今回は、消費税が免除される場合(輸出免税)を確認してみましょう。
消費税が免除される場合
消費税は、次の3つの全てを満たすと課税されます。
1、国内取引に該当すること
2、事業者が行ったものであること
3、資産の譲渡等に該当すること
お金などの対価を受け取って
・資産の販売
・資産の貸付け
・サービスの提供
をすることを「資産の譲渡等」といいます。
消費税が課される取引のうち、非課税取引は消費税が課されません。非課税取引に該当しないものについては、消費税が10%や8%がかかります。
ただし、輸出免税の要件を満たせば、消費税が免除されます。
参考規定はこちら↓
(輸出免税等)
消費税法第7条第1項、令和7年6月20日施行
第七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
二 外国貨物の譲渡又は貸付け(前号に掲げる資産の譲渡又は貸付けに該当するもの及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)第八条第一項第三号(公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)に掲げる場合に該当することとなつた外国貨物の譲渡を除く。)
三 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信
四 専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの
五 前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの
対象者は、課税事業者です。消費税を納める必要がある事業者を「課税事業者」、消費税を納める必要がない事業者を「免税事業者」といいます。免税事業者については、消費税が納める必要がないため、免税の対象外です。
「国内において行う」とありますので、国内取引が要件です。
消費税が課される取引のうち、非課税に該当しないものを「課税資産の譲渡等」といいます。
・課税事業者
・国内取引
・課税資産の譲渡等
・一定の取引(5つ)
の要件を満たす場合は、消費税が免除されることになります。
輸出取引
消費税が免除される取引は、全部で5つです。
1つ目を確認してみましょう。
一 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
日本から輸出する資産の売却と資産の貸付けです。
内国貨物を外国に向けて送り出すことを「輸出」といいます。
日本にある貨物で外国貨物でないもの等を「内国貨物」といいます。
外国貨物は、次の2つです。
・輸出許可を受けた貨物
・外国から日本に到着した貨物等で輸入の許可がされていないもの
・輸出の許可を受ける前の貨物
・輸入の許可を受けた後の貨物
が内国貨物です。
外国貨物の売却や貸付け
2つ目を確認してみましょう。
二 外国貨物の譲渡又は貸付け(前号に掲げる資産の譲渡又は貸付けに該当するもの及び輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)第八条第一項第三号(公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)に掲げる場合に該当することとなつた外国貨物の譲渡を除く。)
外国貨物(輸出の許可を受けた貨物など)の売却や貸付けです。
カッコ書きで、2つ除外されています。
・第1号に該当するもの(第1号で消費税が免除されるからです。)
・他の法律に該当するもの(他の法律で消費税が課されるからです。)
日本と外国に関係する輸送や通信
3つ目を確認してみましょう。
三 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信
国内と外国にわたってされる
・旅客や貨物の輸送(例、国際線の航空機)
・通信(例、国際電話)
です。
国際線の航空機の売却や貸付けなど
4つ目を確認してみましょう。
四 専ら前号に規定する輸送の用に供される船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるもの
政令で定めるものとありますので、消費税法施行令を確認してみましょう。
(輸出取引等の範囲)
消費税法施行令第17条第1項、令和7年4月1日
第十七条 法第七条第一項第四号に規定する船舶又は航空機の譲渡若しくは貸付け又は修理で政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二条第二項(定義)に規定する船舶運航事業(次項第一号イ及び第二号において「船舶運航事業」という。)又は同条第十項に規定する船舶貸渡業(次項第一号イ及び第二号において「船舶貸渡業」という。)を営む者に対して行われる法第七条第一項第四号の船舶の譲渡又は貸付け
二 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項(定義)に規定する航空運送事業(次項第一号ロ及び第二号において「航空運送事業」という。)を営む者に対して行われる法第七条第一項第四号の航空機の譲渡又は貸付け
三 第一号に規定する船舶又は前号に規定する航空機の修理で第一号又は前号に規定する者の求めに応じて行われるもの
1つ目が、船舶に関するものです。
・船舶運航事業
・船舶貸渡業
の営業者に対する船舶の売却や貸付けが免税の対象となります。
「法第7条第1項第4号」とありますので、日本と外国の間を往来する船舶です。
2つ目が、航空機に関するものです。
・航空運送事業
の営業者に対する航空機の売却や貸付けが免税の対象となります。
「法第7条第1項第4号」とありますので、日本と外国の間を往来する航空機です。
3つ目が、1つ目の船舶と2つ目の航空機の「修理」です。
営業者の「求めに応じて行われるもの」とありますので、直接修理を委託された場合に限り、免税の対象となります。
例えば、次の場合
営業者A → 修理業者B → 修理業者C
営業者Aの求めに応じてされた修理業者Bの修理は、免税になります。
修理業者Cの修理は、免税になりません。
営業者Aの求めに応じてされていないからです。
5つ目を確認してみましょう。
五 前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの
消費税法施行令に7つ規定されています。今回は省略します。
消費税の免除には証明が必要
消費税の免除は、証明が必要です。証明がない場合は、消費税が免除されません。
参考規定
2 前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
消費税法第7条第2項、令和7年6月20日施行
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おまけ
2つ目の外国貨物の譲渡や貸付けには、「輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律()第八条第一項第三号()に掲げる場合に該当することとなつた外国貨物の譲渡」が含まれません。
規定を確認してみましょう。
(公売又は売却等の場合における内国消費税の徴収)
輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律第8条第1項第3号、令和7年6月1日施行
第八条 外国貨物(関税法第二条第一項第三号(定義)に規定する外国貨物をいう。以下同じ。)である課税物品が次の各号に掲げる場合に該当することとなつたときは、税関長は、当該各号に掲げる者から、直ちにその内国消費税を徴収する。
三 関税法第八十四条第一項又は第三項(収容貨物の公売又は売却)(同法第八十八条(留置貨物)において準用する場合を含む。)の規定により公売に付され、又は売却される場合 当該公売又は売却の際における当該物品の所有者
「税関長は、直ちにその内国消費税を徴収する。」と規定されています。
関税法第84条第1項が公売に関する規定、関税法第84条第3項が随意契約の売却に関する規定です。
貨物を保税地域に長期間置いておくと、保税地域の利用に影響を与えるため、税関長が貨物を収容します。いつまでも収容できないので、外国貨物のまま売却されることになります。
外国貨物の売却は消費税が免除されますが、収容された貨物(外国貨物)を売却する場合は、物品の所有者が消費税を負担するため、免税の対象から除外されます。