今回は、相続税と贈与税に関する更正の請求の特則のうち、更正の請求ができる事由を確認してみましょう。
更正の請求の特則
税金の計算をやり直す手続は、2つあります。
・税金が増える場合は、修正申告
・税金が減る場合は、更正の請求
といいます。
更正の請求については、
・一般的な取扱いは、国税通則法
・相続税や贈与税特有の取扱いは、相続税法
に規定されています。
相続税法に規定されている更正の請求の特則については、更正の請求ができる事由が全部で10個あります。以前、2つ確認しましたので、今回は4つ確認してみましょう。
参考リンク
・相続税と贈与税に関する更正の請求の特則
・相続税と贈与税に関する更正の請求の特則_その2
特別縁故者や特別寄与者の場合
更正の請求ができる7つ目の事由は、特別縁故者や特別寄与者が亡くなった方から遺贈により財産を取得したものとして取り扱われる場合です。
七 第四条第一項又は第二項に規定する事由が生じたこと。
・第4条第1項、特別縁故者の取扱い
・第4条第2項、特別寄与者の取扱い
相続税の申告期限から3年以内に遺産分割があった場合
8つ目の事由は、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割をして、配偶者の相続税が減る特例を利用する場合です。
八 第十九条の二第二項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後において同条第一項の規定を適用して計算した相続税額がその時前において同項の規定を適用して計算した相続税額と異なることとなつたこと(第一号に該当する場合を除く。)。
第19条の2第2項には、「遺産分割が済んでいない財産については、配偶者の相続税が減る特例の計算に含まれない」ことが規定されています。
ただし書き(例外)には、「遺産分割が済んでいない財産が申告期限から3年以内に分割された場合には、配偶者の相続税が減る特例の計算に含まれる」ことが規定されています。
カッコ書きで「第一号に該当する場合を除く。」とあります。第1号を確認してみましょう。
一 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
第1号は、遺産分割が済んでいない場合です。
・第1号の遺産分割が未了の場合
・第8号の遺産分割が未了の場合(配偶者の相続税が減る特例、3年以内分割)
の2つに該当する場合は、第1号が優先されます。
第8号の更正の請求が適用されるケースを考えてみました。
例えば、次の場合
・遺産分割が未了のため、法定相続分で申告
・その後、法定相続分で遺産分割
この場合は、第1号の要件を満たしません。課税される金額が変わらないからです。課税される金額は変わりませんが、配偶者の税額が減る要件を満たせば、第8号の要件(相続税額が変わる)を満たしますので、更正の請求が可能となります。
生前の贈与があった場合
10個目の事由は、生前の贈与で贈与税の計算に含まれない場合です。
十 贈与税の課税価格計算の基礎に算入した財産のうちに第二十一条の二第四項の規定に該当するものがあつたこと。
第21条の2第4項を確認してみましょう。
4 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年において当該相続に係る被相続人から受けた贈与により取得した財産の価額で第十九条の規定により相続税の課税価格に加算されるものは、前三項の規定にかかわらず、贈与税の課税価格に算入しない。
相続税法第21条の2第4項、令和7年6月1日施行
・相続があった年に
・亡くなった方から贈与により受け取った財産で
・生前贈与の加算(第19条)により相続税の計算に含まれる。
上記の3つを満たす場合は、贈与で受け取った財産であっても贈与税の計算に含まれません。
例えば、贈与税の計算に含めて贈与税を申告した後、相続や遺贈により財産を取得したことで贈与税の計算に含まれなくなった。贈与税が減る場合、更正の請求ができるようになります。
—
9つ目の事由は、納税猶予を選択した所得税を支払った場合です。長くなりますので今回は省略しています。
最近の新しいこと
・Glico アーモンド効果 PROTEIN ナッツミックス