今回は、相続税と贈与税に関する更正の請求の特則を確認してみましょう。
更正の請求の特則
今回、確認する規定はこちら↓です。
(更正の請求の特則)
相続税法第32条第1項、令和7年6月1日施行
第三十二条 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(当該申告書を提出した後又は当該決定を受けた後修正申告書の提出又は更正があつた場合には、当該修正申告又は更正に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求をいう。第三十三条の二において同じ。)をすることができる。以下省略
期限後申告の特則と修正申告の特則については、相続税と贈与税で規定が分かれていましたが、更正の請求の特則については規定が分かれていません。規定は1つです。
最初に対象者が規定されています。
相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、
対象者は次の4人です。
・相続税の申告書を提出した人
・贈与税の申告書を提出した人
・相続税の申告書を提出しないで相続税が決められた人
・贈与税の申告書を提出しないで贈与税が決められた人
次の各号のいずれかに該当する事由は、全部で10個あります。
先に規定の続きを確認してみましょう。
申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となつたとき
次の4パターンです。
・申告に係る課税価格と相続税額が過大となったとき
・申告に係る課税価格と贈与税額が過大となったとき
・決定に係る課税価格と相続税額が過大となったとき
・決定に係る課税価格と贈与税額が過大となったとき
要件をクリアした場合の取扱いを確認してみましょう。
各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求()をすることができる。
各号に規定する事由は、全部で10個です。この事由を知った日の翌日から4月以内に、税額の計算の基準となる場所(納税地)の税務署に、更正(税額の再計算)の請求が可能となります。
更正の請求については、4月以内の期限がありますので注意が必要です。
続いて、更正の請求ができる事由を2つ確認してみましょう。
遺産分割がされなかった場合
1つ目は、遺産分割がされなかった場合です。
一 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
第55条には、「遺産分割が済んでいない財産については、民法で定められた相続分で遺産を分割したものとして相続税を計算してくださいね」と規定されています。
上記の後、遺産の分割が済んだ場合に
・民法で定められた相続分で計算した課税される財産の金額(仮定の計算)
・実際の遺産分割で計算した課税される財産の金額(実際の金額で計算)
の2つが異なるときは、更正の請求(相続税の再計算)が可能です。
相続人が変わる場合
2つ目は、相続人が変わる場合です。
二 民法第七百八十七条(認知の訴え)又は第八百九十二条から第八百九十四条まで(推定相続人の廃除等)の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、同法第八百八十四条(相続回復請求権)に規定する相続の回復、同法第九百十九条第二項(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)の規定による相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
一定の事由により相続人に異動を生じたことが要件です。
一定の事由の例
・民法第787条の規定による「認知」
・民法第892条から第894条までの規定による「相続人の廃除又はその取消し」
に関する裁判の確定
・民法第884条に規定する「相続の回復」
・民法第919条第2項の規定による「相続の放棄の取消し」