の基礎控除(110万円)をマイナスした後の金額」から
・亡くなった方の借金など
・葬式費用
をマイナスした後の金額となります。
例えば、次の場合
・贈与で受け取った財産 1310万円
・相続時精算課税の基礎控除 110万円
・亡くなった方の借金 50万円
・葬式費用 100万円
1310万円-110万円=1200万円
1200万円-(50万円+100万円、債務控除)=1050万円となります。
制限納税義務者の債務控除
一部の方は、国内にある財産について相続税がかかります。制限納税義務者といいます。制限納税義務者については、債務控除も国内に関するものに制限されます。
読み替える前の規定はこちら↓
2 相続又は遺贈により財産を取得した者が第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものについては、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
相続税法第13条第2項、令和7年6月1日施行
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前二号に掲げる債務を除くほか、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
四 その財産に関する贈与の義務
五 前各号に掲げる債務を除くほか、被相続人が死亡の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有していた場合においては、当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の債務
読替規定はこちら↓
同条第二項中「あるもの」とあるのは「あるもの及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産」と、「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後のこれらの財産」と、
読み替えてみましょう。
2 相続又は遺贈により財産を取得した者が第一条の三第一項第三号又は第四号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるもの及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産については、課税価格に算入すべき価額は、第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後のこれらの財産の価額から被相続人の債務で次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。以下省略
「相続などにより取得した財産でこの法律の施行地にあるもの」は、国内にある財産のことです。この部分は変わりません。
「被相続人が第21条の9第5項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第3項の規定の適用を受ける財産」は、相続時精算課税の対象となる財産のことです。読み替えることによって、債務控除の対象となる財産に追加されます。
相続税の計算対象となる金額は、「贈与で受け取った財産から相続時精算課税の基礎控除(110万円)をマイナスした後の金額」から
・国内にある財産の未払税金など
・相続時精算課税の対象となる財産の未払税金など
をマイナスした後の金額となります。
参考規定
特定贈与者から相続などにより財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者などの取扱い
2 前項の場合において、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税の計算についての第十三条、第十八条、第十九条、第十九条の三及び第十九条の四の規定の適用については、第十三条第一項中「取得した財産」とあるのは「取得した財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。第四項において同じ。)」と、「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産」と、同条第二項中「あるもの」とあるのは「あるもの及び被相続人が第二十一条の九第五項に規定する特定贈与者である場合の当該被相続人からの贈与により取得した同条第三項の規定の適用を受ける財産」と、「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後のこれらの財産」と、同条第四項中「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産」と、第十八条第一項中「とする」とあるのは「とする。ただし、贈与により財産を取得した時において当該被相続人の当該一親等の血族であつた場合には、当該被相続人から取得した当該財産に対応する相続税額として政令で定めるものについては、この限りでない」と、第十九条第一項中「特定贈与財産」とあるのは「特定贈与財産及び第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産」と、第十九条の三第三項中「財産」とあるのは「財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものを含む。)」と、第十九条の四第一項中「該当する者」とあるのは「該当する者及び同項第五号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)」とする。
相続税法第21条の16第2項、令和7年6月1日施行
おまけ、特別寄与者の読替規定
読み替える前の規定
4 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る課税価格に算入される場合においては、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
相続税法第13条第4項、令和7年6月1日施行
読替規定
同条第四項中「当該財産」とあるのは「第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産」と、
読み替えた後の規定
4 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る課税価格に算入される場合においては、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、第二十一条の十一の二第一項の規定による控除後の当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
相続時精算課税を選択した人が相続などで財産を受け取らなかった場合、贈与で受け取った財産を相続で受け取ったものとして取り扱われます。
「贈与で受け取った財産から相続時精算課税の基礎控除(110万円)をマイナスした後の金額」から「特別寄与料の負担額」がマイナスできるようになります。
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